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仮想化とパブリッククラウドの両王者が急接近 VMwareとAWSの提携

ハイブリッドクラウドではなく、「ハイブリッド仮想化」

 VMwareは、クラウドが席巻する前の時代サーバー仮想化のデフォルト技術としてエンタープライズに浸透した。同社にとってパブリッククラウドとAWSは目の上のたんこぶであり、CEOのPat Gelsinger氏は数年前までパブリッククラウドに対抗心を見せていた。

 その後、同社はパブリッククラウド「vCloud Air」を発表。だが、自社でデータセンターを構築するなどのインフラ投資が必要なことからパートナーにvCloud Airをベースとしたクラウドサービス構築を促す「vCloud Air Network(vCAN)」にシフト。今年のVMworldでは「Cross-Cloud」としてパブリッククラウド、パブリッククラウドとさまざまなクラウドをまたいで管理できる戦略を打ち出した。そして今回、パブリッククラウド最大手のAWSと組んで、互いの不足部分を補完することになった。

 VMwareの見事な戦略シフトを、Business Insiderは「ソフトウェア分野における自社の独占領域を保護する狙い」と分析、「顧客が自社のデータセンターをAmazonのクラウドにリンクできるvCloud Airの新たなオプションを獲得するようなもの」と評価した。

 Business Insiderの別の記事では、AWSのJassy氏と並んだGelsinger氏が「これから数年後、パブリッククラウドとAWSの受け入れはさらに加速するだろう。その速度はアナリスト、そしてAWS自身の予想も超えるペースになる」と語ったと伝えている。パブリッククラウドと、その王者AWSを正面から受け入れたものといえる。

 多くのメディアが両社の提携に一定の評価を示すなか、The Registerは、やや辛口に論評する。

 The Registerは、タクシーを一台も持たない世界最大のタクシー会社Uberや、ホテルを一軒も持たない世界最大の宿泊サービスAirbnbになぞらえながら、IBM、Rackspace、NTTらにvCANに参加してもらい、今回AWSと提携したことで「VMwareは自社では運営せずして、バーチャルに世界最大のクラウドを持つ」とした。

 だが半面、クラウド体験をクラウドに拡張しているMicrosoft Azureと対比させながら「VMwareのクラウドはオンプレミスの体験をクラウドに拡張しているだけ」と指摘した。これについては、Gartnerのアナリストも同意し、AWSとの提携はハイブリッドクラウドというより“ハイブリッド仮想化”であるとコメント。クラウドは単なる仮想マシン以上のものであり、顧客もハイブリッドクラウドにそのことを期待している、と述べている。

 VMwareとAWS。サーバー仮想化と、パブリッククラウドという異なるレイヤーの最大手が手を組むことは、クラウド業界にどんな変化をもたらすのだろうか――。