クラウド&データセンター完全ガイド:JDCC通信

JDCC通信 第24回 日本データセンター協会10年の歩みと今後のデータセンター業界の発展に向けて

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2019年春号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2019年3月29日
定価:本体2000円+税

日本データセンター協会 Japan Data Center Council(JDCC)
http://www.jdcc.or.jp/

日本データセンター協会は、2009年4月に東京都より特定非営利活動法人の認可を得て正式に発足し、本年で10周年となる。協会設立当時は第2次国内データセンターブームで、新設や増床が次々と発表された。数が増えるとともにその社会的重要性が広く認識され、業界団体の必要性も高まっていた。

2009年4月に正式発足

 90年代終盤から2000年初頭にかけ、国内でもデータセンター(DC)が多数登場して第1次ブームとなった。直後にITバブルが崩壊。顧客開拓に苦戦したが、後々は堅調に推移して2008年ごろには第2次ブームとなり、多数の事業者より新設や増床が次々発表された。

 こうした流れでDCの存在感が増し、官公庁との要望・規制窓口、国際規格・標準への対応、同標準化作業への提案・貢献、国内外含めた調査・協力・協調する場が必要とされ、そのための団体設立が喫緊の課題となっていた。

 そこで、DC関連の有志各社が団体設立に向けて動き出し、2009年4月に東京都より特定非営利活動法人の認可を得て日本データセンター協会(JDCC、Japan Data Center Council)を正式に設立し、会員数約40社で活動を開始した。その約2年後に東日本大震災が発生。BCPの重要性が注目され、一気に会員数が増加した。

活動の柱はワーキンググループ

 JDCCでは活動開始の当初から課題単位でワーキンググループ(WG)を設置して実態調査や研究を重ね、基準やガイドラインを制定・設定して成果をドキュメントとして公表したり、発表の場を持ったりしてきた。また、公的な規制や促進策、政策対応などについてもWGを設置して、国や自治体など当局との調整・交渉に当たってきた。それらWGはいずれもが活発に活動し、WGの定期会合後は有志が近隣の居酒屋で延長戦を展開するほどである。

 そうした環境から産み落とされてデファクトスタンダードになったものは多数あるが、最も著名なのが「データセンターファシリティスタンダード(JDCC-FS)」であり、同じく「PUE計測・計算方法に関するガイドライン」などとともにJDCCのサイトで2014年度より会員に限らず広く販売している(一部無償の要約版も用意している)。

 ここで、ガイドライン発表という形がなく目立たない「環境政策WG」に光を当てたい。東京都による規制は都内立地のDCすべてに影響する。そのため、交渉窓口である同WGは重責を担いつつ奮闘してきた。結果は業界事情に配慮された規制、施策、そのための協定締結(写真3)という形で現れた。交渉という性格上JDCCからの情報発信には限界があるため目立たなかった同WGに、これまでの成果を含め、この場を借りて改めて感謝の意を表したい。

 ほか「グローバルアライアンスWG」「ネットワークWG」など特徴的なWGもあれば、「人材マネジメントWG」が中心となって推進している新人・若手向けの人材研修事業(写真1)など、WGによる活動はトピックも多くここでの紹介は一部にとどまるが、関係各位には謝意を表したい。

 一方で、突然降って湧いた事象に対応せざるを得ないこともある。東日本大震災をはじめとする各種の災害である。その時は各WGが知見を事務局に持ち寄って、急ごしらえながらもタイムリーな情報発信に努めている。

もう1つの活動の柱 行事・イベント開催

 もう1つの柱はJDCC会員を対象とした各種の行事・イベントであり、ヒットの1つは「DC見学会」である(写真2)。事務局では新設DC含めた見学を事業者と交渉している。結果この10年で東京と関西を中心に北海道から沖縄までの広いエリアで実施してきた。最近は見学会申込人数が多くて要望に応えきれないほどだ。学生限定の見学会も数度実施し、業界の将来に向けた人材確保にトライしている。

 海外交流(見学会)も東南アジアで実施。また、急速にDCの実力が増している中国とは同国CDCC(China Data Center Committee、中国数据中心工作組)と連携し(写真4)、お互いのイベントで講演し合い、また、各地のDCを訪問するなど交流を深めている。

 別のヒットイベントは会員間の人脈づくりを後押しする「業界コミュニティ」である。同イベントは最先端の技術テーマを毎回設定。それをめぐってグループで討議した後の懇親会でさらに親睦を深める構成だ。前身はナンパな企画と評された「DCな人の夕べ」という会員交流イベントで、親睦促進を目的にさまざまな企画を用意した。なかでも筆者の印象に強く残っているのが警備大手グループに属するセコムトラストシステムズで開催した回で、警備員各位による頼もしいデモを披露いただいたことである(写真5)。

2019年度はアニバーサリーイヤー

 2019年4月にJDCCは、設立総会からちょうど10年になる。その間、一貫して事務局を担当してきた筆者にとってはまさに「十年一日」。楽しいことばかりで10年があっという間だったと感じる反面、毎年の活動が繰り返しでマンネリではなかったかと反省している。そこで、JDCC 10周年を祝して記念イベントをいくつか企画している。

 そのキックオフは年次総会(写真6)で、2019年6月開催分は記念総会としてゲスト講演、功績のあった個人・企業の表彰、大抽選会のほか、記念出版物や記念品などの贈呈が企画として挙がっている。

 また、設立当初から西日本向けに年次で継続開催している大阪ワークショップ(WS、本年は11月開催予定)についても記念企画を練っているところだ(記念行事ではないが東京WSも情報提供の場として随時開催している)。

 ほか大きな記念イベントとしては、6月の総会から11月の大阪WSの間に日本各地の数都市でDC事業者、ベンダー、自治体などと意見・情報交換して交流を図る「タウンミーティング」開催の計画がある。参加の理事・運営委員・WGリーダーらは活動報告と各種の情報を提供する。一方で、各地の皆様には地域の状況や課題、懸案を挙げていただき、懇親会も含めて相互に情報や意見を交流させる場とする内容である。会場は拠点都市や地域の交通ハブになっている都市が候補だ。北海道なら札幌、九州なら福岡・博多駅周辺などが挙がっているが、具体的な都市が挙がっていない地域もあるので、各地のJDCC会員と相談するつもりだ(事務局から突然の電話やメールにより会員へ相談する場合もあること、ご理解願いたい)。

 数年前から本連載でJDCCの活動を主にWG単位で紹介してきたが、概要だけとなるが今回初めて活動全体を紹介できた。

 10年前のJDCC設立時は会員数約40社だったが、現在はその6倍以上の法人会員数(約250社)になった。大きくなるにつれて活動分野が広がったことは事実だが、解決すべきさまざまな課題がこの10年で次々に発生し、その度にソリューション・知見がある業界から会員が増えたことも事実だ。次の10年も予想もつかないような業界の課題が発生するだろうが、その解決に向けてさらに幅広く多数の会員を募り、業界として協議・協調する場を提供し続けていく所存である。

写真1 人材研修事業の立ち上げ(2014年5月)
写真2 北海道データセンター見学会での1コマ(2011年12月)
写真3 東京都と環境協定を締結(2015年5月)
写真4 中国CDCCとのミーティング(2018年5月)
写真5 交流イベント「JDCCな人の夕べ」(写真は2012年9月開催分)
写真6 第4回JDCC総会(2011年6月)
日本データセンター協会(JDCC)は、データセンター事業者と主要な関連事業者が参加する組織を形成し、水平的垂直的に協力して国際競争力を備えたものへと進化させることに取り組んでいて、IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求することを目的としている。