クラウド&データセンター完全ガイド:新データセンター紀行

エネルギア・コミュニケーションズ EneWings広島データセンター ― 広島駅徒歩数分の利便性と最新ファシリティが特徴の都市型データセンター

中国地方でネットワークサービスやクラウドサービスなどを展開するエネルギア・コミュニケーションズ。2016年12月1日、同社の新しいデータセンターが開業した。利便性の高いロケーションに、高信頼・安定した電力供給や大容量回線など、電力系通信事業者の強みを存分に発揮した最新の都市型データセンターだ。中国地方の企業のコアインフラから首都圏企業のBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)サイトまで、多様なニーズにこたえていく。

JR広島駅を降りて徒歩数分の好アクセス

写真1:EneWings広島データセンターの外観

 エネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)は、中国電力グループの通信事業者/SIerとして、ネットワーク接続サービスのほか、データセンターやクラウドサービスなどを顧客に提供している。地域の企業や自治体などのICTニーズにこたえながら、ドローンやIoT(Internet of Things)といった先進技術にも積極的に取り組んでいる。

 データセンター事業は、中国地域に広島南データセンターと岡山データセンターを展開。それらに、2016年12月から新しい「EneWings広島データセンター」(写真1)が加わった。

 新しいデータセンターでまず目を引くのがアクセスの良さだ。JR広島駅から徒歩数分のため、例えば関東や関西、九州などの企業が利用する場合でも新幹線を降りて数分という至便さだ。BCP/DR用途では万一の駆けつけ対応を考慮し、複数の交通機関を確保することが重要だが、陸路の新幹線だけでなく空路も利用できる。最寄りの空港は広島空港と岩国錦帯橋空港で、首都圏から合計1日22往復の航空便がある。

 また、DRサイトとして利用するにはその場所自体の災害リスクが低いことが前提となるが、ハザードマップでは、南海トラフ巨大地震の想定震度は震度5強で、地震保険の評価では最も危険度の低い一等地とされている点も大きなアドバンテージである。

 海岸からの距離は約5kmで、津波や洪水による浸水想定以上に1階フロアレベルをかさ上げしている。その他、原子力発電所からの距離も100km以上離れている。

写真2:オイルダンパー(左)と高減衰積層ゴム(右)をバランスよく組み合わせたハイブリッド免震構造を採用。建物の応答加速度と揺れを最小化

 建物は、高減衰積層ゴムとオイルダンパーを併用したハイブリッド免震構造(写真2)で、JDCCファシリティスタンダードティア4相当の堅牢性を備える。地下28mの支持層まで確実に届く杭は先端を広げて安定性を増しているほか、液状化対策として実績のあるTOFT工法も採用している。ちなみに中国地方は震災に見舞われた回数が少ないこともあり、広島県内のデータセンターとしては初の基礎免震建物となる。

 ハウジング用のフロアは4階分あり、他は通信事業者としてのネットワーク設備やクラウドサービス用のフロアとなっている。設計でエネコムが特に留意したのはセキュリティのための動線管理だ。例えば、ユーザーがサーバールームに行くためのエレベーター2機と機材搬入用エレベーター1機の他に、設備メンテナンス出入り専用のエレベーターが1機あり、サーバールームと設備室の間で行き来できないようになっている。

電力会社系企業の強みを生かしたファシリティ

 冒頭でも述べたように、電力設備はEneWings広島データセンターの大きなアピールポイントの1つだ。本線・予備線で2重化し、変電所設備のトラブルでもバックアップ可能なように、異なる2つの変電所から特別高圧を常時2系統受電(写真3)する。また、ルートを地中化し、電力供給の信頼性を高めている。

 また、万一の商用電源異常に備えて、無停電電源装置(UPS、写真4)をN+1冗長構成で設置。UPSはサーバールームに隣接したエリアにあるが、2つのフロアに対して3層にしてスペースを有効利用している。

 さらに、大規模災害などで長期間停電した場合には、非常用発電機(N+1冗長構成)により、無給油で72時間の連続運転が可能になっている。発電機は4,000kVAのガスタービン発電装置(写真5)で、4機分の設置スペースがある。燃料はA重油で、緊急時優先給油契約の下で確保する。

写真3:常時2系統受電の特別高圧受電装置
写真4:2階分を3層にしてUPSを設置し、スペース効率を上げている
写真5:非常用発電機は4台設置可能
写真6:サーバールームに隣接した空調機械室にパッケージ空調機を設置
写真7:コールドアイル側をキャッピング。吹き出し口の網板にはスライド型の蓋がある

 空調は高効率のデータセンター向けパッケージ空調機(写真6)を採用している。パッケージ空調機であれば、水冷式などと違って、サーバーが台数の増加に応じて段階的に追加できるメリットがあるためだ。ラックのコールドアイル側をキャッピング(写真7)して、暖気は壁上部のスリットから隣の空調機械室に流れ、冷気は床下吹き出し式で送られる(図1)。

 電力とネットワークのケーブルはフリーアクセス型で敷設されているが、ユーザーが床を開けられない仕組みになっており、ここに冷気を遮るような物を入れることはできない。また、冷気を吹き上げる床の網板にはスライドして移動させることができる蓋があり、この蓋で、すべてのサーバーにまんべんなく冷気が行き渡るように調節されている。

 ネットワーク面では、通信事業者としての設備・技術ノウハウを生かし、バックボーンに直結した大容量で高品質なネットワークを提供する。建物内に通信局を併設しているため、長時間のサービス停止発生ポイントとなりやすいシングルポイント部分は極小化されている。データセンターまでは、完全2重化された中継区間にダイレクトに接続され、建物の入線は埋設された複数の地中管路からとなっている。そのため耐災害性も高い。

図1:コールドアイル側のキャッピングと床下吹き出し式空調を採用

ICカードと生体の2要素認証で高いセキュリティを確保

 セキュリティレベルは、敷地外からサーバールームのラックまで7段階ある。ICカードと手のひら静脈を利用した生体認証の2要素で認証するため、来館者は初回に静脈の情報を登録する必要がある。入館申請は、事前にWebサイトから行うことができ、建物に入ると有人受付があるのでそこで身分証明書を提示しICカードを発行してもらう。このICカード1枚で、入室からラックの解錠まで行う。

 エントランス(写真8)にある最初のフラッパーゲートにも生体認証リーダーが付いている。ICカードと手のひら認証の両方をパスすればゲートを通過できる(写真9)。1つのフロアは2つのサーバールームに分かれていて、それぞれに入室用の前室がある。サーバールーム前室には、共連れ防止のためサークルゲート(写真10)が設置されていて、ここでも生体認証を行う。

写真8:エントランスの有人受付
写真9:生体認証リーダー付きのフラッパーゲート。ICカードと生体(手のひら静脈)認証の2要素認証
写真10:サーバールーム前室に設置された共連れ防止のサークルゲート

 エネコム提供のラックを利用する場合は、ICカードを壁面のリーダーにかざすことで、契約しているラックの扉だけを解錠できる(写真11)。また、小規模事業者などで1ラックまるごとは必要ないケースで有用な4分の1ラック(9U、専用扉付き)も用意(写真12)。貸し出しは8分の1(4U)単位から利用できる。なお、ラックへの電源供給は冗長化も可能であり、最大20kVAを提供。1,000kgまで搭載可能なので、高集積サーバーにも余裕を持って対応できる。

写真11:壁面のリーダーにICカードをかざすと契約しているラックが解錠される
写真12:4分の1ラック/4U の小さな単位から貸し出し可能
写真13:ラック列のキャッピング天井にセンサーや監視カメラを設置

 ラック列のキャッピングされた天井には、温湿度計や監視カメラが設置されている(写真13)。監視カメラは、両側からそれぞれ死角がないように配置されている。

 また、超高感度煙検知システムをホットアイル側から暖気が空調機械室へ吸い込まれるスリットの前に設置し、煙の発生を確実に検知する。消火剤は、機器や人体に影響がない不活性ガスを使用している。

ワークスペースや運用センターも充実の環境

写真14:サービスオペレーションセンター

 機材搬入用のトラックヤードは、4tトラックが2台入る広さになっており、大規模なラック移設などでも一気に搬入可能だ。また、一時保管室があるので荷物の梱包を解いたり、寒い時期はサーバールーム内で結露しないよう、しばらく一時保管庫に置いて温度に慣らしたりすることもできる。

 貸し出しスペースとしては、セミナー室や会議室の他、各階のサーバールームにレンタルルームが2室ずつある。ここには電源やサーバールームからのLAN配線が来ているので、この部屋で設定作業などを行うことができる。サーバールーム内と違って窓があるので、開放的な気分で作業が行える。ほかにも休憩用ラウンジや自販機を完備する。

 EneWings広島データセンターの基本サービスは、ハウジングサービス(標準ラック提供、24時間入館受付、電源・空調管理など)とアメニティサービス(場所貸し、備品貸し出しなど)だ。これらにオプションで、マネージドサービス、構築サービス、移設支援サービス、DNSサービスが加わる。マネージドサービスは、Ping監視、目視確認、電源ON/OFFといった標準サービス群と、TCPポート/リソース監視、手順書を用いた運用支援などを提供する追加サービス群からなる。

 運用監視を行うのは、サービスオペレーションセンター(写真14)だ。VDI(デスクトップ仮想化)によりモニタだけが並び、整然とした作業環境となっている。そのほか、災害対策室が設置されている。

 ここまで見てきたように、EneWings広島データセンターは、通信事業者の強みを生かして、高信頼・高品質なデータセンターサービスを中心としたさまざまなICTサービスを一元的に提供している点、そして、データセンターと同一建物内にサービスオペレーションセンターを併設し、通信回線とサーバーなどの設備を一元監視している点が大きな特徴となっている。

 災害リスクが低くアクセス至便な、最新の都市型データセンターとしての魅力は相当に高いと言える。

表1:エネルギア・コミュニケーションズ EneWings広島データセンターの設備概要

(データセンター完全ガイド2017年冬号)