Infostand海外ITトピックス

「Google Duplex」の衝撃 機械と分からない話し方のAI

社会から”おしゃべり”がなくなると

 Google Duplexのデモに対して、社会的なインパクトを懸念する声も上がった。

 The Vergeは、技術を使いこなす者が一種の「特権」を持つようになる一つの例であると指摘する。技術を使える者は退屈な会話を機械に任せる。その一方で、その機械と話をしなければならないのは、低所得のサービス労働者になる、というのだ。

 The Atlanticは、Google Duplexを「新しいものでも、面白いものでもない」とする。なぜなら、これまでもわれわれは、サービス業の労働者に対して「ロボットのように働くよう指示してきた」からだという。その結果、やりとりは不愉快で、避けたいものになってしまった――。つまり、Google Duplexは社会が求めていたことを機械に置き換えるだけのものとなる。

 しかし、その置き換えで、AIとの会話ばかりになり、雑談やちょっとしたおしゃべりが失われることになれば、社会的な影響は大きいとする。The Atlanticは、都市研究で知られるJane Jacobs氏の意見を紹介する。すなわち、「ちょっとしたおしゃべりは社会に信頼をもたらし、なくなれば、すさんだ状況を生むだろう」というものだ。

 ZDNetは、Google Duplexのような技術が、産業IoTにおける「デジタルツイン」の“人間版”のようになると想像する。デモが不気味だったことを認めながらも、ユーザーが自分自身の「レプリカ」を持つことで、(レストランの予約をするなどの)退屈な作業に費やす時間を削減できる、と肯定的に捉えている。

 音声によるマン・マシン・インターフェイスは、AI開発を進める企業の主戦場だ。Google Duplexの登場を受け、Amazon、Microsoft、Appleなどは、どう動くのだろう。状況は想像以上に速く進んでいくかもしれない。

 Bryson准教授は、Googleのデモ公開は重要な材料になると言う。これを機に多くの人が、何が起こっているのかを知り、その上で議論が生まれるからだとしている。