クラウド&データセンター完全ガイド:イベントレポート

【データセンター完全ガイドLIVE 2015 Tokyo】オージス総研:「所有と利用」をいかに使い分ける? AWS+データセンターの活用術

[セッションレポート]データセンター完全ガイドLIVE 2015 Tokyo
「所有と利用」をいかに使い分ける?
AWS+データセンターの活用術
オージス総研

企業ITにおけるクラウド活用の浸透により、「所有から利用へ」の流れが確実に進行している。だが、最適なIT環境を実現するには両者の使い分けが不可欠だ。オージス総研 プラットフォームサービス本部の堀 陽一氏が、「アマゾン ウェブ サービス」(以下、AWS)とオンプレミスのデータセンターのハイブリッド構成によるメリットを事例を交えて紹介した。

企業ITの未来像は ハイブリット構成へ

株式会社オージス総研 プラットフォームサービス本部 DC・サービス部 データセンター第1チーム 堀 陽一 氏

海外のクラウドサービスの国内稼働や料金の値下げ等を背景に、多くの企業でオンプレミスからクラウドへの移行、すなわち「所有から利用へ」の流れが進行している。そうした動向を踏まえ、オージス総研では、代表的なパブリッククラウドサービスであるAWSを自ら導入し、検証を行った。セッションに登壇したオージス総研の堀陽一氏は、その結果について「AWSのメリットは柔軟なリソース変動が可能でサイジングが容易であること、また、CloudFormationやレシピを用いることで、標準環境を簡単に構築、展開できること、そして、Cloud TrailやCloudwatchといった監査と追跡の基盤が準備されていること」と強調する。一方、注意点として「構成が冗長化を前提としており、AWSの代表的なサービスであるAmazon EC2では、シングル構成の場合、SLAの対象外になる」「障害発生情報は公開情報から取得する必要がある」「リソースの傾向分析に際しても、ログの保存期間が2週間しかなく、別途保存する仕組みを用意しなければならない」ことを挙げる。

「パブリッククラウドは迅速なサービスの開始や、一時的に利用が増えるシステムに最適です。一方、オンプレミスは、クラウドでは高額になるread/writeが多い高負荷なストレージ環境や、定常的なリソース利用が定期的に見込めるシステムの利用に適しています。したがって、今後は両者の長所・短所を考慮し、所有と利用を使い分ける『ハイブリット構成』が広がっていくと考えています」(堀氏)

AWSとオンプレミスのメリットを最大化するサービスの提供

オージス総研は、企業のパブリッククラウド活用ニーズに応えるため、ハイブリッドクラウド構成に関するメニューの拡充やAWSに焦点を充てた関連サービスの強化を進めている。その中核となるものが、①データセンターで②「AWSコネクトサービス」や③「AWSかんたんパック」などのサービスもある。

まず①ではハイブリッドクラウド構成を可能とするデータセンターを東京、大阪に計4つ用意。ネットワークの接続性やクラウドに対応した柔軟な運用体制だけでなくSEが24時間常駐しており、イレギュラーな障害が発生した際の独自調査の実施や、通常運用で改善点を見つけ、よりスマートな運用に変更する提案の仕組みも整備。さらに通信回線は、東日本大震災でも被害を受けなかった強固な専用ネットワーク通路を辿ってプロバイダの相互接続ポイントに直結、マルチキャリア契約を行わずとも、高信頼なネットワークを確保できる。

②は、データセンターやオンプレミスの環境とAWSを「AWS Direct Connect」を用いて接続し、AWSの各種サービスを社内LAN上にあるサービスのように扱えるようにするもの。専用線ならではの回線品質ながら、インターネット回線よりも安価なデータ転送料を実現。さらに既設の共有回線により、専有タイプと比べて格段に短い数営業日で開通が可能だ。

③はAWSの環境構築や監視運用、バックアップ等の各種サポートサービスをパッケージ化したサービスである。仮想サーバー機能の「EC2」、リレーショナルデータベースを提供する「RDS」、ストレージサービスの「S3」の3つをベースにして各種AWSサービスの組み合わせが可能だ。

ハイブリッド構成の採用でさまざまなメリットを享受

続いて堀氏は、これらのメニューを活用した事例を紹介した。1つ目が既にデータセンターを3つほど利用しながらも、新規サービスの立ち上げにAWSを活用した事例である。要件として掲げられたのは、サイジングの自由度と、需要が見込めない場合の迅速な撤退を可能とすることだ。「そこで、既存データセンターのサーバーを拡張するのではなく、AWSかんたんパックの利用を提案しました。一方、ストレージはI/O量があるため、既存機器のディスクを拡張したほうが安価と試算されたため、それを流用することにしました」と堀氏は説明する。最終的にAWSとオージス総研のデータセンター間をAWSコネクトサービスで接続するとともに、本番環境をAWSかんたんパックで構築。これにより構築の工数やコストを抑制しつつ、迅速なサービス立ち上げを可能とする環境を実現できた。

2つ目は、オージス総研の自社メールシステムのAWSへのリプレース事例だ。要件として、ユーザーの増減にも容易に対応できること、最小限のシステム停止時間で数百万通のメールデータを移行することが挙げられた。そこで、メールサーバーとしてEC2、アドレス帳にRDS、保管ディスクとしてEBSを用いてAWS上にメール基盤を構築。そして、データセンターとAWSをAWSコネクトサービスで接続し迅速なデータ移行を実施した。さらに本番稼働開始後もAWSコネクトサービスをそのまま用いることで、AWSを社内環境の一部として利用することを実現。結果、ユーザーの増減にも柔軟に対応可能なメール環境を整備できたほか、過去のシステムに比べ、メールデータのバックアップも容易になったという。

3つ目の事例は、社外からでも利用可能な開発環境の整備である。具体的には、AWS上にある開発環境に社内からだけでなく、外部の開発パートナー企業もインターネット経由でアクセス、社内外を問わず同一環境で作業を行えるようにするというもの。ここで課題として挙げられたのが、セキュリティの確保である。IPアドレス制限、プロトコル制限、管理コンソールの接続制限等を行っていたものの、それだけでは防ぎきれない脅威への対処が課題となっていた。対して、ログ監視用クラウドサービス「Sumo Logic」を活用することで「リソース操作ログ」「トラフィックログ」「踏み台サーバー操作ログ」に対してアクティブな監査を実施。結果、セキュリティを確保しながら遠隔地からの開発が可能になり、社内の開発環境に加え、メインフレームとの接続も安心して行えるようになった。ただし、「AWSは新規サービスが日々、増えていることから、そこでのリスクを常に検討して監査内容を変える必要があります」と堀氏は強調する。

図 オージス総研のデータセンター/ハイブリッドクラウドサービスの概要図

このようにオージス総研ではAWS関連サービスの拡充に加え、その他のパブリッククラウドへのインフラ全般の対応を進めるなど、企業のマルチクラウド環境の導入を支援している。今後、EC2やRDSなどを複数のAWSサービスと組み合わせたテンプレートパックや監視運用サービスの提供を進めていく予定だ。「さらに、『Webアプリケーションかんたんパック』『IoTかんたんパック』等の提供も計画しています。このほかにもオージス総研はさまざまなシステム化の要望を具現化する支援を行っていますので、ぜひご相談ください」と堀氏は訴えた。

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