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日本ではIoTがサブスクリプション市場拡大のカギ――、Zuora、ツォCEOが国内事業戦略を発表

 Zuora Japan株式会社は13日、都内において報道関係者向けに国内事業戦略発表会を実施、同日開催された同社主催のカンファレンス「Subscribed Tokyo 2016」にあわせて来日した米Zuoraのファウンダー兼CEOであるティエン・ツォ氏が、サブスクリプションビジネスの概況と日本市場の可能性について説明を行った。

 会見でツォ氏は「我々がZuoraを創業してから8年が経過したが、ようやく本格的に日本でのサブスクリプションビジネスの普及/拡大に取り組めることを心からうれしく思う。日本は以前から大きなオポチュニティがあると確信していた市場。特にIoT分野では高い成長が見込めると思っている」と語り、日本市場への強い期待感を表明している。

米Zuoraのファウンダー兼CEO ティエン・ツォ氏

 Zuoraは現在、利用者が使った分だけの料金を支払う、いわゆる従量課金型のサービスを"サブスクリプションビジネス"と呼び、これらのサービスを提供する事業者(サブスクライバー)向けに、サブスクリプションサービスの基盤となるクラウドプラットフォーム「リレーションシップビジネスマネジメント(RBM:Relation Business Management)」を提供している。

 RBMプラットフォームの機能には、プライシング、見積もり、Web販売、契約管理、請求/回収、売上計上、レポート/分析などが含まれており、個別の機能ごとに導入することも可能だ。また、Zuoraプラットフォームはローリングリリース、つまり継続的に機能をアップデートしていくスタイルを採っており、すでに「80カ月以上連続でバージョンアップをしている」(ツォ氏)という。

 現在、Zuoraの顧客はグローバルで800社を超えているが、以下の5つの業界がメインのターゲットおよび代表的な顧客企業となる。

・テクノロジ:IBM Watson、Box、Google、Salesforce.com、Dell、Pivotalなど
・IoT:General Electric、General Mortors、NCR、GoPro、Schneider Electricなど
・メディア:Wall Street Journal、Financial Times、The Guardian、Dow Jonesなど
・通信:AT&T、Polycom、Tata、Rogers、YPなど
・B2C:TripAdvisor、Pearson、Zillow、HomeAway、Swannなど

 ツォ氏は会見でいくつかのサブスクリプションビジネスの成功事例を取り上げているが、そのひとつがIBMのWatosonにおけるユースケースだ。つい最近まで、IBMはハードウェア企業としてのイメージが強く、Zuoraが言うところの"プロダクト販売モデル"を掲げる企業の代表だったといえる。しかしコグニティブデータサービスとして提供するWatsonは課金プラットフォームにZuoraを採用したクラウド上のサブスクリプションサービスとして展開しており、ユーザー数を大きく伸ばしている。

 Watsonの成功についてツォ氏は「顧客のニーズが所有から利用へ、汎用からカスタマイズへと変化しており、その変化を正しくキャッチアップした成果。Zuoraによって劇的なスピードでサブスクリプションビジネスの基盤を構築することができた」と評価する。既存のERPでは対応できない、圧倒的なスピード感でのサブスクリションプラットフォーム構築がZuoraの最大の強みといえる。

プロダクト販売モデルとサブスクリプションモデルの違い。サブスクライバ(サービス提供者)を中心に螺旋を描くようにサービスやユーザーが拡がっていくイメージ
サブスクリプションビジネスで成功するにはERPではなく、サブスクリプションにまつわるビジネスプロセスの変化にすべて対応できるプラットフォームが必要であり、それがZuora RBMだと強調
ERPではサブスクリプションビジネスに要求される柔軟な仕様変更や顧客のニーズの変化に対応していくことがむずかしい。プラットフォームとしてのアップデートも時間がかかる

 グローバルでの採用事例を着々と増やすZuoraだが、日本法人の設立は2015年であり、国内市場への参入は今年からようやく本格化したかたちだ。国内のパートナー企業はMKI、日立ソリューションズ、GMOペイメントの3社。またユーザー企業は約20社で、その中には弥生、チームスピリット、コマツ、ウィングアーク1stなどが含まれる。

 そして14日は新たに東芝のIoTプラットフォームでの採用が発表されており、日本でのIoTサブスクリプションビジネスを飛躍的に伸ばしたい意向だ。「日本は世界のなかでもひときわユニークな市場だと認識している。とくにIoTの分野では製造業で蓄積されてきた膨大な経験と技術があり、これらがサブスクリプションビジネスと非常に親和性が高いと確信している」(ツォ氏)。

13日に発表された東芝のIoTプラットフォームへの採用事例
ユーザー企業に聞いたZuoraを採用する理由。グローバル展開しやすいのも大きな理由のひとつ

 「ZuoraのRBMはインターフェイスの日本語化や、月末締め/翌月払いなど日本独自の商習慣にも対応している。サブスクリプションビジネスへ転換するには、プライシングや契約にかかわるビジネスプロセスを大幅に変えなくてはいけないが、Zuoraであればごく短期間でコストを抑えたサブスクリプションプラットフォームを構築できる。Salesforce.comなど既存のCRMとの連携も柔軟に対応できる」(Zuora Jaoan 代表執行役社長 桑野順一郎氏)。

Zuora Jaoan 代表執行役社長 桑野順一郎氏

 クラウドの普及に伴い、"所有から利用へ"という考え方が拡がった結果、従量課金型のサブスクリプションビジネスに対する関心も拡がり、エンタープライズだけでなくApple Musicなどメジャーなコンシューマサービスの基盤としても普及が進んでいる。

音楽配信サービスなどコンシューマ分野でもサブスクリプションビジネスが世界的に拡大しつつある

 「2020年にはサブスクリプションの管理システムの市場規模は20兆円にもなると言われているが、だがOracleやSAPなど既存のERPではサブスクリプションビジネスの成長に追いつけない。サブスクリプションビジネスはプラットフォームだけでなく、ビジネスのプロセスも企業文化さえも大きく変える。日本のユーザもその変化に乗り遅れないようにしてほしい」とツォ氏。

 はじめての開催となった「Subscribed Tokyo 2016」には1000人を超える来場者が訪れており、国内市場でもサブスクリプションビジネスへの関心が高まりつつある機運はたしかにある。ビジネスモデルの変革と収益の向上、その両方を実現するサブスクリプションプラットフォームとして、国内での事業拡大が期待される。