クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち
エネルギー、電源、環境を総合管理
2014年3月24日 16:34
Power IQ
PDUベンダーを問わず利用できるエネルギー管理ソリューション
電力事情やコスト削減への要求から、多くのデータセンターが消費電力の削減に取り組んでいる。そのためには、まず現状の詳細な消費電力の把握が必要だ。サーバーだけではなく、冷却や空調の消費電力についても安全に削減するためには、温度・湿度や気流といったサーバールーム環境の可視化も求められる。
ラリタンが提供する「Power IQ」は、PDU、コンセント操作、測定データ、操作権限などを統合的に管理するためのエネルギー管理ソリューションだ。PDUから得られる電流、電圧、力率、消費電力などの測定値や、取り付けた環境センサーからの温度、湿度、気流、風速、気圧差、接触などの情報を収集し、リアルタイムかつ視覚的に把握することで、消費電力と設備環境の“見える化”を実現する。
エネルギー管理のソリューションは、設備管理的な背景から開発されているものが多いが、ラリタンの「Power IQ」は、同社が長年培ってきたKVMスイッチをはじめとするITツール、つまりサーバー管理側からのアプローチで設計されている。そのため、データセンターのリモート電源管理に求められる精度や信頼性などを重視したソリューションに仕上がっているのだ。
Power IQは、HDDや電源ユニット、LANポートが二重化されたハードウェア版もしくはVMware ESX/ESXi上で動作する仮想アプライアンス版が提供されている。どちらも管理するPDUの台数に応じてライセンスは追加可能だ。
また、このようなマネジメントソリューションは特定のハードウェア専用、もしくはハードウェアとセットで提供するケースがあるが、Power IQは他社製のインテリジェントPDUも管理の対象となっている。つまり、すでに他社のPDUが導入されている環境でも、エネルギー管理のためにPower IQだけを新たに導入することもできる。
Power IQはSNMPで取得したMIB情報(Management Information Base:管理情報ベース)でPDUを管理し、電力および環境センサーの測定データを収集する。Power IQ側のSNMPマネージャとPDU側のSNMPエージェントがMIBをやりとりすることで、対象機器の情報を取得している。つまり、SNMPに対応したインテリジェントPDUであれば、Power IQによるエネルギー管理が可能というわけだ。
電力と環境データを収集しリアルタイムで視覚的に管理
収集したデータを統合的かつ視覚的に管理するため、Power IQはインターフェイスや情報管理方法にさまざまな工夫を施している。
ツリーによる階層化、機器のグルーピング
Power IQにPDUを登録した時点で、その上位の階層が自動的に生成される。階層や項目名は自由にカスタマイズが可能だ。接続された機器1台1台の測定値情報を見るだけでなく、機器やコンセントをグループ化してまとめて情報を見たり、階層ごとに合算された電力測定結果を参照したりすることもできる(図2)。
グループ化はデータセンター単位、フロア単位、部屋単位、ラック単位、ユーザー単位、IT機器単位など柔軟に設定でき、別のPDU上の機器でも指定できるため、異なるPDUから同一機器へ正副両系統で電源を取っている場合でもまとめて管理することが可能だ。
測定データのチャート描写機能
収集した測定値をチャート化して確認できるのはPower IQの大きな特長だ。最大値/最小値/平均値をベースにそれぞれのチャートを作成でき、視覚的に状況を把握するのに役立つ。
グループごとの測定値をチャート化することもでき、さらに状況を把握しやすくなる。チャートの数値はCSVファイルとしてエクスポートすることも可能だ。
Power IQのチャートは時間軸のカスタマイズにも対応し、たとえば過去24時間の推移や、昨年との比較など表示期間を設定できる。傾向分析には欠かせない機能だろう。また、電力料金の課金に関するレポートなども現地通貨単位でチャート化して表示できる(写真1、写真2)。
「ASHRAEチャート」で直感的に判断
Power IQのチャート描写機能で特にユニークなのが、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)が定めた「ASHRAEチャート」上に、計測した温度/湿度の測定値を自動的にプロットする機能だ。
ASHRAEチャートはIT機器が適切に動作する温度と湿度の範囲を定めたもので、これによりひと目で現状の空調環境が判断できる。温度の測定結果がASHRAEチャートのフレーム範囲内にある場合、その状況下で削減できる可能性のあるエネルギー比率を自動的に算出して表示する機能もある(写真3)。
また、チャート上のポイントにマウスカーソルを置けば、どのセンサーの測定結果なのかポップアップで確認できる。
充実した電源制御機能で柔軟なスケジュールを設定可能
Power IQを利用すれば、特定の機器ごと、もしくはグループ単位で電源の制御を柔軟に設定することができる。
例えば、KVMスイッチの電源は平日6時から21時だけ稼働して、あとの時間は電源をオフにするといった電源オン/オフのスケジューリングが可能で、これにより、企業の運用ポリシーにあわせた柔軟な制御が可能になる(図3)。
サーバーのように電源をいきなり落とすことができない機器のために、Power IQが管理対象のサーバーにログインし、シャットダウン操作を行う「グレースフルシャットダウン機能」を搭載している。LinuxであればSSHでログインしshutdownコマンドを投入、Windowsにはリモートデスクトップでログインしシャットダウン操作を行うといったように、安全に電源をオフにする機能だ。
アセットマネジメント製品も展開 DCIMソリューションとして進化を続ける
ラリタンでは今後、DCIMソリューションとして電源管理を中心に資産管理、変更管理などのソリューションも展開していく。資産管理の面ではすでに、インテリジェントPDU「PX2」のオプションとして、「AMT/AMS」というアセットマネジメント用のセンサとタグを提供。ユニークIDが埋め込まれたタグと、カラー表示が可能なLEDを搭載したセンサーの組み合わせにより、ラック内の資産管理はもちろん、機器作業の効率化、人的ミス防止を実現するソリューションだ。
今後も同社は、「Power IQ」をエネルギーソリューションの中心に位置づけ、DCIMソリューションの強化を進めていく意向だ。