日本マイクロソフト、次期SQL Server「Denali」の機能をお披露目~技術資料も公開
ミッションクリティカル機能「SQL Server AlwaysOn」などを搭載
日本マイクロソフト株式会社は29日、次期SQL Serverである「Denali(開発コード名)」のCTP(コミュニティ・テクノロジ・プレビュー)3を対象とした技術資料「SQL Server "Denali"自習書シリーズ No.1」を公開。また同日には、報道陣を対象とした説明会も開催された。
米MicrosoftではSQL Server 2005以来、「2~3年に1回、新しいSQL Serverをリリースし、市場で必要とされる機能を、タイムリーに製品へ取り込む」(日本マイクロソフト クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏)という方針で開発を継続している。
今回、技術資料が提供された「Denali」も、このリリースサイクルにのっとって開発が進められており、2012年中の提供が予定されているとのことで、すでに、日本語対応のCTP3が7月に提供開始され、新機能の検証がほぼ可能になっているという。
もともと、SQL Serverでは、ミッションクリティカル、データ分析、ユーザーの生産性支援、といった3つの軸で、機能の追加や拡張が行われてきた歴史を持つ。今回の「Denali」でも、その軸は変わっておらず、それぞれで大きな強化が行われている。
クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏 | 3つの軸で機能の追加や拡張が行われてきた |
「Denali」における機能拡張の考え方 |
ミッションクリティカル性の強化 |
その中でも斎藤氏が特に強調したのは、ミッションクリティカルの部分だ。当初は小規模システム向け、エントリー向けという印象が強かったSQL Serverも、信頼性や性能、セキュリティといった面で着実に進歩しており、銀行の勘定系システムを始めとして、ミッションクリティカル用途で数多く利用されるようになっている。現行バージョンのSQL Server 2008 R2でも、この分野の強化はされているが、どちらかといえばBI系のメッセージが強く押し出されていたこともあって、「Denali」では基本に立ち返り、さらに発展させた「Mission Critical Confidence」とのメッセージで、大幅な強化が図られている。
具体的には、まず「SQL Server AlwaysOn」機能として、計画停止/計画外停止の削減に向けた強化が行われた。計画外停止の削減については、これまでのWSFC(Windows Serverフェイルオーバー・クラスタリング)やDBM(データベースミラーリング)を拡張。WSFCで必要だった高価な共有ディスクストレージを不要にするほか、DBMではサポートされていなかった、複数セカンダリやアクティブセカンダリに対応している。こうした改良によって、より容易なクラスタ設定や、障害時の迅速な復帰を可能にしたという。
また、GUIを持たないWindows Server Coreへのインストールをサポート。「通常のWindows Serverと比べてパッチの数を50~60%削減できることから、OSの再起動の回数を削減し、計画停止時間の短縮につなげられる」(クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの北川剛氏)とした。
続いて性能面では、「カラムストアインデックス」に対応し、大量データの集計処理において、大幅な性能向上を実現するという。これは、SQL Server 2008 R2のPowerPivot for Excelで実装された、インメモリのカラムベースエンジン「VertiPaq」をRDBに負うようしたもので、行単位ではなく、列単位でのインデックスの格納と圧縮を可能にした。
斎藤氏が紹介した第三者機関の検証によれば、1億2000万件のデータ処理で約100倍の性能向上が得られたとのことで、斎藤氏は「必要な項目だけを持ってくることにより、性能の改善が期待できる。DWH(データウェアハウス)だけでなく、夜間バッチのパフォーマンスも劇的に改善する可能性がある」とした。
劇的な高速化を実現できるという |
2つ目の分析についても、新ツール「Crescent(開発コード名)」や、KPI表示対応などが強化されたPowerPivot 2.0によって、データの可視化を支援。データクレンジングと名寄せの機能を提供する「Data Quality Service」も、データ活用という観点からは注目される機能となる。
3つ目の生産性支援という点では、アプライアンス、ボックス(オンプレミス)、クラウドの各要素を、同一コードから派生したもので提供する「ABC戦略」を強みとして訴求。同一の開発ツール、管理ツールによって、ユーザビリティの高い形で提供できるのはSQL Serverだけと強調する。また、既存のJDBCドライバを継続提供するほか、Hadoop Connectorを提供するなど、既存資産・新規試算との相互接続性も確保していくとした。
分析系の強化 | 生産性支援の強化 |
「SQL Serverは10年前のSQL Server 2000から、ビジネス全体では約2倍に、Enterprise Editionに限れば約3倍に成長した。この期間の市場全体の成長は約10%で、いかにSQL Serverが飛躍的に成長したかがわかるだろう。市場の成長を大きく超えるのは理由があり、市場に求められる機能を都度追加してきたからだ」(斎藤氏)。
SQL Serverの成長 |