ニュース

「企業における働き方の変革をサポートする」~Ultrabookの成功事例をインテルが紹介

 「Ultrabookを使ったイノベーションが、企業におけるの働き方の変革をサポートする」――。インテル株式会社は11日、企業向けUltrabookのビジネスに関する記者説明会を開催。高いモビリティ、セキュリティなどの特長を生かして企業に受け入れられている現状をアピールした。

 薄型・軽量のノートPCとして、最初のUltrabookが2011年秋に登場してから1年以上が経過した現在、メーカー各社から多数の機種が提供されたことや、インテルのさまざまなマーケティング活動もあって、ユーザーには「Ultrabook」という単語はかなり浸透しつつある。

 インテル グローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部 副本部長兼マーケティング統括部長の笠倉英知氏は、Ultrabookは単に薄くて軽いノートPCというのにとどまらず、パッと起動して移動先で使いたい時に使えること、長時間のバッテリ駆動が可能なこと、安心して使えるセキュリティがあることなどをその特徴として紹介。企業での利用環境にも適合しているという点をアピールする。

Ultrabookが働き方の変革をサポートする
インテル グローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部 副本部長兼マーケティング統括部長の笠倉英知氏

 この中でも、社外での利用を考慮すると特に重要になるセキュリティという点では、PCの機能をチップセットレベルでロックできる「インテルAT(アンチセフト)」、ワンタイムパスワード機能をチップセットに組み込む「インテル IPT」が特に有効とのことで、例えば、訪問看護・医療介護サービスを提供する名古屋市高齢者療養サービス事業団では、200台を超えるUltrabookを導入しているが、インテルATによって端末の盗難・紛失対策を実現したという。

 「この事例では、以前はデータを印刷し、それを持って訪問していたが、これをすべて電子化し、インテルATによって紛失時のセキュリティ面を確保した。また、当初はタブレットを利用していたものの、画面が小さいと見づらいこと、また月例のサマリレポートを作成するにはキーボードが必要なことなどから、Ultrabookを選択している」(インテル グローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部 セキュリティー&マネジャビリティー・テクノロジーの坂本尊志氏)。

Ultrabookに搭載されたセキュリティ技術
インテル グローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部 セキュリティー&マネジャビリティー・テクノロジーの坂本尊志氏

 またユーザー企業から、常陽銀行 営業推進部 法人営業グループ 主任調査役の小林弘幸氏が登壇した。同行では、企業向けインターネットバンキングサービス「JWEBOFFICE」の推奨端末として、マウスコンピューターのUltrabookを選定しているが、必ずしも持ち運ぶとは限らないインターネットバンキング向けの推奨端末にUltrabookを選んだ理由はやはりセキュリティ面なのだという。

 「JWEBOFFICEでは安全性を高めて利用者の不安を一掃するために、インテル IPTと連携するベリサインのワンタイムパスワード技術を採用しており、これに対応できることが推奨PCとする条件だった」と、小林氏は説明。この条件を満たしているUltrabookを採用したと話した。

常陽銀行 営業推進部 法人営業グループ 主任調査役の小林弘幸氏
マウスコンピューターのUltrabookを企業向けインターネットバンキングの推奨PCとして顧客に提案している

 またもう1社、オービックビジネスコンサルタント(OBC) 開発本部 ICTセンターの宮治朱美氏は、自社での導入事例を紹介した。同社では、営業担当が利用するものを中心に、PCをパナソニックのコンバーチブルUltrabook「Let's note CF-AX2」へ変更しているが、この背景には、業務ソフト「奉行シリーズ」の最新版でタッチインターフェイスをサポートしたことがある。

 従来、奉行シリーズのソフトに入力されたデータのチェックは、視認性などの問題からわざわざ紙に印刷して行い、修正する場合はまたソフトに戻って、という煩雑な手順を踏むことが多かったのだという。しかしWindows 8などのタッチデバイスを用いると、スマートフォンなどで慣れたピンチイン/アウトの動作によって画面を拡大できるので、視認性が向上。修正もその場で行えるため、業務効率が大幅に向上する。

 コンバーチブルUltrabookであれば、こうした使い方を提案するにあたって、営業がその場で実演できるし、従来のノートPCと同じ使い方もできる。さらに、軽くて持ち運びがしやすいUltrabookなら持ち運びも苦にならないし、プレゼンで必要となるプロジェクタへの出力も、有線LANのインターフェイスも備えているなど、さまざまな点で実際のビジネスシーンに適合できた。

 「今までのノートPCからUltrabookへリプレースした結果、SSDを搭載していることもあって、早くなったという感想を持っている社員が多かった。またSSDは壊れにくいので、持ち歩く際にもあまり気にしなくてすむ点も優れているし、バッテリもしっかり持つので、業務に支障がない点も長所と言える」(宮治氏)。

OBC 開発本部 ICTセンターの宮治朱美氏。手にするのはコンバーチブルUltrabookのLet's note CF-AX2
OBC社内での活用例

すべてがUltrabookになるのか?

 「出た時はモバイルPCと考えていたが、使い方をさまざまユーザーが考えてくれた」(インテルの坂本氏)こともあって、このように多くの成功事例が生み出されてきたUltrabookだが、筆者がひとつ気になったのは、このところUltrabookだけが強調されすぎるがゆえに、より適したほかの製品があるところにも、Ultrabookが逆に入り込んでしまうのではないか、という点だ。

 これについてインテルの笠倉氏は、「企業ではないが、例えば、家庭内ではA4サイズのノートPCが利用されていることが多い。しかし、家の中で持ち運ぶ事例は多いと聞いているし、スリムかつ省電力なUltrabookへの移行というのも、ひとつのトレンドと考えている」と、ある面ではマーケティングメッセージをより強く出していきたい考えを示す。

 また坂本氏は、「Ultrabookが登場したことによって、ある一定のスペックが保証されていることのメリットもあると聞いている。従来は、情報システム部門にPCを頼んでも、期待した性能の製品をすんなり導入してもらえないといったケースもあったが、Ultrabookと指定すれば、予期しないものが来ることは避けられる。しかも、現実的な価格で導入が可能になった」と話し、Ultrabookが普及したことでメリットが生まれている面があると説明する。

 ただし最終的には、ユーザーへ選択肢を提供して最適なものを選択できるようにすることが大事なのはいうまでもないことだ。笠倉氏も、「さまざままよい面があっても、もちろん、すべてがUltrabookになるとはインテルも考えていない。ユーザーに最適なプラットフォームを選んでいただくことが重要と考えている」と述べ、これからもさまざまなラインアップの提供をメーカーとともに行っていくとしている。

(石井 一志)