SQL Server 2012はエディションを3つに整理、2012年上半期に提供へ

BI向けのBIエディションを追加、ライセンス体系も変更


 日本マイクロソフト株式会社は15日、次期SQL Serverの「SQL Server 2012」(開発コード名:Denali)を2012年上半期に提供することを明らかにした。エディションが3つに整理されるほか、ソケット単位のプロセッサライセンスがコア単位のCore-basedライセンスに改められるなど、ライセンス体系が改定される。

6つあったエディションを3つに整理

クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏

 現行バージョンの「SQL Server 2008 R2」では、最大2CPUまで利用可能な小規模向けのWorkgroupから、Webシステム専用のWeb、部門システム向けのStandard、基幹システム向けのEnterprise、大規模環境向けのDatacenter、ハイエンドデータウェアハウス(DWH)アプライアンス向けの最上位Parallel Data Warehouseまで、実に6つのエディションが存在していた。

 これは「多くのエディションを提供してお客さまに選択の幅を提供する」(クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏)ことが狙いだったが、逆にユーザーからは「たくさんありすぎてどれを選べばいいかわからない」というフィードバックを受けてしまったという。

 そこで日本マイクロソフトでは、SQL Server 2012で提供するエディションを3つに再編成した。エントリーとなるのは「Standard」で、16コアまでのシステムに適用可能。また、全機能が利用でき、利用可能なコア数なども制限がない最上位エディション「Enterprise」を提供するほか、両者の中間に、新たに「Business Intelligence(BI)」をラインアップしている。


SQL Server 2012は3つのエディションで提供される各エディションの主な機能

 この「BI」エディションは文字通り、BI機能をさらに強化したものとなる。SQL Serverは以前から、BI/DWHについてかなり力を入れており、SQL Server 2008 R2でもセルフBI機能「Power Pivot」を追加するなどの強化が図られていた。今回はそれを一歩進め、インメモリTabular型OLAP分析エンジンの導入、セルフサービスBIツール「PowerView」(開発コード名:Crescent)、データクレンジングと名寄せの機能を提供する「Data Quality Service」などが搭載されているが、これらの機能は「BI」「Enterprise」の両エディションで利用することができる。

 斎藤氏は、「以前からBI機能を含んでいるのがSQL Serverの特徴だったが、まだまだBI機能は認知度が低いのが現状で、あらためて市場に訴求する意味で『BI』エディションを提供する」と、この新設の背景を説明。一方で「Enterprise」については、「すべてのSQL Serverを包含し、基幹業務を始めとするミッションクリティカルアプリケーションにも適用可能。大規模DWHで効果的な圧縮やカラムストアインデックス、パーティショニングといった機能や、暗号化などのセキュリティ機能、可用性を高めるAlwaysOnなどの機能を備えている」とした。なお、「BI」エディションが新設されたとはいえ、「Standard」がBI機能をまったく持たないわけではなく、従来同様、OLAPやレポーティング、分析の基本的な機能は利用することができる。

 なお日本マイクロソフトでは、新機能であるPowerViewを訴求するため、体験サイトを公開しており、無償で利用可能。また、「Microsoft BI/DWH Day」と題したイベントを12月12日(月)に、東京の目黒雅叙園で開催する。参加は無料(事前登録制)で、こちらから申し込み可能だ。


インメモリTabular型OLAP分析エンジンセルフサービスBIツール「PowerView」

 このほか、SQL Server 2008 R2の時はパッケージ版と同じラインアップ扱いだった大型アプライアンス向けのParallel Data Warehouseについても、SQL Server 2012ベースでのリフレッシュを予定しているとのことだが、今回はパッケージ版のSQL Serverとは別ラインとして扱われるようだ。また、無償版のExpressエディションも提供は継続される予定。

 

ライセンス体系を変更、Core-basedライセンスを導入

SQL Server 2012のライセンス体系

 SQL Server 2012で一番大きなインパクトがあるのは、ライセンス体系の変更だろう。

 SQL Server 2012は、エディションごと別々のライセンス体系を採用する。斎藤氏によれば、「アプリケーションのワークロードの傾向を想定し、それをベースにしたライセンス課金に変更した」とのことで、例えば「BI」では、エンドユーザーがセルフサービスBI機能などを使って新しい知見を得る、といった利用法が想定されているため、サーバー+CAL(ユーザー数)の課金体系を採用。「Enterprise」では企業全社での利用を想定するために。コア数に応じて課金されるCore-basedライセンスを、また「Standard」はアプリケーションの用途に応じてさまざまな使い方が想定されることから、サーバー+CAL、Core-basedライセンスのどちらでも購入できる。

 また前述したように、ソケット単位で課金されていたプロセッサライセンスは、コア数に応じて課金されるCore-basedライセンスへ変更されているのも、大きな変更点だ。Core-basedライセンスでは、従来の1プロセッサライセンス=4Core-basedライセンスになるように料金が設定され、それ以上は2コアごとに5割増しになる予定。例えば、4Core-basedライセンス(従来の1プロセッサライセンス)の価格を100とした場合、6コアでは150、8コアでは200のライセンス料金が必要になる。また4コア以下の場合は、4Core-basedライセンスとして扱われる(ライセンス料金は現在の1プロセッサライセンスと同じ)。

 斎藤氏は「今の企業では、物理CPUの数がいくつ必要かではなく、何コアが必要か、という形でのアプリケーションサイジングをするのが普通。(Core-basedライセンスでは)コア数が同じ、つまり得られるコンピューティングリソースが同じなら、ソケット数に関係なく値段は同じである」というが、マルチコア化が進むこの時代に、ソケット単位の課金からコア数に応じた課金に変更されるのは、歓迎しないユーザーも多いだろう。


Core-basedライセンスの考え方処理性能が同じであれば価格も同じ、という考え方に基づいているという

 もちろん、既存ユーザーの移行にあたってもいろいろと問題が生じてしまう。そこで日本マイクロソフトでは、保守契約にあたるソフトウェアアシュアランス(SA)を契約しているユーザーに対して、すでに利用しているマシンのコアの利用権を付与する施策を行う。

 例えば、4ソケットで8コアCPUを利用している場合、これまでは4プロセッサライセンスを購入すればよかったが、SQL Server 2012では32Core-basedライセンス(従来の8プロセッサライセンスの金額に相当)が必要になる。しかしこのユーザーがSAを継続している場合、特別に32Core-baseライセンスが提供され、追加のライセンス費用を支払うことなくSQL Server 2012への移行を行えるという。

 SQL Server 2012は2012年上半期中に提供される予定だが、それまでにSAを含めてSQL Serverのライセンスを購入し、実際に展開していればこうした恩恵が受けられるため、計画を前倒しにして導入を進める、というのも対策の1つになるだろう。


プロセッサライセンスを持つSAユーザーに対しては移行措置が適用されるボリュームライセンスのEnterprise Agreementの場合の移行プラン

 またCore-basedライセンスでは、SAを契約した場合、物理サーバー、仮想サーバー、クラウド環境へ自由にライセンスを移動できるようになる。ホスティングサーバー内の仮想環境や、Windows AzureのVM Roleなどを利用してSQL Serverを動作させる、といった場合に、手持ちのライセンスを移動して利用できるようになるため、クラウド利用が当たり前になりつつある時代に即したライセンスだ、と同社では説明している。


クラウドへの移行/共存を見据えたライセンス体系だという
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