WebLogicやJava SEの方向性は? オラクルのミドルウェア戦略


 日本オラクル株式会社は1日、ミドルウェア製品の戦略説明会を開催した。


アプリケーションサーバーの進化と方向性

Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクターの清水照久氏
同社のアプリケーション実行基盤

 まずはFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクターの清水照久氏が、JavaEEアプリケーションサーバー「WebLogic Server」について紹介。

 「バージョン10.3/10.3.4にてOracle DatabaseやOracle RACとの最適化などオラクル製品との統合を果たし、バージョン11g R1にて、Javaとの機能連携によるミッション・クリティカル機能の強化などサンとの統合を進めている」とした。

 将来のロードマップとして、「クラウド/PaaS管理機能の強化」「NoSQL対応強化(ビッグデータ対応)」「仮想化ネイティブ対応」「JavaSE/EE新仕様対応」などを進め、社会基盤、クラウド基盤へと進化させるという。

 一方でITシステムを取り巻く技術トレンドとしては、仮想化、クラウド、さまざまな分散処理、マルチデバイスが挙げられる。顧客ニーズとしては、ITの所有から利用への流れ、モバイル・ソーシャルサービス・スマートグリッドなど社会基盤としてのITが求められている。

 これらのニーズに「高速性」「ゼロダウンタイム」「オラクル製品との親和性」「低いTCO」といったWebLogic Serverの優位性を訴求する清水氏。「今までと同様、ミッションクリティカル、高速性の追求に軸足を置いていく」と今後の方向性を示した。

WebLogic Serverの進化優位性



成功事例が増えてきたインメモリ・グリッド技術

Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの杉達也氏

 次にFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの杉達也氏が「Oracle Coherence」について採用状況と今後の展開を紹介。

 Oracle Coherenceは、インメモリ・グリッドと同社が呼ぶ技術で、物理マシンの境界を越える“拡張可能な”仮想メモリ領域を実現する。

 「ECサイトを例に取ると、売り上げを上げるためには多くのユーザーをサイトに呼び込み、一人のお客様に多くの商品を購入してもらうことが必要。そのためには、サイト側にある程度の規模とアクセス急増を吸収できる仕組みが必要となる」。

 代表的な事例は、ヨドバシカメラ、楽天、日本生活協同組合連合会などのEC関連である。ヨドバシカメラでは増加する商品情報、さらなる情報拡大に対応するため同製品を活用。楽天ではデータベースの稼働状況に左右されないサービス可用性を実現している。

 日本生活協同組合連合会では、複数の事業体でインフラを共有するECサイトにてOracle
Coherenceが活用されている。効果としては、商品カタログのページ遷移が2倍に上がり、従来の限界の3倍の集中アクセスに対応可能になったという。

  月には全日本空輸(ANA)での採用が発表されたが、この事例でも、バーゲン売り出し時の人気航路に対する空席紹介や予約・解約のような、アクセスピーク時にも安定したレスポンスを維持するために、Oracle Coherenceが活用されている。

 「インメモリ技術というと高速性が最も分かりやすい効果だが、これらの事例から分かるとおり、“拡張可能な点”がOracle Coherenceの最大の効果といえる」。

Oracle Coherenceの成功事例

 今後の展開としては、「大量トラフィック処理+リアルタイム計算による差別化をさらに図り、M2M(Machine-to-Machine)やセンサーネットワーク領域に注力し、人が介在しない自動検出や自動処理に強みを発揮していく。また、より高いサービスレベル、耐障害性、災害対策に取り組み、社会基盤領域へ踏み込んでいく」とした。


JRockitが統合されたJava SE新製品

Java SEのラインアップ
JRockit JVMとSun JVMの特徴

 今回の説明会では、7月中旬に国内展開を開始するJava SE新製品についても紹介された。

 Java SE新製品では、無償版「Java SE」、有償サポート製品「Java SE Support」、有償版「Java SE Advanced」「Java SE Suite」が提供される。

 無償版「Java SE」は、従来どおりJava Development Kitを無償で提供するものだ。オラクルによるサン買収のシナジーとして、今回、通常の「Sun JVM」に加えて「JRockit
JVM」が同梱されるようになった。

 JRockit JVMは、Intelアーキテクチャに最適化された高性能と安定稼動のためのJVMで、汎用的なSun JVMと比べて大規模なエンタープライズ向けシステムなどで効果を発揮するという。メンテナンスも従来通り3年間無償で提供される。

 有償版「Java SE Advanced」では、Java SEにミッションクリティカル・システムのための付加機能が提供される。具体的には、Javaアプリケーションの運用監視ツール「JRockit Mission Control」、障害対応を支援するツール「JRockit Flight Recorder」などだ。上位有償版「Java SE Suite」にはこれに加えて、ガベージコレクションによる処理遅延を平準化し安定したレスポンスを実現する「JRockit Real Time」が提供される。

JRockit Mission Controlの特徴JRockit Flight Recorderの特徴

 世の中には数多くの新しい開発言語が生まれているが、それでもJavaはいまだに世界中の開発者から支持されている。その利用分野は、サーバー、デスクトップ、モバイル、TV、カードと幅広く、デスクトップにインストールされている数は11億、毎年JREがダウンロードされる数は9億3000万、Javaが稼働する携帯電話数は30億にも上る。2005年のJava生誕10周年に「Javaなしでは地球は回らない」とサンが語ったが、その状況は今も変わらない。サンを買収したオラクルとっては、Javaのメリットを開発者にどう提供するのか、今後も積極的に説明していくことが重要な使命といえるだろう。

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