クラウド特捜部

AWSのクラウド型仮想デスクトップ「Amazon WorkSpaces」を試す

日本語環境へ切り替える

 現在Amazon WorkSpacesでは、英語版のWindows Server 2008 R2が提供されているため、日本語環境にするには、Windows Server 2008 R2にWindows Server 2008 R2 Service Pack 1 複数言語ユーザーインターフェイス言語パックを導入する必要がある。

 マイクロソフトのWebサイトからダウンロードして、Amazon WorkSpacesにインストールする。

 インストール後、さらに、コントロールパネルからRegion and Languagesなどを日本語もしくは日本に設定する必要がある。

 設定後、ログアウトして再度ログインすれば、日本語の表示や日本語変換を行うIMEが利用できるようになる。ただし、すでにインストールされているAcrobat ReaderやFirefoxの操作画面は英語環境のままだった。日本語環境にするには、一度Acrobat ReaderやFirefoxをアンインストールして、日本語版をインストールすればいい。

Windows Server 2008 R2を日本語化する言語パックをダウンロードしてインストール
コントロールパネルのキーボード、ランゲージ、日付などを日本語に設定変更
画面が日本語に変更された

 なお、Amazon WorkSpacesに設定されているキーボードは101英語キーボードだ。このため、ローカルPCで106日本語キーボードを利用している場合は、キーマップが異なり、キーに刻印されている文字が入力できないという問題もある。

 デバイスドライバでキーボードを変更したり、レジストリを変更してみたりしたが、106日本語キーボードにはならなかった(仮想OS上は変更されているが、キーマップは101英語キーのまま)。このあたりは、東京リージョンでサービスが提供される時には、修正されると期待したい。また、インストールされているアプリケーションも日本語版が提供されると、セットアップ後のアプリケーション再インストールなどの作業がなくなって、使いやすくなるだろう。

デバイスドライバでキーボードを106日本語キーに変更した。仮想OS上は106日本語キーになっているが、入力は101英語キーのままだった。このあたりは、Workspacesの仮想化や専用アクセスソフトが絡んでいるのかもしれない

性能のベンチマークテスト

 さらに、Amazon WorkSpacesにディスクのベンチマーク「Crystal Disk Mark」とPCのベンチマーク「Passmark Performance Test」をインストールしてベンチマークを行った。なお、クラウド環境であるため、性能は必ずしも一定ではないので、あくまでも参考程度でお考えいただきたい。

 結果は、お世辞にも速いとは言いがたいベンチマークとなった。Amazon WorkSpacesのディスク性能は、ローカルPCのSSDの1/10以下、HDDの1/5ほどの性能となった。ただしランダムRead/Write 4Kは、HDDに比べてAmazon WorkSpacesが速い。

Crystalmarkのベンチマーク(クリックで拡大します)。ローカルPCのSSDやHDDとは比較にならないほど遅い。なお、ローカルのベンチマークはCPUがCorei5 3550、マザーボードがIntel DQ77MK、8GBメモリ、Windows 8.1の自作PCで行ってる。SSDはSamsung SSD 840 EVO(6Gbps SATA)、HDDはSeagateの6Gbps SATAモデル

 PassmarkのPerformance Testで計測したCPU性能は、Core i7-3770Kの約1/16、Core2 Duo E8400の約1/3となり、6年前に発売されたCore2 Duoよりも低いCPU性能しかない。今回使用したAmazon WorkSpacesは1vCPUのため、Performanceで設定されている2vCPUを使用すれば、もう少し性能がアップするだろう。

 2D Graphicsに関しては、NVIDIA GeForce GT 630とWorkspacesを比べると、約1/4の性能。3D Graphicsは、Amazon WorkSpacesでは実行できなかった。

 メモリ性能に関しては、DDR3-1600に比べて1/3ほどの性能で、DDR-400ほどの性能になるだろう。

Performance Testの結果。お世辞にも速いとはいえない。実感としては、2000年ごろのPCに近い
3Dグラフィックはベンチマークできなかった
メモリ性能はDDR-400ほどの性能

 もちろん、計測時間や状況によっても変動するだろうが、計測時のこれらのベンチマークを見れば、Amazon WorkSpacesは10年以上前のPCの性能といえる。

 性能面で考えると、クラウドのAmazon WorkSpacesは最近のPCとは比較にならないため、PCの性能を利用するようなアプリケーションには、現状では向いていない。それでも、Officeアプリケーションで簡単な作業を行うだけなら特に支障はなかった。各企業は、この環境や性能で問題ないのか、自社での利用前に、一度テストしてみる必要はあるだろう。

いつでもどこでも利用可能な強み

 このように、性能面では物足りないものの、月額課金で、必要な時に必要なだけ使用できるというクラウドのメリットはある。一時的に使用するPCの代わりにAmazon WorkSpacesを使用すれば、セットアップの手間や短期リースの面倒な手続きなどがいらないため、簡単にデスクトップ環境を用意できる。

 またDaaSを利用する大きなメリットとしては、社内に設置されたデスクトップPCやシンクライアントなどのクライアントデバイスだけでなく、最近多くのユーザーが利用しているタブレットが利用できることも挙げられる。

 タブレットを利用すれば、外出先からモバイルデータ通信を使って、会社のデスクトップと同じ環境が簡単に使えるようになる。泊まりがけの海外出張や地方出張時でも、ホテルにインターネット回線とHDMI入力端子のあるテレビがあれば、テレビを大型ディスプレイとして使い、会社と同じデスクトップ環境で仕事を行うこともできる。

 AWS WorkSpacesでは、iPad、Androidだけでなく、Amazonが販売しているタブレット端末Kindle Fireを利用可能だ(Kindle Fire用のリモートアクセスアプリがストアに用意されている)。

 そこで、今回はKindle Fire HDX 8.9を利用してAWS Spacesにアクセスしてみた。Kindle Fire HDX 8.9は、画面サイズが8.9インチと大型で、画面解像度も2560×1600ドットと、iPadのRetinaディスプレイ(2048×1536)を越える解像度をサポートしている。

 高い解像度に合わせて、CPUも2.2GHzのクアッドプロセッサ(クアルコム Snapdragon800)が採用されている。このCPUは、ハイエンドのスマートフォンで採用されているプロセッサだ。このほか、800万画素のカメラ、通常利用で12時間も連続動作するバッテリなどがサポートされている。

 Kindle Fire HDX 8.9は、これだけの高い性能を持ちながら、374グラムと非常に軽くて、約8mmと非常に薄い。これなら、かばんに入れたとしても重く感じることも無いだろう。価格面でも、約4万円と安価だ。Amazonが提供する電子書籍やビデオなどを閲覧するだけでは、Kindle Fire HDX 8.9は、もったいなすぎる。これだけの性能があれば、ビジネスでも十分に利用できるだろう。なお、AWS WorkSpacesなどのVDIで利用する時は、ワイヤレスのキーボードとマウスがあれば、より使いやすくなる。

Kindle Fire HDXでAmazon WorkSpacesにアクセスするために、アプリストアからAmazon WorkSpacesというアプリをインストールする
インストール後、Registrationコード、ユーザー名、パスワードを入力する
タブレットデバイスのAmazon WorkSpaces専用ソフトでは、タッチ操作を簡単にする操作パネルが用意されている
画面の右側をタップすれば、ほかのアプリに簡単に切り替えられる

 ただ一方で、現状のサービスを日本で利用するには、キーボードの問題やアプリケーション、OSの日本語化など、いくつか問題がある。このあたりは、東京リージョンで始まれば解決すると思っている。また東京リージョンにAmazon WorkSpacesが設置されたら、距離が近くなるので、レイテンシも小さくなるだろう。国内企業で利用を真剣に検討するのは、それからになるだろうか。

山本 雅史