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IoTを活用した次世代“ものづくり”ソリューション「NEC Industrial IoT」

 日本電気株式会社(以下、NEC)は16日、IoT(Internet of Things)を活用した次世代ものづくりソリューション「NEC Industrial IoT」を提供開始すると発表した。また同社では、Industrial IoT関連事業で、2018年度までの4年間における売上高で、累計2000億円を目指す考えも明らかにした。

 NEC Industrial IoTは、「現場・現物・現状のデジタル化」、「見えない・隠れた世界を見通す」、「ITとOT(Operational Technology=制御・運用技術)の連携」、「製品・サービスのスマート化」、といった4つのIoT活用ポイントに対して、画像認識、ビッグデータ分析、SDNなどの技術を活用した各種ソリューションを体系化したもの。「プロセス・イノベーション(つながる工場)」、「プロダクト・イノベーション(つながる製品)」を実現し、日本の製造業の競争力強化に貢献する。

 NEC 執行役員 エンタープライズBU担当の松下裕氏は、「IoTの進展によって、あらゆるものや情報がつながる時代が訪れ、産業のパラダイムチェンジが起こっている。一方で、ドイツではIndustrie4.0、米国ではIndustrial Internet Consortiumの動きなどがあり、これらは日本の製造業においても大きな脅威になっている。日本の企業が団結して対抗していく必要がある。NECは、プロセス・イノベーション、プロダクト・イノベーションの動きに対応したNEC Industrial IoTを提供することで寄与したい」との狙いを説明。

 さらに、「グローバルでの生産プロセス改革、グローバルでのトレーサビリティ実現・品質向上、新製品の創出力強化により、ものづくりコストを最小化し、付加価値を最大化する未来を実現する」と述べた。

NEC 執行役員 エンタープライズBU担当の松下裕氏
次世代ものづくりソリューション「NEC Industrial IoT」の概要

 具体的なソリューションとして、「現場・現物・現状のデジタル化」では、画像認識技術を活用して、現場、現物の実態を見える化し、管理の効率化や現場改善を実現。世界初の物体指紋認証技術を活用した「個体認証トレーサビリティシステム」や、AR技術を活用して生産現場における作業性の向上や未熟練者の支援を実現する「AR活用作業支援システム」などを提供する。

 「見えない・隠れた世界を見通す」では、多種・大量のデータから、NECの各種ビッグデータ分析技術を活用して、品質向上や生産効率化につなげるソリューションを提供。製品の品質、性能を高精度に予測することで品質向上や手直し回避を実現する「品質・性能分析システム」、通常とは異なる挙動を発見して、故障の予兆をとらえ、設備機器の稼働率向上を実現する「設備故障予兆検知システム」を提供する。

「現場・現物・現状のデジタル化」
「見えない・隠れた世界を見通す」

 「ITとOTの連携」においては、NECのファクトリーコンピュータを基盤に、設備機器の通信規格やメーカーの違いなどを吸収する。また、製造管理システムなどの業務システムとの連携による設備機器のリアルタイムでの最適制御を実現し、工場ネットワークにSDNを活用することで、生産ラインの変更にあわせた柔軟にネットワーク変更、セキュリティ確保を実現するとした。

 「製品・サービスのスマート化」では、NECのM2M基盤である「CONNEXIVE」をIoTプラットフォームとして強化する考え。センサーデータや映像データなどの各種非構造データの収集から蓄積、必要な形式に加工したデータの抽出、リアルタイム分析、分析に基づく制御までの一連の処理を実現するIoT基盤を提供していく。

「ITとOTの連携」
「製品・サービスのスマート化」

 「NEC Industrial IoTでは、これまでNECが提供してきた各種ソリューションに加えて、新たな製品の投入や、既存製品の機能強化を図っている。NECでは、分断されたプロセスをつなぐサイバーフィジカルSIの提供、多様なものづくりデータの価値転換ソリューション、進化し続ける製品のセキュアなプラットフォームの提供といった点で、価値を提供できると考えている」(松下執行役員)とした。

 NECでは、2012年から生産革新活動のノウハウなどを提供する「NECものづくり共創プログラム」を開始。現在、562社1471人の会員を有しており、これらの会員企業とともに、IoT活用に向けた研究や実証実験などを推進している。8月には、Industrial IoT分科会を発足して、効果的なIoT活用方法や課題の研究のほか、関係省庁や団体と情報交換などを行う予定。

 「今年度中に1000社、3000人にまで会員数を拡大していく。これによる大手企業だけでなく、中堅企業なども入ってくることになるだろう。さまざまな課題が抽出することができると考えている。Industrial IoT分科会は、5つめの分科会として発足するものであり、当初は20社程度が参加することになると見込んでいる。日本の製造業を強くするための取り組みになる」(松下執行役員)という。

NECものづくり共創プログラムの概要
NECものづくり共創プログラムの強化

 また、設備機器制御やロボット制御などの技術で強みを有する制御機器メーカーをはじめ、各業界の企業、団体との協業を推進する。現在、三菱電機、デンソーウェーブ、ロボット革命イニシアティブ協議会、CC-LINKなどとの協業体制が確立されており、今後、パートナーとして参加する企業、団体を拡大していくとのこと。

 「日本の製造業を強くするという観点から取り組んでおり、海外企業の参画は現時点ではない。だが、将来に向けては検討課題のひとつ」とした。

 さらに同社では、7月1日付けで、NEC Industrial IoTの推進組織を新設。30人体制で、Industrial IoT分科会でのIoT活用に向けた研究、実証実験などに取り組むほか、NEC自らがIoT活用を実証し、それで得た知見をNEC Industrial IoTの各ソリューションに反映させるという。

 「NECでは1990年代から、生産革新活動により、効率向上、リードタイムの短縮を実現したほか、SCM改革による製販統合などを実現。開発生産プロセスやシステムの標準化にも取り組んできた。こうした取り組みが、NEC Industrial IoTにつながっている。現在、ダイナミックなグローバルバリューチェーンの構築、製品IoTによる安心効率的な運用サービスの提供、生産ラインIoTによる品質・稼働の向上に取り組んでおり、モデル生産ラインは今年夏までに福島工場に構築。生産性において30%向上などを目指す」(NEC ものづくり統括本部長の久保田紀行氏)とした。

 また、松下執行役員は、「今回のNEC Industrial IoTは、先端IoT技術の活用、NEC自身の実証、パートナー連携による提供価値の拡大、お客さまとの共創の4つの観点から取り組んでいくものになる。2014年度のIndustrial IoT関連事業の売上高は400億円規模。2018年度には単年度で2倍規模の売上高を想定している」と述べた。

NEC ものづくり統括本部長の久保田紀行氏
体制強化と目標

大河原 克行