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ヤマハの音声処理技術はホントに効果的? スピーカーフォン「YVC-300」を使ってみた

 8月25日、ヤマハからスピーカーフォン「YVC-300」が発表され、10月初旬より販売がスタートする。これは昨年5月に発売された「YVC-1000」の音声処理技術を継承しつつ、よりコンパクトでかつ手ごろな価格を実現したモデル。以前からあったPJP-20URの後継という位置づけではあるが、性能的には大幅に向上したシステムとなっている。

 今回、YVC-300がどの程度の実力を持った機材なのか、実際にWeb会議を試してみたので、レポートしてみよう。

YVC-300

【ヤマハ スピーカーフォン/マイク&スピーカー関連記事】

・ヤマハ、聴感上2倍の大音量を実現、さらなる高音質化を実現したスピーカーフォン「YVC-300」
  http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20150825_717789.html
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  http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20150824_715365.html
・【イベント】「体感すれば良さがわかる」、ヤマハの次世代型マイクスピーカーシステム「YVC-1000」
  http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20150615_706879.html
・ヤマハ、高音質化した遠隔会議向けマイクスピーカーシステム
  http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20140418_644999.html
・ヤマハ、6名程度に適したマイクスピーカーシステム、Web会議や遠隔講義に最適
  http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20150410_697081.html

単なる一体型のマイク・スピーカーではない

 YVC-300はWeb会議をするための音声入出力システム。一言でいえばスピーカーとマイクをセットしたものなのだが、ここには想像を超えるさまざまな技術が搭載されている。単なるスピーカーとマイクが一体化した装置だと、スピーカーから出た音がそのままマイクで返されてしまうため、ハウリングが起きてしまうし、さまざまな雑音がある中でしゃべっていると明瞭(めいりょう)さが落ちてしまい、うまく会話が成り立たない。また複数の人がマイクに向かってしゃべる場合、人によって声の大きさが違うので、小さい声だと相手に伝わりにくくなってしまう。こうした問題をYVC-300ではDSPを用いた音声理技術を用い、うまく解決してくれるのだ。

 この辺の技術の詳細については、YVC-1000の開発者インタビュー記事に詳しくまとめているので、そちらを参照していただきたい。

 今回使ったYVC-300は、YVC-1000に搭載されていた音声処理技術の中で「オートルームEQ」という、部屋の大きさや形状、壁の材質などによる違いを補正してくれる技術がサポートされていないほかは、ほぼすべてを継承した機材だ。

YVC-300と、YVC-1000や従来機種との機能比較

取り扱いは非常にカンタン

 こうしたスペックを見ると、何やら難しい機材のようにも思えるが、実はこれが拍子抜けするほどシンプルで単純なのだ。

 今回は都内の2拠点(千代田区と港区)の会議室を利用し、ここに持ち込んだPCをSkypeで接続。それぞれのPCにYVC-300を接続してうまく会議ができるものなのかを試してみた。

 筆者がいる千代田区側は、Surface 3 ProにSkypeをインストールしたものを用意。これをYVC-300に接続していたが、その接続は単にUSBケーブルでつなぐだけ。この際、ドライバのインストールも不要で、接続すればすぐに使えるようになった。またYVC-300自体はUSBバスパワーで駆動するので、配線も至ってシンプルなのだ。

PCとは単にUSBケーブルで接続するだけのため、特別な知識がなくても利用できる
Windows標準のドライバを利用するので、ユーザーがドライバをインストールする必要はない

 念のためコントロールパネルのデバイスマネジャーを見てみると、「サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラー」のところにしっかりYVC-300が認識されていることが分かる。つまりPCから見ると、単なるスピーカーとマイクでしかなく、前述のさまざまな音声処理技術は完全にブラックボックス化されているのだ。パラメーターもなにもないので、ユーザーは普通にスピーカーとマイクとして利用するだけのものなのだ。

YVC-300がきちんと認識されている

 ここで、Skypeのスピーカー、マイク設定をYVC-300にすればセットアップ完了。あとは港区側の会議室をSkypeで呼び出して接続するだけだ。

Skypeのスピーカー、マイクをYVC-300に設定

違和感なく会話できる「自然さ」

 お互い、Skypeの画面を会議室に設置してある大きなディスプレイに表示する形にしていたので、ちょうど長い机の会議室にいるような感覚になる。早速話をしてみると、相手の声が思っていた以上に明瞭に聞こえる。お互いで会話しても、まったく違和感もないし、遅延というものも感じない。正確には、Skypeを使っているので0.5秒程度の遅延はあると思われるが、本当に1つの部屋にいるような感じで会議ができる。

 試しに港区側にいる人同士で会話をしてもらったが、みんなの声の音量がほぼ均等の大きさで聞こえ、とても聞き取りやすかった。ただ、YVC-300をこちらのテーブルの真ん中に設置したため、相手が前方のディスプレイ上に見えるのに声が違う方向から聞こえるという点が、最初やや妙に思えたが、慣れてくるとそこも気にならなくなる。

 また感心するのがYVC-300から出てくる声の音量だ。バスパワーで駆動しているのに、かなり大音量で鳴らすことができるのは、やはりうれしい点。YVC-300はスペック上4~6名の会議で最適とされているが、これだけの音量が出てくれれば、まったく不足はない感じだった。

違和感なくビデオ会議を行えた。ちょうど、長い机の会議室にいるような感覚

 YVC-300には+/-の音量ボタンがあるので、これで調整も可能だ。また真ん中にはマイクアイコンのミュートボタンがあるが、これを押すと、こちらのマイクがミュートされる。つまり、相手に聞かれたくない会話のときは、これを押すことでマイクがオフの状態になるのだ。ちなみに、このミュートボタンを押すと、YVC-300にある3つのLEDが赤く点滅する。普段は緑色の点灯状態なので、ミュート状態に入ったことがすぐに分かるようになっているのも便利に感じられた。

正面に音量ボタンやマイクのミュートボタンが配置されている
ミュート状態になるとLEDが赤色で点滅する

 このように会議においては、非常にスマートに利用でき、音質的にも申し分ない状況なのだが、ここでちょっとテストしてみたくなったのは、音楽を流したらどうなるのか?という点。そこで港区側にいる人にお願いし、iPhoneの内蔵スピーカーを使って鳴らした音をYVC-300の近くで流してもらったのだ。ここではJ-POPを再生してもらったのだが、やはり音声処理技術が効くのだろう、イントロ部分などやや不自然な音になってしまう部分があったが、音圧が上がりメロディー部分に入ってくると、キレイに聞こえてくる。ちょっと昔のAMラジオで放送を聞いているような感じだ。そもそもがiPhoneの内蔵スピーカーなので、まあ、そんなところなのだろう。相手にこちらの音を聞かせるという意味では、まったく不満を感じないレベルだと思う。

 次に試してみたのは、マイクに向かって大声を出したらどうなるのか、という実験。YVC-300に向けて「わぁーー!」と叫んでもらったところ、音が割れることもなく、こちらにはキレイな声で伝わってくるのが面白いところだった。オートゲインコントロールが効くせいもあり、普通にしゃべっている音量とあまり差がないのがちょっと不思議にも感じられた。同様に手をたたいてもらったが、それでも音に破たんが起きることもなく届くので、非常に高速な処理をしていることがあらためて感じられた。

PCがなくても電話会議を手軽に実現

 さて、ここでいったん、Skypeを切断するとともに、PCとのUSB接続も取り外した。このYVC-300はUSBのACアダプタを使ってスタンドアロンで動作させることが可能なので、このモードで試してみることにしたのだ。

 もちろん、これ1つだけだと使うことができないが、YVC-300にはBluetoothを使ってiPhoneやAndroidなどのデバイスと接続することが可能になっているので、これを利用することにした。Bluetoothボタンを長押しするとペアリングできるようになっているので、ここではiPhoneと接続。さらに港区側でも同じ環境にしてもらった状態で、電話で千代田区側と港区側を接続したところ、これでも音声会議ができてしまう。

 声質は、まさに電話品質なわけで、明瞭さという面では、Skypeに見劣りするが、それでも相手の声はしっかり認識して聞くことができたし、複数の人がしゃべっても問題なく会話ができるレベルだった。

Bluetoothボタンを長押しすることでペアリング可能
スマートフォンとBluetooth接続し、音声会議を行える

 ここで、今度は電話を切断して、iPhone同士をFacetimeで接続してもらったところ、音質は格段と向上する。先ほどのSkypeと同程度か、さらに高品位な音になるので、より気持ちよくやり取りすることができた。電話なら、誰でも簡単に使えるというメリットがある一方、Facetimeなどを使えば、電話料金もかからず、しかも高音質でのやり取りができるというのは、かなり便利に感じた。

電話とPCで一緒に会議ができるオーディオミキサー機能

 では、ここからさらに複雑な実験をしてみよう。あらためて、千代田区と港区をSkypeで接続。ここでさらに千代田区側のYVC-300にiPhoneをペアリングさせた状態で、こちらにいる一人にビルの外に出てもらい、ガラケーからiPhoneへと電話をかけてもらったのだ。するとYVC-300からは着信音が鳴り響くので、YVC-300の受話器ボタンを押すと電話が接続される。やや不思議な感じではあるが、YVC-300からは港区側の音声が聞こえると同時に、ガラケーからの電話の声も聞こえてくる。この際、声の音質が明らかに違うので、誰の声なのか分かりやすいというのも面白く感じられた。そして、このガラケーからの声は港区側にも届くので、みんなで会話ができるのだ。

 さらに、やや極端な事例ではあるけれど、港区側でも同じように外に一人出てもらい、電話とBluetooth経由で接続してもらった。これにより会議室が2つつながると同時に、外出先にいる電話の2人が一緒に会話できるという不思議な空間を作り出すことができた(下図参照)。試しに、双方の会議室にいる人に少しおとなしくしてもらい、電話の人同士が会話できるものなのか試してみたところ、ここでも違和感なく会話ができてしまった。

オーディオミキサー機能を利用すると、最大で2つの会議室と、外出先にいる2人が同時に会話できる

 あとで、電話で話をしていた人に聞いてみたところ、「電話としては千代田区側、港区側の会議室にいる人も、もう一人の電話の人も音質的な差がなく会話することができた」と話していた。電話品質なので当たり前のことではあるが、なかなか面白いことができるものだとあらためて感心してしまった。

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 以上が今回行ったYVC-300の実験だが、とにかく使い方が簡単で、誰でも迷うことなく利用できそうだというのが一番強く感じられた点だ。裏にはさまざまな技術が詰まっているけれど、そこをまったく意識することなく、普通に便利に使えてしまうのは、やはり技術の進化ということなのだろう。

 Bluetoothと電話を絡めた、従来にはあり得なかったような会話・会議ができるのも新鮮に感じたところだ。YVC-300自体はとってもコンパクトなので、会議終了後はPCから取り外して、ノートPCといっしょに、すぐに持ち運べるポータビリティも、とっても便利に感じられたポイントだった。

 なお、今回はSkypeでテストを行っているが、PCからは普通にスピーカー、マイクとして認識されるので、利用するアプリケーションは問わない。さまざまなコミュニケーションシーンで活躍してくれることだろう。

藤本 健