クラウド&データセンター完全ガイド:データセンターサービスガイド
強力なパートナー戦略で多様なクラウドサービスを展開する鈴与シンワート――鈴与シンワート
2014年6月30日 00:00
S-Portソリューション
鈴与シンワート
http://www.shinwart.co.jp/
従来から、安くて信頼性の高い“プライベートブランド戦略”を打ち立て、データセンター/IaaS事業に注力してきた鈴与シンワート。2014年以降に注力していくのは“SaaS”だ。常にユーザー目線を忘れない便利なサービスを多数展開していくため、幅広く強力なパートナー戦略を採っているところにも注目したい。
“強く、優しく、面白い”さまざまなSaaSを展開
鈴与グループは、物流、商流から、建設、警備、ビルメンテナンス、食品、航空、地域開発、情報事業といった幅広い領域で事業を展開する、歴史ある企業体である。グループの一員である鈴与シンワートは、システム開発やSI、データセンター、IaaS/SaaSなどのICT事業を担っている。同社は2014年4月付けで組織体制を一新し、クロスセリングにも積極的に取り組みはじめた。
鈴与シンワートは、以前から、データセンター市場において、「プライベートブランド戦略」を打ち立て、同社の堅牢なデータセンターインフラ上で、高い技術力と業界ノウハウを武器に、S-Port Cloud Vシリーズを中心とした最先端のIaaS、PaaS、SaaSの提供に注力してきた。2014年は、これらの「S-Port Cloudソリューション」のうち、特にSaaS提供に注力する
ネットワークインテグレーション事業部 事業部長 岩崎洋氏は、鈴与シンワートのユニークな事業内容について、「当社の事業は、“強く”“優しく”“面白い”という3つの要素を持っています。“強く”というのは、適正なキャッシュフローをもって、投資をしっかり行っていくという意味です。“優しく”とは、価格帯を抑え、利用しやすいサービス提供を心掛けるということ、“面白い”とは、営業担当者や情報システム担当者、経理担当者、総務人事担当者にとって、何が必要か、便利か、面白いかという視点で、さまざまなサービスを開発・提供していくということです。現在は6つのサービスを提供していますが、今後パートナーとともに、さらにサービスを増やしていきます」(岩崎氏)
6つのサービスから始まる無数の可能性
では、現在どんなSaaSサービスを展開しているのか。
営業担当者であれば、簡単かつ安全にファイル共有/転送を行える「Fシリーズ」、誤送信も防止してくれるWebメール「Mシリーズ」などが便利だろう。
Fシリーズは、パソコンだけでなくスマートデバイスからでも快適にファイルを管理でき、ファイルやフォルダのリンクをメールで相手に送るだけでファイルを共有できる。私書箱機能「ゲストフォルダ」を使えば、安全に取引先と情報共有することも可能だ。
Mシリーズは、国内シェアNo.1のActive! mailのシステムをベースとし、実績の高いKasperskyのエンジンでウイルス対策も実現している。Webメールながら非常に使いやすいGUIが特徴で、Active! gateを活用したメール誤送信防止機能によって、情報漏洩も防止できるため、安心して利用できる。
人事・給与・就業パッケージの「Bシリーズ」は、電子給与明細などにも対応し、紙に比べてコストや手間を大幅に削減できる。鈴与シンワートには、ビジネスプロセスの専門チームが存在しているため、要件定義から構築・運用・サポートまで提供でき、数百件の導入実績を誇る。
クラウド上で顧客情報を管理するCRM「iシリーズ」は、コールセンター事業などで活用されている。Web構築・運用・保守サービスの「Cシリーズ」は、国内トップクラスの実績を持つCMSである「HeartCore」をベースとしている。最近注目されているVDIも「Dシリーズ」として、小規模環境からでも導入可能な価格帯で提供されている。
今後のサービス増強計画も順調だ。ネットワークインテグレーション事業部 クラウドサービス部 技術グループ 上席課長の畠山浩樹氏は、「直近では、アンケートフォームを作るサービスをまもなくリリースします。クラウドで名刺データを管理するサービスや、ゴルフのスコア管理サービスなども考えています。また、Fシリーズに続く2つめのストレージサービスでは、Hadoopによる分散データベースを活用し、ほぼ無制限の大容量を従量課金で提供する予定です。クライアントアプリが多彩で、動画やPDFなどを容易に扱うことができます」と語る。
さらに同社では、昨今注目されているサイバー攻撃にも着目し、DDoS対策やWebアプリケーションファイアウォールといったセキュリティ機能についてもサービス化を検討している。岩崎氏は、2015年までに「20の新サービス」を展開したいと述べており、今後もさらにBYOD、スマートデバイス、流通、農業、医療など幅広い分野のソリューションを展開していく予定だ。
鈴与グループ約10,000人が顧客に!? 強力なパートナー戦略
鈴与シンワートのSaaS展開において重要なポイントは、鈴与グループが創業以来掲げてきた「共生(ともいき)」の理念を実践するパートナー戦略である。上述したSaaSサービスの大半は、外部の開発パートナーとの提携で生まれたものだ。
例えば、あるベンダーがアプリケーションを提供しようと思うと、サーバーやネットワークといったインフラが必要である。開発会社だけで、これらを準備するのは大変だ。そこで鈴与シンワートが旗を振り、インフラや人的な開発環境などを提供する。同社は今後も積極的にこうしたパートナー戦略を広げていく計画だ。
また、ユーザー企業もただ1つの課題を抱えているわけではない。例えば、電子給与明細を導入しているユーザーは、ファイル転送/共有やWebメールなど、他サービスの需要もあるはずだ。こうした複合的なニーズを考えれば、営業時に、「S-Port Cloudシリーズ」としての相乗効果が期待できる。
「将来的にはパートナー会を開催し、新しいビジネスのチャンスを作りたいと思っています。共生の精神に賛同するパートナーを増やし、互いに切磋琢磨したり協力したりして、さらに役に立つサービスを生み出していきたいと考えています」(岩崎氏)
鈴与シンワートのパートナー戦略は、単に開発・サービス・営業支援だけにとどまらない。安価で便利なサービスが生まれたら、10,000人規模の鈴与グループへの導入を積極的に働きかけようという腹づもりもある。
「もちろん、優れたサービスでなければ採用されませんし、いきなり10,000人に使ってもらえるというわけでもありません。しかし、鈴与グループが顧客となる可能性は、当社をパートナーとして選ぶメリットの1つであることは間違いないはずです」と岩崎氏は語る。