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迷走するFoxconnの米国工場計画 ウィスコンシン州と平行線

「新型コロナのせいで計画が変わった」

 The Vergeのルポが出て即日の10月19日、Terry Gou氏は個人名で声明を出した。「市場の状況と新型コロナのパンデミックによって、当社の拡大のタイミング、製造計画の具体的な内容、製品ラインが変更された」と述べ、3年前から、プロジェクトの時期と範囲が変更されたことを認めた。Wall Street Journalなどが伝えている。

 同時に声明では、「連邦、州、地方レベルの政策立案者が、Trump大統領が行ったように、Foxconnにコミットし続ける限り、われわれはプロジェクトの完成とウィスコンシン州への投資の継続的な拡大にコミットし続けるだろう」とも述べた。裏返すと、支援が打ち切られるなら撤退もあるという意味だ。

 これに対し、地元も州当局も納得していない。ウィスコンシン州で最大の新聞Milwaukee Journal Sentinelは「Gou氏の声明では、同社の計画についての最新の詳細は一切明らかにされなかった。州当局者によると、このような明確さの欠如が、取引の再交渉を妨げている」と論評している。

 こうしたぎくしゃくした関係には政治的な背景もある。2018年11月の州知事選では、工場計画も重要な争点の一つとなり、民主党のTony Evers氏が共和党の現職Scott Walker氏を破って政権交代した。Walker氏時代の誘致の過程への疑義などから、両党の対立が続いている。

 ホワイトハウスはというと、依然、Foxconnを強気で後押している。10月17日に大統領選の集会で同州を訪れたTrump氏はFoxconnの成功を約束。プロジェクトが挫折したら民主党の現知事の責任であると示唆した。また通商製造業政策局長のPeter Navarro氏は、米国がパンデミックから回復すればプロジェクトは完成すると確信する、とWisconsin State Journalの取材に述べている。

 プロジェクトはもともと前回選、Trump氏が僅差で勝利した激戦州で、共和党の知事が雇用創出を掲げて展開したキャンペーンから出てきたとも言われている。大統領選の結果によって、新たな展開があるのかもしれない。

 とはいえ、雇用と景気復活を期待した地元住民は振り回されるばかりだ。Wired.comなどは、最初の契約当時から、「ウィスコンシン州に大型液晶工場は無理がある」と懐疑的だった。この一連の騒動は「米国の製造業の復活の難しさ」を象徴しているようでもある。