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「パートナーとの協力関係は変わらない」、VMwareゲルシンガーCEOが新ビジョンや日本戦略などを説明

 米VMwareのパット・ゲルシンガーCEOが来日し、7日は、ヴイエムウェアが推進する新ビジョン「Cross-Cloud Architecture」や、日本における事業戦略などについて説明した。

 ゲルシンガーCEOは、「VMwareが打ち出した新たなビジョンであるCross-Cloud Architectureによって、Any Device、Any Applicationに加えて、どんなクラウドにも対応するAny Cloudを実現。企業はさまざまなクラウド環境を活用することで、柔軟性を最大限に活用しながら、さらなるビジネスの成長を実現できるように支援する」とした。

 また、「これまでの5年間にわたってVMwareが取り組んできたSDDC(Software-Defined Data Center)では、コンピューティング、ネットワーク、ストレージを統合することに力を注いできたが、Cross-Cloud Architectureの根幹を担う、統合SDDCプラットフォームのVMware Cloud Foundationでは、コンピューティング、ネットワーク、ストレージに加えて、管理と自動化を統合。完全に統合されたプラットフォームによって、プライベートクラウドを容易に構築できるようになる」と語った。

 Cross-Cloud Architectureは、2016年8月に米国ラスベガスで開催されたVMworld 2016で発表されており、日本においても、この考え方に基づいた戦略へと移行することになる。

米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO
Cross-Cloud Architecture

 さらに、VMware vCloud Air Networkサービスプロバイダ(vCAN)のパートナーである、インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、ソフトバンク、ニフティ、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、富士通の6社との協力関係を強化すると発表。

 「日本では、システムインテグレータやサービスプロバイダーが、独自の技術やサービスを通じて差別化をしながら、顧客との信頼を築いている。引き続き、協力関係を強化し、ビジネス環境の変化に対応する先進的な技術の提供することで、日本の企業の成長を支援する」とした。

グローバル約4200社、国内約160社のパートナーネットワークを持つ

 会見では6社の関係者が登壇。IIJ クラウド本部執行役員本部長の立久井正和氏は、「VMwareのCross-Cloud Architectureの考え方に基づいて、当社の技術やプロダクトを実装したクラウドサービスを提供してきたい。ネットワーク、セキュリティなどのサービスもリンクさせてニーズに応えたい」と発言。

 NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部販売推進部門長の西岡博之氏は、「クラウドサービスだけでなく、データセンター、コロケーション、ネットワーク、セキュリティといった幅広いサービスの提供とともに、今回の関係強化を生かして、国内だけでなく、海外にも展開していきたい。ユーザーニーズの変化にも柔軟に対応したい」とした。

 また、ソフトバンク ICTイノベーション本部クラウドサービス統括部統括部長の鈴木勝久氏は、「ソフトバンクのクラウド事業はVMwareとともにある。新たな世界を支えるクラウドサービスを日本のユーザーに届けたい」とコメント。

IIJ クラウド本部執行役員本部長の立久井正和氏
NTT Com クラウドサービス部販売推進部門長の西岡博之氏
ソフトバンク ICTイノベーション本部クラウドサービス統括部統括部長の鈴木勝久氏

 ニフティ クラウド事業部長 執行役員/CIOの上野貴也氏は、「ニフティクラウドは5000件の顧客に利用してもらっている。VMwareを全面的に採用しており、NSXもインフラとして採用している。SDDCを実践する模範的ユーザーともいえ、その実績をもとに、顧客の環境を移行するという点でも優位である」と語った。

 さらに、日本IBM IBMクラウド事業本部 クラウド・サービス事業部長 理事の田口光一氏は、「今年2月にVMwareとの提携を発表し、それ以来、全世界1000社以上の企業で、VMwareが稼働している。VMwareの新たなコンセプトに賛同したい」とし、富士通 統合商品戦略本部 本部長の水野浩士氏は、「当社が昨年9月に発表したMeta Arcの価値訴求と、VMwareが打ち出した新たなコンセプトは、目指す世界が近い。両社のコンセプトに則って、顧客のワークロードにきちんと対応したい」とした。

ニフティ クラウド事業部長 執行役員/CIOの上野貴也氏
日本IBM IBMクラウド事業本部 クラウド・サービス事業部長 理事の田口光一氏
富士通 統合商品戦略本部 本部長の水野浩士氏

 ヴイエムウェアのジョン・ロバートソン社長は、「VMwareは、全世界に約4200社、国内に約160社のクラウドパートナーネットワークを持つ。日本においては、ゲルシンガーCEOが、長年にわたり何度も日本を訪れていた経緯もあり、その市場特性をよく理解した上で、投資を行い、日本向けのロードマップも用意している」と前置き。

 「今回、協業を強化する6社のパートナーとは、10年以上の協業関係を持っているケースも多く、日本市場におけるクラウドサービスの提供では優れた実績を持つ。日本市場固有のニーズに応える信頼性の高いクラウドサービスを提供。特にプライベートクラウドに対する実績では、セキュリティ、システムインテグレーションなどにおいて、世界的にみても先進事例といえるものがある。この経験を、グローバルに活用するといったこともできるだろう」などと述べた。

ヴイエムウェアのジョン・ロバートソン社長

 VMware vCloud Air Networkサービスプロバイダーは、ヴイエムウェアのハイブリッドクラウド戦略の根幹を担うものと位置づけており、パートナー各社は、それぞれの地域や業種、業界に特化した柔軟性の高いサービスと、さまざまなニーズに応じた選択肢を提供。顧客のビジネス変革を支援しているという。

 ゲルシンガーCEOは、「グローバル戦略においても、パートナーシップの強化にフォーカスしている。IBMやAWSといったグローバルパートナーシップを推進する一方、日本においては、vCANパートナーとの関係強化が重要である。日本の顧客は、サービスプロバイダーとの信頼関係がベースにあり、VMwareの事業を促進していくには、このエコシステムネットワークを活用していく必要がある」と語った。

 一方で、AWSとの提携発表が、vCANパートナーとの関係に影響するとの指摘もあるが、ゲルシンガーCEOは、「AWSとの提携内容が具体的に始まるのは来年半ば。日本市場における日程はまだ公表していないが、来年半ば以降のことになる。まだ時間がかかるが、非常に大きな市場になる。我々の製品群を成熟させることができるだろう」と発言。

 日本法人のロバートソン社長は、パートナーからは懸念の見方が出ていることを認めながらも、「vCANパートナー各社からは、多くの顧客がAWSを使っており、VMwareがAWSと提携するのは、むしろ当たり前の動きであるとの認識がある」ことを示した。

VMwareは独立した企業であり続ける

 また、ゲルシンガーCEOは、「デジタルトランスフォーメーションが注目を集めているが、デジタルトランスフォーメーションに対して積極派といえる企業は約20%であり、約80%は慎重派。約80%の企業は、やり方がわかっていないともいえる。積極派の企業は、ルールを臨機応変に変え、モバイルやクラウドといった新たな技術を活用している。AirbnbやUberなどの企業がそれに当たる」との現状を説明。

デジタルトランスフォーメーションに対して積極派といえる企業は約20%

 「2006年にクラウドがスタートし、そのときにはセールスフォース・ドットコムによるパブリッククラウドしかなかった。それが2011年にはワークロードは8000万と倍増したがクラウドは、パブリッククラウドとプラベートクラウドをあわせてもわずか13%。2016年には1億6000万ものワークロードに拡大したものの、パブリッククラウドは15%、プライベートクラウドは12%であった。これが2021年になると、パブリッククラウドが30%となり、プライベートクラウドが20%を占め、合計で全体の半分をクラウドが占めるようになる。また、2030年にはパブリッククラウドだけで52%を占めるようになる。こうしてみると、クラウドは、まだ始まったばかりである」との見方を示した。

2021年の世界のITワークロードの数
2030年にはパブリッククラウドだけで52%を占めるように

 さらに、「2016年にはひとつの変換点が訪れる。自社のデータセンターの新規構築件数を、サービスプロバイダーによるデータセンターの新規構築件数が上回ることになる。多くの企業が、データを外部パートナーに任せることになる。だが、セキュリティ侵害が発生した際に、最終的に責任を持つのは、IT部門である。IT部門はアプリケーションを書かなくても、インフラを直接管理しなくても、責任が発生する。それにあわせて、IT部門が要求するツールも変化してくるだろう。VMwareはその部分を担っていくことになる」とし、「今後、VMwareが追求していくのは、Freedom(ユーザーの自由度)と、Control(IT部門のコントロール)である。子供は自由を求めるが、親がそれをコントロールするのと同じである。クラウドによってもたらされるユーザーの自由度を維持しながら、IT部門がしっかりとコントロールできる環境を作り出す」と述べた。

Freedom(ユーザーの自由度)と、Control(IT部門のコントロール)を追求していく

 また、DellとEMCとの統合による影響に関しては、これまでの発言と同様に、「VMwareは、独立した企業であり続ける。それは、過去のやり方と同じである。Dellは大きなチャネルを持っているが、我々からみればDellはパートナーの1社であり、VMwareが持つ独自のエコシステムを活用していく。また、パートナーに対するコミットも変わらない。IBMやAWSとの関係もVMware独自のものである」とし、「これからも、VMwareが、インフラストラクチャ・ソフトウェア・カンパニーであることは変わらない」などと述べた。

ゲルシンガーCEOとロバートソン社長およびパートナー各社関係者