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「提携、イノベーション、セキュリティ」 2020年クラウド予測

 IT市場の中で強い成長を見せてきたクラウドだが、2020年も勢いは続くのだろうか――。調査会社や専門メディアは、それぞれ来年のクラウド動向を占っている。それらの中では、買収や提携を含め、さまざまな動きが予想されている。Kubernetesなど開発・テクノロジー面の動向も見逃せない。注目ポイントをいくつか見てみよう。

クラウド事業者提携が新しい段階へ

 年末に翌年を予想する恒例のForrester Researchのレポ-ト「Predictions 2020: Cloud Computing」が公開された。昨年版では、大企業が基幹の業務アプリケーションをクラウドに移行させると予想していたが、その通りになったと言っていいだろう。

 同社は今年7月、SaaS、PaaS、IaaSの3つのパブリッククラウドを合わせた市場規模は2020年に2994億ドルに拡大すると予想している。そして新しいレポートでは、これから「クラウドの主戦場を再形成する」要素として次の3つを挙げた。

1)クラウド事業者間の新しい提携
2)クラウドネイティブにおけるイノベーション
3)セキュリティへの需要

 大型クラウド事業者(ハイパースケーラー)間の提携は、基幹アプリケーションのクラウド移行と関連している。クラウドは当初、新技術に抵抗の少ないベンチャーなどが採用した。次の段階の大企業への浸透では、まずAWSが圧倒し、そして追随したMicrosoft、Googleが隆盛を迎えた。となると、次には、さらに後発のOracleやIBMなどが本領を発揮する段階が来るという。

 ただし、OracleやIBMが戦う土俵は、AWSのような汎用のパブリッククラウドではなく、「自社の馴染みのある領域に退却する」(Forrester)とみられる。

 IBMは買収したRed HatのKubernetesプラットフォーム「OpenShift」を最大に活用して、業務アプリケーションのモダン化を図る。Oracleはシェアで強みを持つ業務アプリケーションのSaaS、自律データベース、特徴のあるクラウドで勝負する。というのが今後の見立てだ。

 Forresterのこうした予想について、Forbesは「現実になれば、クラウド市場の構造に大きなシフトが起こる」と言う。例えば、OracleはSaaSを超え、“AIアズ・ア・サービス”と呼べるレベルのクラウドを提供しており、これに「他のクラウドは太刀打ちできない」とみる。またOracleは、Microsoft Azureと相互運用で提携しており、Microsoftの力も活用できる。

 このほか、SaaSベンダーが自社インフラからIaaSベンダーのクラウドに移行する動きも加速すると予想されており、さまざまな狙いから、クラウド事業者間の提携が進みそうだという。