Infostand海外ITトピックス

検知に薬品開発にAIが活躍 新型コロナウイルス対応

開発だけでなく既存承認薬の活用も

 薬品開発と治療でのAI活用はどうだろう。製薬とAIといえば、“AI創薬”という言葉もある通り、大きな効果が期待される分野だ。

 AIスタートアップのBenevolent AIは、既存の承認薬でウイルス感染に歯止めをかける方法に取り組んだ。Voxによると、コロナウイルスが持つ化学的特性情報を元に学術文献や医療データをAIで分析し、感染プロセスを遮断する可能性のある薬を探した。その結果、関節リウマチ治療薬の「バリシチニブ」(Baricitinib)に効果を期待できることを突き止め、コロナウイルスの治療に使えるかどうかを試すよう提案しているという。

 Voxはこのほかにも、韓国の新薬発見企業Deargenの取り組みも紹介している。同社は深層学習を使って抗ウイルス薬が治療に役立つかどうかの可能性を調べている。

 創薬ベンチャーのInsilico MedicineもAIを利用するが、アプローチは少し異なる。同社は体内のコロナウイルスの拡大を阻止するかもしれない6種類の新しい分子を特定した。未審査論文のオープンなデータベースである「Biorxiv」で既に発表済みという。InsilicoのCEO、Alex Zhavoronkov氏は「これらの分子情報を公開する。ぜひ、医薬化学の分野で深い知識がある化学者に見て、批評してもらいたい」とFortuneに語っている。

 これらの努力で、対策実施までの時間を短縮できるという。Zhavoronkov氏は「テスト開始から数週間で薬を合成できる。順調で、作業を迅速に進められれば、1年以内に治験に到達することも可能」と述べている。一般的に新薬開発には10年かかると言われ、大変なスピードアップにつながることがわかる。