ランキングで振り返る、エンタープライズ/クラウド業界動向(9~12月)


 Enterprise Watch/クラウド Watchで今年一年間掲載した記事の中から、アクセス数をもとに月別の10大ニュースを選出して紹介する。個人ユーザーでも関心が持てる記事へのアクセスが高くなりがちではあるが、ランキングを通じて業界全体の動きを振り返ってみる。

 今回は、9月から12月までのランキングを紹介する。


【9月】「HP ProLiant」新製品に高い関心

 1位には、日本HPが「ProLiant史上最小」をうたう、マイクロサーバーの記事がランクインした。特集記事のためニュースのランキングからは外れているが、「マニア心をくすぐる『HP MicroServer』を試す」と題して掲載した特集は、3回とも多くのアクセスを集め、注目の高さを伺わせた。小型で静音、低価格ながらも、十分な性能と拡張性を持つことが、人気の理由だろうか。

 7位にも、デルのエントリーNAS製品「PowerVault NX200」などの発売を報じる記事が入った。こうしたエントリーのサーバー、NASなどは、実際に導入しやすいからか、上位に入るケースが多く、たくさんのアクセスを集めていた。

 4位には、「ITパスポート試験」のCBT(Computer Based Testing)を報じる記事がランクイン。国家試験としては初の試みとなる。受験がより身近になるのは、業界にとってプラスに違いない。今後、ほかの試験でもCBTを採用する流れとなるか。

順位記事名掲載日
1日本HP、3万円台から購入可能なAthlon II NEO搭載マイクロサーバー9/9
2Microsoft、無償ウイルス対策ソフトを中小企業でも利用可能に9/24
3マイクロソフト、9月の修正パッチ9件を公開9/15
4ITパスポート試験がPCで受験可能に、2011年11月から9/10
5NEC、エコロジーな次世代オフィス「NEC玉川ソリューションセンター」を本格稼働9/21
6Googleカレンダーのグループ機能を拡充する「feedpath Gadget」無償提供開始9/6
7デル、SMB向けのUTMアプライアンスとタワー型エントリーNAS9/17
8「Flash Player」プレビュー版公開、IE9ベータと64bit版に対応9/17
9無料の「サイボウズLive」、Googleカレンダーとの同期に対応。APIも一般公開9/16
103PAR買収はHPに軍配、買収総額は約24億ドル9/3



【10月】どれだけ大きなニュースも「癒し」には勝てない?

 10月の1位は、日本オラクルの4代目社員犬「キャンディ」の、入社式の様子を報じた記事。子どもと動物には勝てない、というのは、エンタープライズ業界でも同じなのかもしれない(笑)。

 一方、2位に入ったのは、Windows OSのダウングレード条件を整理した記事で、こちらはいわば正統派の話題。企業にとっては、古いOSが入手できるかどうかが、死活問題になることもある。10月22日には、ダウングレード権を利用したWindows XPプリインストールPCの工場出荷が終了したということもあって、高い支持を集めたのだろう。

 7位には、NTTデータのOSSがランクイン。このHinemosのほか、HadoopやEucalyptusなど、クラウドを基軸としてOSSも存在感をさらに増した印象だ。

順位記事名掲載日
1日本オラクル、4代目社員犬「キャンディ」入社式10/15
2Windows XPはいつまで入手可能? Windows OSのダウングレード権を確認しよう10/13
3マイクロソフト、Windows 7/Server 2008 R2 SP1のRC版を提供開始10/27
4アドビ、使い勝手や連携機能を向上させた「Acrobat X」10/19
5日本HP、3万円台から購入可能なAthlon II NEO搭載マイクロサーバー9/9
6「日本をもう一度爆発させる」、シスコが新経営ビジョン「Ignite Japan」を発表10/7
7NTTデータ、OSSの運用管理ソフト「Hinemos 3.2」~大規模環境に対応10/1
8「クラウド」で1000億円、「グローバル」で1000億円~NECのITサービス事業戦略10/13
9マイクロソフト、10月の月例パッチは“緊急”4件を含む16件10/8
10メールの署名から自動で連絡先リストを作るiPhoneアプリ「LISTER」10/4



【11月】1位と2位にAndroidの記事が、皮肉な形で

 1位と2位にAndroid関連記事がランクイン。ただし、1位は新製品発表の明るい記事で、2位はAndoridの脆弱性に関する暗いものと皮肉な結果に。

 3位に入ったのは、クラウドERP/CRMアプリケーションを手掛けるネットスイートの新版提供を報じる記事。クラウドアプリケーションは数多くあるが、ネットスイートは古くからこの分野で活動しているベンダーの1つということもあり、注目している読者も多かったのではないか。

 4位には、EMCによるIsilon買収を報じた記事がランクインした。2010年は本当にストレージベンダーの買収が相次いだ年で、この後、12月にも、DellによるCompellentの買収があり、業界の再編がさらに加速している印象だ。

 10位には、パナソニックとNECの共同輸送の記事。パナソニックの家電をNECのIT製品を運ぶトラックに混載し、輸送を共通化しようという試みだ。自動車/航空機輸送を鉄道/船舶輸送で代替する「モーダルシフト」という方法もあるが、今後はこうした共同輸送の取り組みも増えるとみているが、どうだろうか。

順位記事名掲載日
1NEC、タブレット型Android端末「クラウドコミュニケーター LifeTouch」11/10
2Androidカーネルに350件以上のバグを発見、そのうち25%が高リスク~米コベリティ11/17
3ネットスイート、グローバル企業向け機能を強化したクラウドERPの最新版11/17
4米EMC、クラスタストレージを手掛ける米Isilonを買収11/16
5量子コンピュータへ一歩前進、NTTと京大が新技術を開発11/24
6ネットアップ、ストレージ製品群を一新~「過去最大規模の発表」11/19
7アップル、「Xserve」を2011年1月末で販売終了へ11/8
8さくらインターネット、IaaSのクラウドサービス「さくらのクラウド」発表11/10
9富士通エフサス、サービス残業を抑止するソフト11/17
10パナソニックとNECが共同輸送を実施11/12



【12月】クラウド環境の運用管理市場にも賑わい

 9月に圧倒的な注目度だったHP ProLiant MicroServerの新モデルが発売され、再び1位に返り咲いた。新モデルでは160GBだったHDDを250GBに増強するとともに、電源を200Wから150Wに小型化して最適化を図っている。ハードウェア関連ではこのほか、ロジテックのWindows Storage Server 2008 R2を搭載したキューブ型NASが7位に、富士通と米OracleのUNIXサーバー「SPARC Enterprise Mシリーズ」が11位に、日本HPの高密度サーバー「ProLiant DL2000」が18位に入っている。

 3位には、元「Amazon EC2」開発統括者のクリス・ピンクハム氏らが開発したクラウドOS「Nimbula Director」の記事がランクイン。パブリッククラウドとプライベートクラウドの共存環境において、両方のリソースを効率的に管理できる運用管理システムだ。同様にクラウド管理に関する話題としては、富士通にOEMされたイージェネラ製PAN Managerをパナソニック電工が総代理店として販売すると報じた記事が19位に。ランク外だが12月16日には、デルも物理・仮想・マルチベンダー環境を一元管理する「AIM」を発表するなど、各社各様の取り組みが始まっている。

 コンシューマにおけるTwitterの流行を受け、企業でもマーケティング活用への模索が始まる中、8位の米salesforce.comの無償コラボツール「Chatter Free」も、2010年のトレンドを反映した記事といえる。国産の企業向けTwitterクライアントを報じる記事も10位に入り、企業でのTwitter活用への関心の高さがうかがえる。

順位記事名掲載日
1日本HP、HDD容量を増強した超小型サーバー「MicroServer」新モデル12/9
2東工大、クラウド型グリーンスパコン「TSUBAME2.0」の披露式を開催12/3
3米Nimbula社副社長のリザ・マレクザデ氏が来日会見12/16
4IDC Japan、2011年国内IT市場の主要10項目を発表12/10
5シマンテックと富士通、戦略的グローバル・パートナーシップを強化12/1
6米IBMとNEC、Netezza買収後もDWHアプライアンスの共同開発を継続12/22
7ロジテック、Windows Storage Server 2008 R2搭載のキューブ型NASを発売12/10
8米salesforce.com、企業向けコラボレーションツールの無償版「Chatter Free」12/8
9日立情報、クラウド型FAXサーバー「IfesMate」12/13
10社内でクローズドに情報共有できるTwitterクライアント「grouptwit」12/13
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(編集部)
2010/12/27 11:01