2020年1月24日 06:00
弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2020年冬号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2019年12月23日
定価:本体2000円+税
ここ数年、アクセス回線におけるIPv6化は急速に進んでいる。一方で、データセンターの大口ユーザーであるコンテンツ提供事業者の多くはIPv6化で多くの課題を抱えている。そこで日本データセンター協会では、配信基盤のIPv6化を支援する「コンテンツ配信基盤IPv6化検討WG」を設置、活動を開始した。
IPv6化の歴史
IPアドレス不足の解消を目的としているIPv6化は、四半世紀にわたるインターネット全体の改良プロセスである。IPv6は1992年より仕様が本格検討され、1998年にRFC 2460が発行されて仕様が確定した。2000年代にはバックボーンネットワークを保有するインターネットサービスプロバイダ(ISP)やインターネットエクスチェンジ(IX)への導入が進み、ハードウェアやソフトウェアの対応、IPv6-IPv4変換技術などさまざまな課題が解消されてきた。2010年代中盤にはインターネットレジストリにおけるIPv4アドレスの在庫が枯渇。今はアクセス回線など含めてIPv6普及が進んでいる。
日本でのアクセス回線IPv6化
日本では2011年にNTT NGNにてIPv6インターネット接続サービスが開始され、2015年にNTT東西の光コラボレーションモデルによるNGNサービスの拡大、IPv4 PPPoE方式の輻輳問題などを経て、現在もアクセス回線やISPでのIPv6普及は進んでいる。携帯電話の国内大手3社も2017年よりデフォルトでIPv6が使えるサービスを開始。これらを背景に2019年現在の日本では、インターネットトラフィックの30%以上がIPv6である。
コンテンツ事業者のIPv6化
コンテンツ事業者(CSP)、特にGAFAはじめ海外の大規模CSPはIPv6化を積極的に推進している。一方で、IPv6化した国内CSPはさほど多くない。特にデータセンター上に自社配信基盤を構築してコンテンツやサービスを配信・提供しているCSPでは対応が難しいと言われている。IPv6環境の構築・テストという工数的な問題、IPv4-IPv6デュアル環境の技術的な運用課題、煩雑になるシステム運用まで考慮すると、CSPとしては経済合理性やメリットを見出しにくい。また、課題が山積するCSPの現場ではIPv6化を重要な課題とするのは難しいという現実もある。
コンテンツ配信基盤IPv6化検討WG
このような実情を鑑み、日本データセンター協会(JDCC)では「コンテンツ配信基盤IPv6化検討WG」を2019年9月に設置。データセンターの大口ユーザーであるCSPの配信基盤IPv6化をメイン対象として支援する活動を開始し、技術的・コスト的な課題を整理。経済合理性のあるIPv6化を進めていただくにはどうしたらよいかという観点で議論している。
また、大小含めたCSPの配信基盤だけでなく、一般企業における社内環境のIPv6化、クラウドサービスにおけるIPv6化など含めて幅広く議論するためと、過去の議論を生かすためにも日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)やNGN IPoE協議会をはじめとする諸団体とも連携して問題を提起していく。