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NEC、2014年度通期売上高は現事業ベースでは2%増、2015年度は増収増益目指す
(2015/4/29 00:00)
日本電気株式会社(NEC)は28日、2014年度通期(2015年3月期)の連結決算を発表した。売上高は前年比3.5%減の2兆9355億円、営業利益は同4.4%増の1281億円、経常利益は同3.8%増の1121億円、当期純利益は同2.0%増の337億円となった。
代表取締役 執行役員社長である遠藤信博氏は、「NECビッグローブの非連結化で減収となり、対前年度比ではマイナスになったが、現事業ベースでは2%の増収となった。営業利益は3期連続で会社計画を過達し、当期純利益は3期連続で会社計画過達、前年度比増益となった」と現事業でのプラスを強調した。
2015年度(2016年3月期)の計画については、中期経営計画「2015中期経営計画」の最終年度にあたることから、中期経営計画の進ちょく状況にあわせて説明を行った。売上高は前年比5.6%増の3兆1000億円、営業利益は同4.4%増の1350億円、経常利益は同3.9%増の1200億円、当期純利益は同2.1%増の650億円。2013年に発表した中期経営計画の発表時点では、売上目標は3200億円で、営業利益も1500億円だったが、当期純利益については逆に600億円から650億円へと2013年の発表時よりも50億円プラスとなっている。
「2015中期経営計画では、13年度を準備の年、14年度を実績の年、15年度を成長の年と位置づけていた。この計画通り、2015年度は2016年以降にとっても重要な年であり、事業の非連結化の影響もなくなり、前年比増収増益、当期純利益650億円必達を目指す」(遠藤社長)としている。
今回の決算についてNECでは、社会ソリューション事業への注力、グローバル成長基盤の確立、安定的な財務基盤の確立といった成果があったものの、成長戦略の具体化と加速、収益改善に向けた取り組み強化といった部分が課題となったと分析した。
実際の発表内容は、決算発表の4日前となる4月24日に、連結業績予想の修正および特別損失の計上を発表。修正の原因として、「システムプラットフォーム事業、テレコムキャリア事業などの事業分野の売上高が想定を下回った」ことがあげられていたが、決算発表はほぼこの修正通りとなった。
セグメント別では、パブリック分野は、売上高は前年比11.3%増となる8219億円、営業利益は同9.1%増となる748億円で、官公庁、公共向けに売上が増加し、営業利益についても不採算案件の減少などにより増益となった。
エンタープライズ分野は、売上高は前年比0.7%減の2705億円、営業利益は同3.1%増の83億円となった。流通・サービス業向け売上高は堅調に推移したが、製造業向け事業は前年よりもやや減少した。営業利益については、売上減だったものの、費用効率、収益性改善によってトータルでは収益性改善を実現した。
テレコムキャリア分野は、売上高は前年比2.0%増の7402億円、営業利益は同8.4%増の620億円となった。国内の売り上げは横ばいとなったものの、海外では海洋システム、Mobileバックホールなどで増加し、全体で増収となった。営業利益も海外を中心とした売り上げ増の影響で増益となった。
下方修正の原因の一つとして名前があがっていたシステムプラットフォーム分野は、前年比6.6%減の7289億円、営業利益は同4.3%増の314億円となった。前年がWindows XP特需があったのに対し、その反動でビジネスPCの販売台数減少が減収の原因となったものの、NECフィールディングおよびNECプラットフォームズの統合効果などによって増益となった。
その他の分野については、売上高は前年比28.9%減の3741億円、営業損益は同1.1%増の40億円となった。NECビッグローブの株式売却にともなう非連結化、エネルギー事業が当初計画を下回ったことなどにより売上高は減少したものの、携帯電話端末事業の改善などにより増益となった。
2015中期経営計画の進ちょくは?
2015年度業績予想と、2015中期経営計画の進ちょくについては、まず中期経営の方針として、(1)社会ソリューション事業への注力、(2)アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進、(3)安定的な財務基盤の構築を掲げ、営業利益率5%、海外売上比率25%の早期実現を目指すとしていた。
計画時点と比較し、現在の環境変化点として、マイナンバー制度、野外通信システム、消防デジタル無線/指令システムなど国内の公共インフラ投資需要の拡大というプラスがあるものの、エネルギー市場の立ち遅れ、円安にともなう資材費上昇といった課題も出てきている。
こうした課題を払拭するために、海外・注力領域で戦略的投資1としてSDN、エネルギー分野中心に150億円を投資する。
また、業務プロセス最適化実現に向け、本社管理部門および事業部門のスタッフ大半をNECマネジメントパートナーに集約。不要な業務廃止、標準プロセス設計をすすめ、NECグループ全体に標準プロセスを普及・定着させる。この結果から、間接業務量の30%を削減し、余剰人員については人的リソースが不足しているマイナンバー関連事業、東京オリンピック関連事業に割り当てる。
2015年度のセグメント別売り上げ予想
2015年度のセグメント別売り上げ予想では、パブリック分野は売上高は前年比5.2%増の8650億円、営業利益は同9.9%増の860億円としている。マイナンバー制度対応、東京オリンピック/パラリンピック関連といった市場機会増大による大型案件が見込めることに加え、NECの得意分野である顔認証システム、群衆行動解析といった各種ビッグデータ活用したビジネスが期待できるとしている。
グローバル事業としても、重要施設向け安全運転支援システム、水マネジメント、空港トータルソリューション、認証ソリューション、サイバーセキュリティなど成長が見込める分野が多いと予測。国内、グローバルのどちらでも増収増益を見込んでおり、「中期経営計画目標を上回る推移となっている」(遠藤社長)という。
エンタープライズ分野は、2014年前半に国内IT投資が足踏みする傾向が見られたものの、売上高は前年比7.2%増の2900億円、営業利益は同3.8%増の110億円。足元の受注は回復傾向にあり、製造業向け、流通・サービス業向けともに前年比で増加を見込む。収益についても収益性改善に注力していく方針だ。
テレコムキャリア分野は、売上高は前年比5.4%増の7800億円、営業利益は同8.2%増の640億円を予想している。SDNの商用化が遅れているものの、「NEC自身の技術的な強み、ネットクラッカー社とのグローバル拡販体制強化により、案件拡大につなげる」(遠藤社長)と、SDNのビジネス化に強い意欲を見せている。テレフォニカのブラジル子会社であるテレフォニカブラジルで、vCPEサービスの商用ネットワークによる大規模トライアルが4月に開始されるなど、グローバル展開にも自信を見せている。
システムプラットフォーム分野は、売上高は前年比4.3%増の7600億円、営業利益は同4.3%増の330億円と予想している。足元の円安の影響、新たなグローバルビジネスモデルの展開の遅れといったマイナスがあるものの、国内でのマイナンバー需要、Windows Server 2003の更新需要の取り込み、国内SDN市場のけん引、新たなIoTプラットフォーム構築など新しい展開も積極的に進める。
遠藤社長はグローバルでのシステムプラットフォーム分野の事業強化として、「グローバルではわれわれのサーバー製品などの競争力はない。グローバルでのシステムプラットフォーム事業拡大のためには、IoTのためのプラットフォームを構築し、競争力を得られるのかを考える必要がある。幸い、われわれはスパコンを含めたベクトル処理で強みを持っている。例えば風の流れ、気象の変化といった予測はスカラーでは処理できず、ベクトル処理でないとできない。そういったビッグデータ予想をからめた、プラットフォームを現在研究している最中。サーバーなども含めた大きなプラットフォームを、グローバルでも展開できるシステムプラットフォーム分野の新事業として検討している最中」だと説明した。
その他分野は、売上高は前年比8.2%増の4050億円、営業利益は同1.0%増の40億円。エネルギー事業の市場形成・立ち上がりの遅れもあって、増収を見込むものの収益は微増と予測している。
遠藤社長は、「2015中期経営計画の最終年度にあたる2015年度は、計画通り成長の年を実現する」としている。
ICTソリューションでビジネスをする、という方向感は変わらない
2016年度以降の事業の方向感としては、「まだ方向感が見えているわけではないが、NECのアセットである、ICTソリューションを使ってビジネスをするという方向感は変わらない。海外での社会ソリューション事業をさらに強化する必要があると考えるが、海外、国内では社会ソリューションの作り方がだいぶ違う。ワン・トゥ・ワンではなく、ワン・トゥ・メニーのソリューションを構築する必要があると考えるが、例えばインドのホテルに顔認証を導入できたが、これを横展開することが始まり、インドだけでなく、アジアに展開が始まっている。こういう動きが海外でできれば」と説明している。
また、24日に行った下方修正の要因となった生産拠点の再編の対象である、NEC埼玉は“ガラケー”といわれるフィーチャーフォンの生産を行っているが、「2017年までに閉めると明確にはしているわけではない。フューチャーフォンについては、あと2年間の供給をする中で、今後、われわれの端末のサプライの仕方を決定する。現時点では最終判断をしているわけではない」(遠藤社長)と具体策は明言しなかった。
2017年3月期から、国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することも明らかにした。これは、「投資家からも強い要望があり、適用する必要があると感じたため」(取締役 執行役員常務兼CFOの川島勇氏)と説明している。