事例紹介

“壊れないヤマハルータ”で内線VoIP環境を安定運用――、寺岡精工

 株式会社寺岡精工は、POSレジや計量器などを製造し販売している企業だ。同社を中心とするTERAOKAグループでは、子会社や関連会社、そのほかの代理店なども含めて国内136拠点を、ヤマハルータを用いたインターネットVPNで、1つのネットワークとして接続している。

 また、このネットワークの上で、内線電話をヤマハのVoIPゲートウェイにより構築し、2004年から長期間、安定運用しているという。

 今回は、こうしたネットワークを採用した経緯や、構築や運用のポイントなどについて、寺岡精工の夏堀貴仁氏(ビジネスサービス部 インフォメーションサービス課 アーキテクト)と、ネットワーク構築を担当した高千穂交易株式会社の現在の担当、小山大地氏(ビジネスソリューション事業部 第1営業チーム)に話を聞いた。

寺岡精工の夏堀貴仁氏(右)と高千穂交易の小山大地氏

国内拠点をインターネットVPNとVoIPで接続

 ヤマハルータによるインターネットVPNを構築する前、寺岡精工では他社製品によってIP-VPNの上でVoIPを構成していた。当時はADSLが家庭に普及するより前の時代であり、企業向けの回線もまだまだ高速ではなかったころ。同社でも、128kbps回線でIP-VPNを利用していたものの、導入してわずか1年ほどで帯域が逼迫(ひっぱく)してきたという。

 「“128kbpsの回線に無圧縮の音声データを4チャンネル”などと、(構築を担当するSIerに)無理を言ったりしていました。当時の技術でも、音声だけで25kbpsを消費していて、帯域制御装置などを駆使し、無理やり通していたのです」と、夏堀氏は当時を振り返る。

 それでもやはり帯域が足りず、常に代替となる回線を検討していた寺岡精工だが、ちょうど普及を始めたADSLを拠点オフィスで導入したところ、「拠点のADSLのほうが回線が速い、という逆転現象が起きました。そこで、IP-VPNからインターネットVPNに切り替えても行けるんじゃないかと思い、2003年ごろに検討を始めました」と、夏堀氏は話す。

寺岡精工の夏堀貴仁氏

 このとき、各拠点に配置できる価格のVPNルータとして夏堀氏が選択したのが、ヤマハのルータだ。当時は高性能ながらも価格が抑えられた新モデル、RTX1000が発売されたところで、これに目を付けた。

 当時の拠点数は約50。「ヤマハルータの導入経験がなくて不安がありましたが、IP-VPNでのバージョンの問題などを高千穂交易がコントロールしていたので、うまくコントロールすれば問題ないだろうと考えました」(夏堀氏)。

 センター側には、中・大規模向け機種であるRTX2000を採用。VoIPゲートウェイとしては、2003年に発売されたヤマハのRTV700を各拠点に設置した。他社のVoIPゲートウェイ製品も検討したが、その製品での提案はフルメッシュ構成(全拠点を1対1接続する構成)であり、約50の拠点をフルメッシュ構成で構成するのは現実的ではないとして、ヤマハの採用が決まった。なお、小さい拠点ではRTV700をルータとしても利用している。

 「当時、ヤマハのネットワークの事例として紹介されていたのは中小規模のものばかりで、50拠点やそれ以上の話が公表されていなかったのが苦労しました」と夏堀氏。

 ネットワークを変更しても、それまでの内線VoIPの運用から変えずに移行できた。そのための拠点のPBXの制御を、RTV700を使うことによって実現できたという。

VoIPゲートウェイとして活躍しているRTV700。ヤマハ製品らしく、IPsecなどのルータ機能も備えている

電話帳サーバーで内線を管理

 また、運用開始後の2015年に発売された、ヤマハVoIPゲートウェイ専用の電話帳サーバーであるRTV01も、発売後すぐに導入した。

 「それまでは拠点情報をRTV700に書かなくてはならず、拠点統廃合などのときに対応が大変で、どうにかしたいと思っていました。RTV01があれば、センター側で書き換えるだけで済むので、望んでいたものがやっと出てきたと思いました」と夏堀氏は語る。

 ちなみにネットワークを構築したのと同時期の2004年には、ヤマハからRTX1500が発売されたため、これを大きな拠点に導入した。「後にそれらをRTX1200に入れ替えたところ、CPUの負荷が上がってしまいました」と、夏堀氏はハードウェアエンコーダーの威力を感じたという。

 そのほか、当時のヤマハの機器で寺岡精工が便利に使ったのが、RTX1000のSIP-NATの機能だ。ただし、近年ではインターネット上でSIPの攻撃が増えたので、現在では閉じている。

13年以上壊れずに業務を支える

 現在では国内の拠点数は136拠点にのぼり、すべてヤマハルータによるVPNで接続している。現在のセンタールータはRTX3500となり、拠点のルータもRTX1200やRTX1210となった。

 このネットワークの上で、寺岡精工と、子会社の株式会社テラオカ、工場の株式会社デジアイズなどの間を内線VoIPでつないでいる。なお、株式会社テラオカではVoIPにRT58iを使っている。

現在のネットワーク構成図

 携帯電話やスマートフォンが普及したことにより、内線電話の全体の使用量は減ったが、工場との受発注などの業務でまだまだ内線電話が重要な役割を担っている。

 最近では、FMC(Fixed Mobile Convergence:携帯電話の内線化)も導入したが、ここでもRTV700が使われている。「iPhoneではFMC用のSIMを使い、社内からはPBXとRTV700でFMCにつないでいます」と夏堀氏は説明する。

 もともとネットワークは高千穂交易が構築したが、そのコンフィグを学んで夏堀氏自身が設定を加えている。そうした経験から夏堀氏は「ヤマハはコンフィグの体系を変えないのがとても助かる。そういった点で、ヤマハはエンジニアを見捨てないと感じている」と感想を述べた。

「ヤマハはエンジニアを見捨てないと感じている」と話す夏堀氏

 また細かいところだが、ファームウェアをアップデートしたときなどに再起動しても、数十秒で起動するのが助かるという。夏堀氏は「他社では数分ぐらいかかる。ヤマハであれば、ファームウェアをアップデートするのも大きな手間にならない」と語った。

 なお、RTV700はすでに生産終了となっているが、寺岡精工では現在でも活躍している。拠点統廃合によって不要になった個体を再利用したり、市場に出回ったものを何とか入手して賄っているという。一方、RTV01は後継機種としてYSL-V810が発売されたが、寺岡精工では現在も、RTV01が活躍中だ。

RTV01の後継製品として提供されているYSL-V810

 「ヤマハのネットワーク機器は壊れないのが助かります」と夏堀氏。実際に、ルータをはじめとするヤマハのネットワーク機器は故障率の低さに定評があり、とっくに販売を終了した旧型機種が今もそのまま利用されている、というケースは多く見られる。

 とはいえ、RTV01には後継機種が登場したことで、代替機を調達することに関しての不安は取り除かれている。また夏堀氏が話したように、機種が変わってもコンフィグの体系が変わらないため、後継製品であってもスムーズに導入可能な点は大きなメリットだ。

 こうしたところは、ヤマハ製品ならではの大きな魅力だろう。

(協力:ヤマハ)