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ネットアップ岩上社長、「第3のプラットフォーム周辺にフォーカス、3年で2倍の成長を目指す」

代表取締役社長の岩上純一氏

 「お客さまの成功を支える信頼できるアドバイザーとして、3年で国内の売り上げを2倍にする」――。ネットアップ株式会社は20日、日本での事業に関する説明会を開催。代表取締役社長の岩上純一氏が、2014年度の事業戦略を説明した。

 2012年10月付けで社長に就任した岩上氏は、2013年5月から始まる中期経営計画を策定。その中で、3年で売上高を2倍にするという目標をかかげている。そのためには、単年度で25%を超える成長が求められることになるが、岩上社長は成長のための鍵として「(情報システムの)“第3のプラットフォーム”の関連インフラ技術」を挙げる。

 第3のプラットフォームとは、クライアント/サーバーシステムに代表される第2のプラットフォームに代わって台頭してきた、「モビリティ」「クラウド」「ビッグデータ」「ソーシャル」の各要素を基盤としたプラットフォームのこと。岩上社長が引用したIDC Japanの予測では、今後5~6年の国内のIT市場全体、あるいは外付けストレージ市場が1%台のCAGR(年平均成長率)なのに対し、第3のプラットフォーム市場は7.9%と高く、これに関連したインフラ技術にフォーカスすることにより、ネットアップ自身の大きな成長を目指すのだという。

 具体的な要素として岩上社長は、「クラウド」「VDI」「ERP」「メッセージ&コミュニケーション(M&C)」といった4つのソリューションを挙げたが、実は、クラウドでは対前年186%増、VDIでは同66%増、ERPでは同237%増、M&Cでは同143%増と、これらの市場ですでに大きな実績を残しているとのこと。

 岩上社長は、「もともとたくさん入っており、分母が大きい(ために数字が伸びにくい)クラウドでこの実績を残しているのは、いかにネットアップが効率的で強いソリューションなのかを物語っているし、VDIでは多くの血を流しても逃げずにやってきたことで、『VDIではネットアップ』と言われるようになった。ERPもでも、SANかNASかという視点ではなく、仮想化に強いことから選ばれてきた。ExchangeやSharePointといったM&Cの分野はもともとお家芸だ」と、それぞれの市場での強みについてコメント。さらに、これらのソリューションを強化することで、今後の成長につなげていくとした。

ネットアップのビジョン
ターゲットとする、第3のプラットフォームの関連インフラ技術
この分野では、すでに大きな実績を残しているという

 ただいずれにしても、ネットアップでは鍵となる技術はソフトだと考えているという。ネットアップでは以前から、コモディティ化したハードウェアの上に共通OSのData ONTAPを載せてストレージを構成する一方、管理ソフトのNetApp OnCommandでの統合された管理を提供してきた。こうした同社のアプローチについて、岩上社長は「“Software-Defined”という表現が一般化する前から、社内ではSoftware-Definedという言葉を使っていたストレージベンダーだ」とした上で、Software-Defined DataCenterの実現に向け、同社のストレージが強みを発揮できるとした。

 国内でのVDIの代表的な事例である北日本放送では、わずか一人の担当者が、SIerの力も借りず、VDIのインフラとして同社のストレージを導入したということで、こうした点からも、ネットアップ製品の実装性の高さが証明されたという。

 一方、次世代のクラウド基盤には、“Software-Defined”の概念以外に、いかに無停止で柔軟に拡張しているかも求められる。これに応えるものが、スケールアウトを可能にするクラスタ技術clustered Data ONTAP(旧称:Cluster-Mode)だとした岩上社長は、その国内事例として、情報通信事業者のTOKAIコミュニケーションズを挙げ、「ノンストップ運用を実現するとともに、多様なお客さまのバックアップやメールなどのサービスを、事業継続というキーワードのもとに展開している」と紹介している。

 さらにNetAppでは、ストレージヘッドの「NetApp Vシリーズ」をラインアップしているのも強みとのことで、「各メーカーの混在環境で使われているお客さまは、Vシリーズをストレージの上に被せるとNetAppの上で動くようになり、実際にEMCや日立、HPといった製品の上に載せている超大手のお客さまもいらっしゃる。他社のユーザーでも、Vシリーズを使うだけで、“Software-Defined”のメリットの中で、clustered Data ONTAPを適用できる」と述べた。

NetApp OnCommand
clustered Data ONTAP

 なお、こうしたソリューション視点にフォーカスする一方、各業種・業界特有の事情を考慮し、より顧客の実態に即したソリューションを提供するため、岩上社長は、営業統括本部長だった時代に、それまではパートナー別だった営業組織を業種・業界ごとに組み替えている。これは現在も継続しており、業種に関係ない仮想化、ERP、VDIなどの各種ソリューションの上に、業種・業界向けのバーチカルなソリューションをクロスさせ、リセラー経由、SIer経由、クラウド事業者経由などのさまざまな商流で、それぞれに適した市場へアプローチしていくとした。

 「当社もようやく、単一ストレージOSとしては世界ナンバーワンベンダーになった。ディスクがコモディティ化されている中、我々がほしいシェアはインテリジェンス、つまりソフトウェアで、それがようやく実ってきた」とした岩上社長は、昨今話題のフラッシュストレージ分野でも、すでに多くの実績を持つこと、また、その実績やこれまでのソフト技術を生かして、オールフラッシュストレージのFlashRayの提供を予定することなどに言及。革新は常に追い求めていくものの、「信頼できるアドバイザーとして、お客さまの成長を支えていく」ことを大きな目標として、これからも継続した成長を図るとしている。

石井 一志