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ソフトバンク、香川県豊島で電動二輪車のレンタルサービス「瀬戸内カレン」をスタート

オラクルのPaaSで車両情報や位置情報、充電状況を収集・分析

 ソフトバンク株式会社およびPSソリューションズ株式会社は、日本オラクルと協力し、電動二輪車などのパーソナルモビリティに移動体通信網を接続したInternet of Moving Things事業を開始。第1弾として、香川県小豆郡土庄町豊島において、本田技研工業の電動二輪車「Honda EV-neo(イーブイ・ネオ)」を使用したレンタルサービス事業「瀬戸内カレン」を、2016年3月26日から開始した。

本田技研工業の電動二輪車「Honda EV-neo(イーブイ・ネオ)」

 電動二輪車に、ソフトバンクの移動体通信網につながる車載機を搭載。位置情報をリアルタイムに把握し、可視化できる。運転状況は、中央管制センターで監視。通信環境は、LTEを活用し、5秒ごとにデータを送信する。さらに、電動二輪車にセンサーを搭載することで、急発進や急ブレーキ、コースアウトなど、運転が適正に行われていないことも自動で検知できるという。

EV-neoに搭載された移動体通信網につながる車載機

 サービス提供基盤には、日本オラクルのPaaSである「Oracle Cloud Platform」を採用。Oracle Internet of Things Cloud Service、Oracle Database Cloud Service、Oracle Java Cloud Serviceにより、電動二輪車とリアルタイムに連携して、車両情報や位置情報、充電状況を収集し、分析する。

 「Oracle Internet of Things Cloud Serviceでは、IoTを活用するための機能が包括的に提供されており、今回のサービスは、3日間で構築することができた。IoTサービス基盤により、位置情報をもとにした利用者へのリアルタイムなサービス提案や、利用域外への走行に対する警告などを、容易かつ柔軟に設定することが可能で、パーソナルモビリティの利便性向上と、全体視点によるサービス監視支援環境を迅速に構築できる。今後、新たな機能を追加していくことで、サービスを向上させていくことになる」という。

Oracle Internet of Things Cloud Serviceを活用した管理画面

 レンタルサービス事業の運営は、ソフトバンクグループの1社であるPSソリューションズが行い、13台の電動二輪車を使用する。

 電動二輪車は1日3800円で利用でき、専用Webサイトから、事前に予約および決済が行うことが可能。貸し出しは豊島家浦港の貸出返却拠点で行う。

 PSソリューションズでは、パーソナルモビリティの利用解析データの活用により、二輪車をはじめとするパーソナルモビリティとの連携サービスを創出。パーソナルモビリティの活用方法をパッケージサービス化し、大気汚染や環境問題を抱える国内外の都市などを対象に、移動体通信網とつながるパーソナルモビリティ交通インフラとして展開していくという。

 また充電インフラには、ソフトバンクが開発した充電・認証システム「ユビ電」を活用。充電ケーブルを通じて、認証信号を双方向通信する独自の個体認識技術の採用により、プラグを挿すだけで、個体の識別番号を読み取って認証し、クラウドシステムと連携することで、誰が、何に、いつ、どこで、どれだけ充電したかを把握することができる。

 豊島家浦港を拠点として、島内に充電場所を設置し、利用者に「ユビ電」マークがあるコンセントを自由に使える環境を提供する。

ユビ電は豊島家浦港の貸出返却拠点に設置している
再生可能エネルギーを活用して電動二輪車を稼働させる
EV-neoに充電を行っている様子

 ソフトバンクでは、今後、Internet of Moving Things事業の拡大にあわせて、「ユビ電」を海外展開する考えも示した。「Internet of Moving Things事業は、今後2、3年でひとつの山場を迎える」(ソフトバンク ITサービス開発本部 M2Mクラウド事業開発室の山口典男室長)とした。

ソフトバンク ITサービス開発本部 M2Mクラウド事業開発室の山口典男室長
EV-neoに乗るソフトバンクの山口室長

 3月25日午前11時から、香川県小豆郡土庄町豊島において、「瀬戸内カレン」のオープニングセレモニーが開かれた。

 豊島は、瀬戸内海の東部に位置し、小豆島の西側3.7㎞の海上にある。日本で最初に定められた瀬戸内海国立公園に含まれ、島の周囲は約20km、人口は約1000人。縄文時代の遺跡が点在し、棚田が広がる豊かな島として知られる。

 また、3回目を迎える「瀬戸内国際芸術祭 2016」の会場のひとつともなっており、同イベントでは、「海の復権」をテーマに、20以上の国と地域から、約200組の作家やプロジェクトの出展が予定されている。今回の瀬戸内カレンも、「瀬戸内国際芸術祭 2016」が3月20日からスタートしたタイミングにあっており、島内に常設されているアート作品や、同イベントに出品されている作品を鑑賞するために、電動二輪車を活用することができる。

棚田が美しい香川県小豆郡土庄町豊島
豊島美術館などが置かれるなど、アートの島でもある
瀬戸内のきれいな海に面している
豊島では瀬戸内国際芸術祭 2016が開催されている

 オープニングセレモニーでは、関係者が参加してテープカットを行った。

テープカットを行う(左から)PSソリューションズ・植野正徳取締役、日本オラクル 専務執行役員 エンタープライス第一営業統括・三露正樹氏、ソフトバンク ITサービス開発本部M2Mクラウド事業開発室・山口典男室長、香川県小豆郡土庄町・山本彰治顧問、家浦自治会長・三宅忠治氏、豊島甲自治会長・向井勝末氏

 瀬戸内カレンの事業責任者である、ソフトバンクの山口典男室長は、「今回のサービスは、モビリティとエネルギーを組み合わせたものであり、エネルギー活用の新たな取り組みになる」とあいさつ。

 また、「豊島は、全周で約20kmの島であり、ひとつのまとまった地域において、再生可能エネルギーを利用しながら、区切られた環境のなかで完結し、新たなモビリティの姿を提案することができると考えている。電動二輪車の走行可能距離としても最適である。美しい島であり、美しいアートがあり、パーソナルモビリティサービスの事業化に適している。ここで、必勝パターンをつくれば、全国展開や全世界展開ができると考えている。まずは、事業として成り立つということを証明したい」とした。

 さらに、「豊島においては、レンタカーやレンタサイクル、路線バスなどがあり、こうした既存ビジネスと共存できる補完的なサービスとして、展開していくことも重要である」と主張。「サービスに関しては、地元雇用により、2~3人で対応することになる。期間は限定しておらず、求められる限り続けたい。今後、『豊島のような仕組みを導入したい』という声が出るようになれば、この事業は成功したといえる。新たな成功モデルとして、成果を固めたいと考えており、観光客にはこの仕組みを活用して、島の観光を楽しんでいただきたい」とした。

 ソフトバンクでは、瀬戸内カレンにより、年間600~1000万円の事業規模を目指し、若干の黒字を想定しているという。

島ではレンタサイクルを用意しており、観光に利用できる

 また、「収集したデータを活用して、ユーザーをサポートしていくといったことにも取り組みたい。位置情報をもとにして、船の出発時間を知らせたり、観光するルート情報を蓄積して、新たなサービスにつなげたりといったことも可能になる。さらに、今回の電動二輪車のサービスの成果をもとに、ほかのパーソナルモビリティやクルマなどにもつなげていきたいい」とも話す。

 ソフトバンクでは、3年前に同じ豊島において、ベネッセホールディングスとともに2人乗り電気自動車の実証実験を行っているほか、奈良県明日香村でも、小型モビリティを活用したレンタルサービス事業に取り組んできた経緯がある。今後、カンボジアのアンコールワットにおいても、同様の取り組みを行う考えを示した。

 また、日本オラクル 専務執行役員 エンタープライス第一営業統括の三露正樹氏は、「2000年前後に、インターネット接続が普及し始めたときには、日本は接続料金が高い国だと言われていた。だが、いまは世界で、一番安くて、高速な環境が整った。この先駆者がソフトバンクである。その環境に、すべてのものがつながり、M2MやIoTが広がり始めているが、まだテストフェーズの域を出ていないのが実情。これを実業として、実践するという意味で、ここでもソフトバンクが先駆者となる」と述べる。

 また「今回の取り組みにおいて、日本オラクルは、ホンダの電動二輪車の認証や位置情報の取得、バッテリー残量を、IoTクラウドサービスで吸い上げていく点で支援していくことになる。さらに決済サービスを提供し、運行情報をビッグデータで蓄積して、次のサービスにつなげることにも取り組みたい。将来的には、観光客の質問に対して、機械学習を活用しながら適切な回答をしていくといったことも行いたい」。

 「日本オラクルは、POCOの標語のもとに、顧客の新たな事業展開において、速く、手軽に実現できる支援を行っている。今回のサービスを通じて、クルマやウェアラブルなどにもサービスを広げ、豊島がきっかけとなって海外に展開することを期待したい。また、快適な観光サービスとして知られ、新たな観光客が訪れ、またリピーターになることを期待したい」などと語った。

 地元を代表して、家浦自治会長の三宅忠治氏は、「瀬戸内国際芸術祭 2016の開催により、島に活気を得たところで、さらにこうした事業が入ってきたことはありがたい。豊島は道が狭く、坂が多い。十分注意し、豊島を楽しんでもらいたい。豊島の発展に寄与してほしい」と語った。

 一方、PSソリューションズの植野正徳取締役は、「当社は、2008年から、日本オラクルの代理店であり、最上位の認定資格であるプラチナムの資格取得者数は国内トップレベルであり、そうしたノウハウを活用した」とした。

日本オラクル 専務執行役員 エンタープライス第一営業統括の三露正樹氏
家浦自治会長・三宅忠治氏

大河原 克行