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PaaS「Oracle Cloud Platform」を国内でも本格展開~「オンプレミスの技術がそのまま使える」

 日本オラクル株式会社は9日、同社のPaaS(Platform as a Service)への取り組みについて記者説明会を開催した。日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏は、2020年に向けた同社の戦略「VISION 2020」において「ナンバーワンクラウドカンパニーになる」という目標を掲げており、今回その具体策の一部を明かした。

 同社は同日、米国ですでに発表していたPaaS「Oracle Cloud Platform」を国内でも正式に提供開始すると発表。データベース製品のクラウド版となる「Oracle Database Cloud Service」をはじめ、アプリケーション実行基盤の「Oracle Java Cloud Service」、Java EEアプリケーションのチーム開発を支援するツール「Oracle Developer Cloud Service」、クラウド型BIサービスの「Oracle BI Cloud Service」、クラウド型ファイル共有ソリューション「Oracle Documents Cloud Service」をラインアップとしてそろえている。

 杉原氏は、「オンプレミスで国内市場シェアトップのOracle Databaseや、Blu-ray・携帯電話などさまざまな機器で使われているJavaがパブリッククラウドで利用できるようになる。今後オンプレミスとクラウドを連携させていきたい」とした。

日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏
Oracle Cloud Platformのラインアップ

 また、日本オラクル 副社長執行役員 データベース事業統括の三澤智光氏は、「クラウドを導入するにあたってユーザーは、迅速性や性能、低コストであることなどを求めるが、実際に利用してみると結局複雑性が増してしまったという悩みや、意外とコストがかかってしまった、またスピード求めて導入したものの、クラウドをつなぐテクノロジーが完成しておらず効率性に欠けていたという課題が浮き彫りになってきている」と指摘、Oracle Cloud Platformがこうした課題を解決すると述べた。

日本オラクル 副社長執行役員 データベース事業統括 三澤智光氏
現行のクラウド環境における課題

 三澤氏によると、Oracle Cloud Platformは、オンプレミスと同じアーキテクチャや製品で提供することが大きな特徴だという。オラクルのユーザーは、数多くのミッションクリティカルなアプリケーションをオンプレミス上で設計しており、「こうしたアプリケーションをクラウドでもそのまま使えるようにするのがわれわれの使命だ」と三澤氏。

 オンプレミスでもクラウドでも同じ技術が使われていることで、「ユーザーはオンプレミスでもクラウドでも、さらにはハイブリッド環境でも、自由に選択してアプリケーションが使えるようになる。また、JavaやSQLという開発者人口が最も多いテクノロジーによってクラウドアプリケーションを提供しているため、技術者の知識やノウハウもそのまま生かすことが可能だ」としている。

 三澤氏はまた、オラクルがPaaSのみならず、IaaS(Infrastructure as a Service)とSaaS(Software as a Service)も用意していることを強調、「すべての領域でサービスが提供できることもポイントだ」と話す。中でも今回発表したPaaSは、「業界で最も包括的なPaaSだ」と三澤氏。データベースやBIなどに加え、「今後はビッグデータやIoT(Internet of Things)関連のクラウドサービスも提供していく予定だ」としている。

 コストについても、データベースを比較した場合、ソフトウェアやハードウェア、オペレーション、ファシリティのコストを含めると、オンプレミスではコアあたりのコストが月額1530ドルになると試算。それがOracle Database Cloud Serviceの場合はコアあたり月額月1000ドルで、約35%のコストが削減できるとしている。

Oracle Cloud Platformの特徴

技術者の育成や認定制度も

 今後Oracle Cloud Platformを普及させるため、オラクルではクラウド技術者の育成やパートナープログラムも充実させる予定だ。日本オラクル 執行役員 CEOオフィス クラウド事業戦略室の高橋正登氏は、「ORACLE MASTERの資格保持者24万人を中心にトレーニングを展開し、1万人のクラウド技術者を育成する」としており、ORACLE MASTERのクラウド版として、Oracle Cloud Platformの技術者認定制度を立ち上げる予定があることを明かした。

クラウド技術者の育成を支援

 また、Oracle Solution Centerにて、オラクルのパブリッククラウドとプライベートクラウドのハイブリッドが検証できる環境を提供する。マイグレーションやスケーラビリティ、ディザスタリカバリなどさまざまなパターンのハイブリッドクラウドが検証できるほか、同センターにて技術サポートを受けることも可能だという。

 パートナープログラムとしては、既存の再販プログラムや紹介プログラム以外に、ISV向けの契約プログラムを提供する。また、オンライン動画コンテンツやコミュニケーションフォーラムなどでの教育プログラムを充実させるほか、Oracle Cloud Platform上で開発されたアプリケーションやアドオンのオンラインカタログを提供するなど、営業支援プログラムも強化する予定だ。

 同日開幕した「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」では、米Oracle 取締役会経営執行役会長 兼 CTOのLarry Ellison氏が、日本国内にてデータセンターを開設すると発表している。杉原氏によると、データセンターの場所は未定だが、関東圏内にて選定中で、年内の開設を目指しているという。「2015年はオラクルがクラウドを本格的に展開する年になる」と杉原氏は述べた。

藤本 京子