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中国政府向け特別版「Windows 10」完成 米国企業参入の条件とは

中国企業との提携で大市場をうかがう米国勢

 中国はMicrosoftにとって難しい市場だ。中国当局は2014年5月にWindows 8を政府調達から外し、同年夏、反壟断法(独占禁止法)違反の疑いからMicrosoftの中国オフィスを捜査している。この独禁法の調査は、現在も続いている。

 政府職員が使用するコンピューターからのWindows OSの締め出しは、2013年のEdwared Snowden氏によるNSA(米国家安全保障局)の大量監視の暴露が少なからず関連している。中国政府はその後、「Ubuntu」のCanonicalと手を組み、中国向けのUbuntu「Kylin(麒麟)」の開発を進めた。Kylinは結局失敗し、次に「NeoKylin」を開発。Dellなどの主要PCメーカーは中国市場向けにプリインストールしたものを出荷しているという。

 MicrosoftウォッチャーのMary Jo Foley氏は、中国市場でのMicrosoftの流れとして、2015年にBaiduと提携してEdgeブラウザのデフォルトの検索エンジンとしてBaiduを採用したこと、2016年5月のMSN Chinaポータル閉鎖に触れている。同社は多くの譲歩をしてきた。

 そして中国は特殊な市場ではあるが、13億人以上の消費者を抱える巨大な市場でもある。「Microsoftは、新たに作成したWindows 10バージョンで収益性の高い中国市場に戻ることを狙っている」とJo Foley氏は言う。中国日報は、テレコム業界向けのサイトCCtimesを運営するXiang Ligang氏の「政府機関が自分たち向けにカスタマイズしたシステムを採用すると、民間企業もその動きに従うことが多い」という見解を紹介している。

 中国政府とのやりとりに苦心するのは、Microsoftだけではない。WSJはIntel、Qualcommなども提携を通じて中国市場で展開していると指摘。最新の動きとして、3月19日に発表されたIBMとWanda Groupの提携を挙げる。IBMはWangaを経由してクラウドサービスを展開するとしている。

 「米国企業は、中国の提携企業と難しい関係を進めて行かねばならない。それには、ライバルになりうる中国企業にコアの知的財産を渡さずに政府を満足させることや、当局がこっそり監視することを可能にするような技術的変更をさせるかといった問題がある」とWSJは現状を分析する。

 Microsoftには中国で不正コピー問題も抱えている。同社と中国当局とが関係を深めれば、海賊版の取り締まりの強化につながるとの見方もある。