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富士通、2013年度第3四半期の連結決算は増収増益~回復基調のIT投資が好影響

携帯電話事業の構造改革が今後の大きな課題に

富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏

 富士通株式会社は30日、2013年度第3四半期(2013年4月~2013年12月)の連結業績を発表した。

 第3四半期までの累計売上高は前年同期比7.4%増の3兆3523億円、営業利益は前年同期の15億円の赤字から370億円の黒字に転換。経常利益は4億円の黒字から427億円の黒字に、当期純利益は952億円の赤字から、23億円の黒字に転換した。

 また第3四半期単独では、売上高は前年同期比14.5%増の1兆2007億円、営業利益は前年同期の58億円の赤字から261億円の黒字に転換。経常利益は8億円の黒字から306億円の黒字に、当期純利益は808億円の赤字から、120億円の黒字に転換した。

 富士通の加藤和彦取締役執行役員専務は、「上期の連結売上高は前年同期比3.9%増だったが、第3四半期は、さらに国内ビジネスが好調な伸びとなっており、前年同期比14.5%増となった。国内の景況感はいい。産業、金融、公共・地域は前年同期比2けたの伸びとなっている。SIサービスでも2けたの伸びがある。回復感は強くなっている」と総括。

 さらに、クラウドビジネスに関しては、「第3四半期実績で前年同期比20%増を超えている。パブリッククラウドの伸びが高くなっている。月額利用料金で早期に100億円に到達いることを目標にしているが、前年同期は月額60億円。今年度第2四半期で70億円、第3四半期で75億円まで積みあがってきた。あと25億円をパブリッククラウドで増やせれば安定収入モデルの構築につながる。そのポイントが、SaaS、IaaS、PaaSの利用増である。パブリッククラウドを増やせば、次の付加価値サービスの提供にまでつなげることができる。だが、売り切りとなるプライベートクラウドが増加すると、次の商売がやりにくい状況になる」などとした。

 また、2013年度の通期業績見通しを上方修正し、売上高は10月公表値に対して、600億円増の4兆6000億円、営業利益は据え置きの1400億円、経常利益は50億円増の1400億円、当期純利益は据え置きの450億円とした。

 「主に為替レートの見直しが影響している。営業利益ではセグメントにおいて強弱が出ており、テクノロジーソリューションでは30億円増、デバイスソリューションでは20億円増としたのに対して、ユビキタスソリューションでは携帯電話事業の赤字を見込み、120億円の下方修正としている」と述べた。

テクノロジーソリューションは好調、サービスは増収増益基調が続く

 第3四半期単独のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比12.2%増の7863億円、営業利益は同103.6%増の444億円。

 そのうちサービス事業は売上高が同12.7%増の6498億円、営業利益が同85.3%増の170億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は同13.9%増の2219億円、インフラサービスの売上高は同12.1%増の4279億円となった。

 「サービスは増収増益基調が続いており、ソリューション/SIでは、受注好調で注残がたまっている。インフラサービスでは、国内が堅調であるのに加えて、北米、オーストラリアが好調である。為替もプラスに影響している」(加藤取締役執行役員専務)と振り返る。

 またシステムプラットフォームは、売上高が同9.9%増の1364億円、営業利益は同305.3%増の73億円となり、そのうち、システムプロダクトの売上高は、同6.0%増の621億円、ネットワークプロダクトの売上高は同13.5%増の743億円となった。

 システムプラットフォームについては、「システムプロダクトでは、オープン系システムが伸長。特にUNIXは新機種がようやく寄与してきた。これで下げ止まりになったと見ている。またネットワークプロダクトは、北米においてキャリアの投資予算が渋いが、国内のLTE需要が旺盛で、計画通りに進ちょく。システムプラットフォーム全体では計画を達成したもものの、第3四半期はひと休みの状況となっている」(加藤取締役執行役員専務)と語った。

PCは上方修正も携帯電話は依然厳しく

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比20.6%増の3212億円、営業損失は同33億円減の54億円の赤字。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同17.2%増の2426億円、モバイルウェアの売上高が同32.1%増の786億円となった。

 「PCは、国内の法人向け需要が強く、この勢いは第4四半期も続く。第3四半期までは若干の赤字が残っているが、為替影響や単価の上昇で、台数増および増収を計画をする。10月時点で15万台の上方修正をしているが、今回、さらに20万台の上方修正を行い、年間570万台の出荷を見込む。PC事業は通期では立派な黒字になる」という。だが、前年実績の583万台の出荷台数は下回ることになる。

 これに対して携帯電話は、「10月に出荷計画を2割減としたが、第3四半期はさらにこれの1割減となった。第4四半期はさらに悪い状況になるだろう。第3四半期で90億円近い赤字になる予定で、ユビキタスソリューション全体では、第3四半期までの累計で341億円の赤字となる。新規開発投資ものを回収できていないこと、品質問題でのコスト増、在庫の評価損を行ったことなどが赤字の要因」とした。

 通期見通しにおいては、PCおよび携帯電話の売上高で150億円の上方修正を行っているが、これはPCによる上方修正がほとんどとなる。携帯電話の年間出荷計画は、50万台下方修正し、370万台に縮小。前年度実績の650万台からも大きく縮小することになる。「これによって、ほぼ月30万台の生産体制となる。ここで収益をあげられる体質を確立する」として、携帯電話の2つの製造子会社を集約。栃木県大田原市の富士通モバイルフォンプロダクツの生産機能を、兵庫県加東市の富士通周辺機に集約することも発表した。

 一方、デバイスソリューションは、売上高が前年同期比12.8%増の1460億円、営業利益は135億円改善して、42億円の黒字となった。そのうち、LSIの売上高は前年同期比10.5%増の780億円、15.1%増の682億円となった。

 全体的に見ると、IT投資が回復基調にあることによって業績が支えられたほか、Windows XPサポート終了を前にした駆け込み需要の影響で、PCが好調だったことが特筆されるが、携帯電話事業の構造改革が今後の大きな課題となることを浮き彫りにした内容となった。

大河原 克行