「ITのコンシューマライゼーションは新しいチャンスをもたらす」~インテル、vPro搭載PCの進化を説明
米Intel インテル アーキテクチャー事業本部副社長兼ビジネス・クライアント・プラットフォーム本部長のリック・エチャベリア氏 |
インテル株式会社は17日、ビジネス分野のクライアントの方向性について記者向け説明会を開催した。冒頭、米Intel インテル アーキテクチャー事業本部副社長兼ビジネス・クライアント・プラットフォーム本部長のリック・エチャベリア氏は、「インテル・テクノロジーは286、386、Pentiumとコンピューティング進化を実現し、2003年にはモバイルテクノロジーを加速させるCentrino、2006年にはビジネスプラットフォームvProと、着実な進化を提供し続けてきた」と自社の実績をアピールした。
しかも、「ビジネスコンピューティングは拡大し、企業のソーシャルメディア採用、画像や音声、ビデオといったリッチなコンテンツの増加、セキュリティの必要性などハードウェアへの要求はさらに高まる傾向にある」と指摘した。
インテル・テクノロジーがもたらしたビジネスコンピューティングの進化 | ビジネスコンピューティングニーズは拡大 |
ビジネス・パーソナル・コンピューティングを革新する4つのポイント |
インテルではこうした現状に対応するために、ビジネス・パーソナル・コンピューティングの革新として、次の4分野の実現が必要だという。
(1)管理部門の作業自動化による生産性の向上
(2)クライアント側の処理能力を犠牲にしないセキュリティー
(3)コンピューティング・モデルの進化に対応した柔軟性
(4)消費者としての感性とCIOとしての責任の両立
最初に挙げられた、自動化による生産性向上の具体例としては、北海道函館市にある社会医療法人高橋病院のvProテクノロジー採用事例が紹介された。
同病院はベッド数179床の函館地区の中核病院で、ITを活用した地域連携ネットワークを構築。最新デスクトップPCにvPro搭載機を導入した結果、2009年時のデスクトップPCと比較し、最大で63%の電力削減を実現した。
ITビジネスプロセス自動化を容易に実現するために、「レゴブロックを組み立てる要領でワークフローを作るツールを提供。リモートキーボードマウステクノロジーを利用し、開発中のWindows 8(開発コード名)搭載PCを利用しても、容易にITビジネスプロセスを自動化する設定が可能となる」(エチャベリア副社長)ことが、デモで披露された。
さらに2012年には、第3世代Core iプロセッサファミリにより、高いパフォーマンスと強化されたグラフィックス機能を持つ、第6世代のvProテクノロジーが提供される計画で、「詳細については来年に入ってからあらためてご説明する」(エチャベリア副社長)とした。
ITビジネスプロセスを容易に自動化 | Windows 7マシンとWindows 8搭載マシンを使ったITビジネスプロセス自動化を行うデモ | 2012年に発表する第3世代Core iプロセッサファミリの方向 |
2番目のセキュリティに関しては、McAfeeとのコラボレーションによりセキュリティ管理コストの削減を進める。
McAfeeでは、エンドポイントのセキュリティポリシーをvProまたはMcAfee Agent経由で配備するために、McAfee ePolicy Orchestrator(ePO)を提供。
「これまではOS上で動くソフトとしてMcAfee製品を提供してきた。それだけでは防げないセキュリティ対策として、vProとの連携によりOS越しのリモート管理を実現する」(マカフィー セールスエンジニアリング本部 シニアエンジニアの高谷宏幸氏)。
これにより管理者がPCの不具合によって現地訪問をする必要がなく、PCの電源が入っていないためにアップデートができないといった問題を回避することができることから、最新のウイルス定義ファイルへのアップデートが実現するなどのメリットが生まれる。
セキュリティ確立のためにクライアント保護に向けた包括的アプローチ | McAfeeとのコラボレーション | ビジネスPCを取り巻く時代背景 |
McAfeeのePOはvProと連携 | ePo管理コンソール上でインテルAMTが有効化されたPCを確認可能 | McAfee ePO Deep Commandができること |
モバイル環境のセキュリティ対策としては、11月15日にインテルキャピタルの投資が発表されたワンビ株式会社との連携により、デバイスの遠隔消去ソリューションが提供拡充された。
「当社は個人情報保護法などの施策により、モバイル機器の持ち出しを禁止する企業が増加したことに着目し、2006年にパッケージソフトとしてデータの遠隔消去を行う『トラストデリート』の提供を開始。その後、OEM販売、パナソニックとの連携によるモバイルPC側での対策などを提供してきた。今回、インテルのアンチセフトテクノロジー対応となることで、メーカーを選ばず対策を提供する環境が整った」(ワンビ 代表取締役社長の加藤貴氏)。
インテルキャピタルが投資したワンビ | ワンビ 代表取締役社長 加藤貴氏 | ワンビが提供する遠隔データ消去ソリューション「トラストデリート」の歩み |
3点目の柔軟性については、昨年10月に発表した「クラウド2015ビジョン」に準拠した方向性を提唱。パブリック、プライベートどちらのクラウド上でもデータを安全に共有し、IT部門は管理作業を自動化によって減らすことでイノベーションを実現。クライアント側は、デバイスの機能に基づいてサービスを最適化し、最適なユーザー体験を実現するために、「コンピューティング、コンテキスト、機能(ケーパビリティ)という3つの“C”に合わせて最適化されることで、誰もがメリットを享受できる環境を整えることが必要となる」(エチャベリア副社長)と説明した。
さまざまな企業が提供するデスクトップ仮想化テクノロジーもvProに対して最適化が進んでおり、「そのすべてに1サイズで提供することは不可能で、コンピューティングの進化に合わせた柔軟性を持って対応する」(エチャベリア副社長)という。
インテルが描くクラウド2015ビジョン | 柔軟なインテリジェント・クライアントが新しいニーズを発生 | インテリジェントなデスクトップ仮想化 |
4番目の、消費者としての感性とCIOとしての責任の両立については、「コンシューマ分野で起こっているフォームファクタの革新はビジネス分野にも起こっている」と指摘。ノートPC分野ではUltraBookの登場により、よりモビリティの高いクライアント機器が普及。デスクトップ分野においても、安全なHDビデオ会議導入で、従来の電話よりも高品質な音声、コスト削減など統合化されたコミュニケーションが実現すると指摘した。
「ビジネス向けUltraBookの登場で、ITのコンシューマライゼーションはIT部門にとって解決すべき課題から、新しいチャンスをもたらすものへと転換していくだろう」(エチャベリア副社長)。
フォームファクターの革新はビジネス分野にも | ビジネス分野革新の具体例として東芝製UltraBookを手にするエチャベリア副社長 | デスクトップPCの革新 |
ノートブックPCの変化 | モバイル・コンピューティングにおけるデバイスの融合 | UltraBookが生み出す新たなビジネスチャンス |
インテルでは、vProテクノロジーをさらに進化させていく方針で、「この技術はゲーム機、POSなどの組み込み機器、デジタルサイネージ分野、ワークステーション、サーバーなど他分野へと応用、拡張を進める」(エチャベリア副社長)ことも明言した。
進化を続けるインテルvProテクノロジー | デモで利用された2台のvProテクノロジー搭載マシン |