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日本マイクロソフト、650社以上が参加しテレワーク週間を実施
(2015/8/11 06:00)
日本マイクロソフト株式会社は10日、8月24日から28日までの期間に実施する、「テレワーク週間 2015」における取り組みと、同社が目指す新しいテレワークの取り組みについて説明会を実施した。
同社は、2013年までは独自の取り組みとしてテレワーク実施に取り組んできた。2014年以降、外部の企業の参加を呼びかけテレワークを推進している。その結果、2014年は32法人とテレワーク週間を共同実施したが、今年は呼びかけに答える企業が増加し、651法人が賛同している。
「半年間準備を進めてきたが、反響の大きさに驚いている。もともとはマイクロソフト単独で取り組んできたが、昨年から外部企業との連携を実施し、今年は昨年の32法人を大きく上回る651法人に賛同いただいた。このうち大企業は8%、公的機関が8%で残りは中堅・中小企業の皆さま」(日本マイクロソフト 代表執行役会長の樋口泰行氏)。
また新たな取り組みとして、北海道の別海町に日本マイクロソフト社員が出向いて、地方でのテレワーク実施にも挑戦。社員だけでなく、家族ぐるみで別海町に出向いて休暇と仕事の両立、従来はテレワークは難しいとされていたカスタマーサポート部門の、テレワーク実践へのトライアルも行っていく。
日本マイクロソフトではテレワークを行ってきた成果について、現在の品川オフィスに移転する前の2010年時点と比較した、さまざまなKPIを算出している。その結果、ワークライフバランス満足度は40%向上、社員一人あたりの売り上げは26%上昇、社員の意識調査を行った際の「働きがいがある会社」という回答が7%増、といった効果が出たという。その一方で、残業時間は5%減、旅費/交通費は20%減、女性離職率は40%減、ペーパーレス化では49%減といった成果を出しているとのこと。
「テレワークをテーマにしたクローズドの少人数セミナーの回数は、この4年間で1220回、参加者は7498人、そのうち経営層の参加者が31%となっている。一般的なテレワークに対する期待というよりも、日本マイクロソフトが実践しているテレワークについて、労務管理、情報管理といったリスクにどう対処しているのか、といった現実面を含めた興味を持って参加される方が多い。クローズな場ということで、公表が難しいような資料を含め、当社が取り組むテレワークの実態をご紹介している」(日本マイクロソフト エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏)。
こうした成果をふまえ、8月24日から実施する「テレワーク週間2015」では、「テレワークを実践」、「テレワークを学ぶ/議論する」、「テレワークを応援する/協力する」という3つのフェーズから取り組みを行う。
「テレワークを実践」では、全社一斉にテレワークを実施し、出社せずにオフィス外で仕事に取り組む。また、機材の関係からテレワークには適さないとされていたカスタマーサポート部門のテレワーク実践トライアル、派遣スタッフの在宅勤務トライアルも実施する。
さらに、賛同企業であるヤフー株式会社と相互のオフィスツアーの実施、ワークスタイル変革の共同研究を行うほか、ソニーではテレワーク週間中に有志がテレワークの実践、伊藤ハムでは在宅勤務導入に向けた勉強会の実施を行うとした。このほか、佐賀県、豊島区、長崎県新上五島町などの自治体での参加、恵寿総合病院のような医療機関の参加例もある。
「テレワークを学ぶ/議論する」では、賛同法人向けのテレワークセミナーを実施。また、中学生を対象とした未来のテレワークセミナーも行う。
「テレワークを応援する/協力する」では、日本マイクロソフトの品川オフィス1階をテレワークスペースとして解放。中堅・中小企業向け応援施策として、Office 365テレワーク体験無償セットアップ、デバイスの貸与、提供なども行う。
賛同法人からも、パソナが派遣社員のテレワーク労務管理ツールを賛同法人を対象に1週間無償で提供。コニカミノルタビジネスソリューションズは浜松町のテレワークスペースの無償提供などを行う。また、NTTドコモ、KDDI、ロジクール、ポリコムがテレワークに必要な機器の貸し出し、オカムラがテレワークスペースの開放を実施するとした。ユニークな例としては、カラオケルームの歌広場、ジャンカラがカラオケルームをテレワーカー向けに優待価格で提供し、会社に領収書を提出できるように「マイク貸与なし」を明記した特別な領収書も用意する。
テレワークによる地方創生を目指し
また、テレワークによる地方創生を実現するために、北海道の別海町と協力する。別海町は東京23区の2倍の面積を持つ町で、主な産業は酪農と漁業。女性の就労率が低いといった特徴がある。Skypeで会見に参加した、別海町の水沼猛町長は、「別海町を理解していただくには、実際に来てもらうのが一番わかりやすいが、北海道の最東にあり、広大な緑の大地に乳牛と時折エゾシカ(がいる)。そして沿岸には一面の花畑や、空にはオジロワシ、オオワシもいる。今回、テレワークを実践してきた日本マイクロソフトとの協力によって、プラス効果をあげていきたい」と話す。
別海町でこのプロジェクトの受け入れを行う、一般社団法人Be-W.A.C.の代表である山本瑞穂氏は、「自分は大学卒業後、就労経験もなく漁師に嫁ぎ、別海町で暮らしている。子育てサークルを主催していたが、今回、テレワークの話を聞いて、自分で手を上げて受け入れ組織を担当することとなった。酪農、漁業がメイン産業だけに、職業に偏りがあり、女性は家庭にいる人が多い。今回のテレワーク受け入れで、子供たちの将来の選択肢が広がりにもつながるのではないかと期待している」と述べた。
日本マイクロソフト側では、別海町で滞在型テレワークを実践し、自宅とは違う場所での仕事の仕方を模索することで、「将来、親の介護で一時的に実家に戻るといった際の検証にもつながるのではないか」(日本マイクロソフト 執行役常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏)とした。
そのため今回、社員だけでなく、社員の家族を含め、3期にわけて90人が別海町に滞在する予定だ。「家族に対しては交通費の一部を負担するプログラムへの参加者募集を行ったところ、予定よりも多い数の応募があった」(織田氏)と社員の反応も良好という。
テレワークについては、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省などからなるテレワーク推進フォーラム主導で、11月にテレワーク月間が設けられている。今回の会見には、自由民主党のテレワーク推進特命委員会の事務局長である衆議院議員の福田達夫氏も登場。
「昨年5月にテレワークに関する提言をまとめたが、テレワークは企業にとってプラスとなるだけではなく、人が人らしく生きるための活動であり、そのための大きな武器となるもの。育児休暇中にも仕事をするなど、主体性を持って生きるための大きな力となる」と、働く人にとって、テレワークのプラス面をアピールした。