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検知に薬品開発にAIが活躍 新型コロナウイルス対応

データで状況を把握できる

 SARSが流行した時は、ソーシャル、Web、モバイルのデータを大規模に使う方法は、まだなかった。だが今回、中国のソーシャルメディアとニュースを追跡していたBrownstein氏の同僚は2019年12月30日に、インフルエンザのような病気が勃発していることを警告し、WHO(世界保健機構)に報告していたという。また、BludDotも翌12月31日に警告を出した。

 これらは米国疾病管理予防センターが独自の判断を公表した1月6日よりも前だ。WHOが状況の深刻さを認識したのは、それからだいぶ後のことになる。

 新しい症例の勃発や感染状況を把握できることは「専門家がウイルスの振る舞いを理解する助けになる」(Brownstein氏)という。Wired.comは、年齢、性別、位置などの情報を使うことで、公式の医療情報源よりも早くリスクを認知できる可能性があるとしている。

 このほか、英サウサンプトン大学は、スマートフォンからの匿名化された履歴データを使って、武漢からウイルスがどのように移動しているのかをモデリングしているという。モバイルのデータを活用する動きは他にもあり、検索のBaidu、「WeChat」のTencentなど中国企業がデータを提供しているようだ。

 また、フィンテックのスタートアップHedgeChatterは、ソーシャルメディアから「感情」を分析するという手法をとった。通常は株式市場の市場心理(センチメント)を分析しているが、今回、世界のコロナウイルスの拡散状況を予測するモデルを構築した。

 データは公開されたものを利用し、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)モデルを用いて1000万回ものシミュレーションを行ったという。次の日の予測を出したあと実際のアウトプットが出ると、そのデータを再びトレーニングデータに入れて1000万回のシミュレーションを行う。Forbesによると、これを繰り返すことで誤差3%での状況予測ができているという。