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AWS、日本に新設するデータセンターに低炭素型コンクリートの採用を発表
2025年1月31日 13:20
アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)は31日、日本に新設するデータセンターの建設において、従来型と比較してエンボディドカーボン(建設資材の製造、輸送、設置、保守、廃棄で生じる二酸化炭素排出量)が64%少ない低炭素型コンクリートの採用を開始したと発表した。
日本では環境配慮型とも呼ばれるコンクリートを採用する新データセンターの建設は、クラウドとAIサービスに対する顧客需要の拡大に対応するために、AWSが2027年までに実施する日本への2兆2600億円の投資計画の一環だと説明。Amazonは、Global Optimismと「The Climate Pledge(クライメイト・プレッジ)」を共同で創設し、2040年までにネットゼロカーボン達成に向けた取り組みを進めており、AWSのクラウドインフラにおけるエンボディドカーボンの削減も、そのコミットメントの実現に向けたAmazonの取り組みの一つだとしている。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 代表執行役員社長の白幡晶彦氏は、「AWSは過去10年以上にわたり、クラウドとAIを活用した日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するため、持続可能性に重点を置いて日本のクラウドインフラの拡大に投資を行ってきました。具体的には、クラウドインフラの運営におけるエネルギー効率の向上、先進的な冷却技術の採用、建設における低炭素型コンクリートの使用、再生可能エネルギーへの投資など、日本のお客様により持続可能なクラウドを提供することに注力しています。データセンターの建設においてエンボディドカーボンを削減することは非常に複雑な挑戦ですが、日本におけるコンクリートの脱炭素化の加速に微力ながら貢献できることに誇りを感じています。今後もAWSの東京リージョンおよび大阪リージョンへのデータセンター拡充を継続するにあたり、サプライチェーン全体と連携して、環境に配慮したデータセンターの設計と建設に向けた取り組みを進めていきます」と述べている。
2024年に発表した、2027年までの日本への2兆2600億円の投資計画は、日本の国内総生産(GDP)に5兆5700億円貢献し、国内で年間平均3万500人以上の雇用を支える見込みで、この投資によって生み出される経済成長は、日本経済の生産性向上を加速し、多様な規模の企業のDXを推進すると説明。加えて、AWSパートナーネットワーク(APN)を強化し、日本のデジタル人材を育成し、電力網における再生可能エネルギーの利用を加速させ、AWSが事業を展開するコミュニティに貢献するとしている。
また、AWSは世界中の顧客に高性能で耐障害性が高く、安全で持続可能なクラウドを提供するため、インフラストラクチャの革新を絶え間なく続けていると説明。AWSは2024年12月には、次世代の生成AIイノベーションに向けて設計された、データセンターを支える一連のコンポーネント技術を発表した。この技術を活用することにより、計算能力が12%向上し、機械のエネルギー消費量が最大46%削減され、エネルギー効率と持続可能性のさらなる向上が実現される見込みだとしている。これには、データセンターの建屋で利用するコンクリートのエンボディドカーボンを、業界平均と比較して最大35%削減することも含まれる。
AWSの新しいデータセンターにおける取り組みとしては、株式会社竹中工務店の協力のもと、基礎にECMコンクリートというコンクリートミックスを使用していることを紹介。ECMコンクリートでは、コンクリートを構成する成分であり炭素含有量が多いセメントの60%~70%を、鉄鋼を製造する際の副産物である高炉スラグに置き換えることで、コンクリート由来の温室効果ガス発生を低減している。AWS東京リージョンのデータセンター群では、地震発生時における構造的な耐震性強化のためにデンターセンターの基礎を大きくしている。そのため、日本におけるコンクリートの脱炭素化の取り組みにおいて最も大きなインパクトが期待されるとしている。
AWSはまた、清水建設株式会社の協力のもと、日本国内の別のデータセンターにおいて、コンクリートに混入することで炭素を貯留する「バイオ炭」を非構造体コンクリートに使用している。バイオ炭は、廃材などを高温の無酸素状態で炭化することによって生成される資材で、樹木が成長過程で大気から得た炭素を分離し、コンクリートに閉じ込めることで、そうでない場合よりも長く大気への放出を食い止められる。非構造体コンクリート部で使用するコンクリートには2.6%のバイオ炭が含まれ、これはコンクリートで使用するセメントの製造中に放出された温室効果ガスを完全に相殺できる量だとしている。
さらにAWSは、株式会社大林組の協力のもと、日本国内の別のデータセンターの基礎下部にCleanCrete(以下、クリーンクリート)というコンクリートを導入した。クリーンクリートは、業界の標準的なコンクリートよりも体積炭素量が約70%削減されている。大林組はスラグの増量によりコンクリートと大気の反応がより速く進み、補強鉄材が腐食するリスクの回避策として、表面から30センチ以内までクリーンクリートを打設し、24時間後に通常のコンクリートで仕上げることで、低炭素型コンクリートが大気と反応するのを防いでいる。
Amazonは、自社のインフラストラクチャ内のエンボディドカーボンの量を低減すべく、低炭素鋼や低炭素型コンクリートといった低炭素型資材の利用を増やしおり、AWSが低炭素型コンクリートを利用して建設したデータセンター数は世界で2022年の16件から2023年には36件に増加したと説明。また、2024年1月には、自社の設計基準を改定し、世界でデータセンターを新設する際にはエンボディドカーボンが業界標準よりも35%低いコンクリートを使用することを必須としているという。