インタビュー

【特別インタビュー】Dellはどこへ行こうとしているのか?~非公開化、期末業績、クラウド本格参入について、デル・郡社長に聞く

 デルが大きな転換期を迎えている。米Dellは、創業者でもあるマイケル・デルCEOとSilver Lakeが公開済み株式を取得し、非公開化することを発表。非公開化によって、Dellの経営体質が大きく変わることは明らかだ。

 また、ここ数年、ソリューションプロバイダーへの転換を標ぼうする同社は、引き続き積極的なM&Aを展開し続けており、製品およびサービスのポートフォリオの拡充によって、新たなDellの姿を描こうとしている。そして、日本法人は今年設立20周年の節目を迎え、日本における存在感をさらに高める考えだ。

 デルはこれからどんな方向に行こうとしているのか。そして、デルはなにが変わり、なにが変わらないのか。デルの郡信一郎社長に直撃した。なお郡社長が、米Dellの株式非公開発表後に単独インタビューに応じるのは、本誌が初めてである。

非公開化はDellに対する大きな期待を示すもの

――2月に米Dellが株式の非公開化を発表しました。投資会社のSilver Lakeとともに、2013年7月までにこれを完了する予定です。非公開化の狙いはどこにあるのですか。

デルの郡信一郎社長

郡社長
 最初にお話ししておきたいのは、一部報道で「身売り」という言葉が使われていますが、その言葉は適切ではないということです。マイケル・デルと投資会社であるSilver Lakeが共同でMBOを行いましたが、マイケル・デルは現在14%を取得していて、今後は過半数を保有し、取引完了後も引き続き会長兼CEOとして会社をリードしていくことになります。

 私は、Silver Lakeがこの話に乗ったことは、むしろ、Dellに対する大きな期待を表したものだと考えています。

 米国のメジャーリーグを見ると、シーズン中盤でも選手のトレードをするチームが多い。なかには、シーズン中盤にもかかわらず、チームを代表するような選手をトレードに出すということもあります。昨年、マリナーズからヤンキースに移籍したイチロー選手もその1人ですね。これからプレーオフを戦う可能性があるチームは、どうしても補強をしたいと考える。それがイチロー選手のトレードにつながっている。これが米国の文化です。

 Silver LakeがDellに投資するというのは、Dellは、これからプレーオフに勝ち残っていく強いチームであるという判断にほかなりません。だからこそ補強しているというわけです。「負け戦」に投資する会社はどこにもありません。

 私は社長就任以降、多くのお客さまを直接訪問することに時間を割いていますが、非公開化の発表後、日本を代表する大企業のCxO(注:CEOやCIOなど)の方々から言われたのは「うらやましい」ということなんです(笑)。

 非公開化により、中長期的なビジョンに優先度をおいて事業を進めていく、というメリットを実感されているからこそ、そうした言葉が出るのだと思います。四半期の業績にこだわらないビジネスができ、そして、投資案件の決定などにもスピード感が出てくる。私たちがやっていることは正しい方向であると考えていますし、この決定は前向きなものだといえます。

――米Microsoftによる20億ドルの融資はどんな意味を持ちますか。

郡社長
 Microsoftは、Dellにとっての最重要パートナーです。この融資によって、両社の関係がさらに強まることになります。ただ、これは、Windowsだけに特化して、Androidをやらないというものではありません。Dellは、オープンであるということが、創業以来29年間維持してきた姿勢であり、信念です。これは、これからも変わりません。

Dellはトレンドに乗り遅れているか?

――Dellは、クラウド、モバイル、ビッグデータといったトレンドに対する事業展開において、遅れていることを感じざるを得ません。今後の垂直統合化への取り組みについても、まだ明確な形で製品化の時期が見えません。そして、ソリシューションプロバイダーへの転換を目指すとしながらも、2月19日に発表した期末決算では営業利益率が5%台となっており、これは言い換えれば、ソリューションプロバイダーへの転換が遅れている証しともいえます。この数年、スピード感が無くなっていることを感じるのですが、非公開化によって、これはどう変わりますか。

郡社長
 Dellの事業を世界規模で見た場合、私は、クラウド、ビッグデータなどのトレンドに対して、必ずしも乗り遅れているとは感じてはいません。ただ、日本の市場を見たときに、米国での製品投入に近いタイミングで事業展開ができているのかという点では、反省があります。これをもっと早めて行かなくてはなりません。

 一方で、非公開化をしても、エンドトゥエンドのソリューションを提供するという戦略にはブレがありません。これからのITは、シンクライアントやタブレットが、サーバーやストレージにつながったり、基幹システムがクラウドに移行したり、といったように、それぞれの製品やサービスが関連性を持ちながら、トレンドが作られていきます。

 Dellは、ここ数年、ソフトウェア会社の買収を強化してきました。ソフトウェア事業は、Dellにとっての大きな変化であり、お客さまからも期待されている分野でもあります。これらを含めて、包括的なエンドトゥエンドのソリューション提供に力を注ぎ続けます。私は、Dellがソリューションプロバイダーに進化していく上では、非公開化はベターチョイスだと考えています。

 Dellはいま、「New Chapter」ともいうべき、新たな章へと進む段階にあるのではないでしょうか。本に例えるならば、決して本そのものが新しくなるのでない。30年間築き上げてきたPC事業だけでなく、ここにきて高い評価を得ているサーバーやストレージ、そしてソフトウェアやサービスといったものが組み合わさって、これからのDellがある。もちろん、最近になって、積み重ねるものが大きくなってきたという点はあるでしょうが、それは、2013年になったからといって大きく変えたものではなく、成功や失敗といったお客さまから学んだすべてのことが積み重なった延長線上に、新たなDellがあるというわけです。

 1冊の本というなかで、ストーリーは続いているが、新たなストーリーに移っていく段階にあるのが、いまのDellであり、私のワクワク感につながる。お客さまも、Dellがどう進化していくのかに期待しています。

 「社長として、いまは大変ですね」と言われることもあるが、私は、いまの状況が大変だとは思ったことはありません。困ることはあっても大変ではない。もし、大変だと思うのならば、この役割には手をあげない方がいい。Dell本社は今年30周年目に入りますし、日本法人は20周年を迎えている。その節目の年に、いままで築き上げてきた歴史や実績を、次の20年、30年に向けて加速するフェーズでもあり、変えていくフェーズでもある。むしろ、ワクワクしています(笑)。

ソリューションプロバイダーに着実に進化している

――2013年1月に終了した2013年度の業績は、Dellでの発表では、売上高が前年比8%減の569億4000万ドル、純利益が32%減の23億7200万ドルとなりました。サーバー、ネットワークが力強い成長を遂げる一方で、デスクトップやモビリティ、ソフトウェア、サービスは苦戦しています。デルの日本法人にとってはどんな1年でしたか?

郡社長
 当社の2013年度の取り組みを振り返ると、ソリューションプロバイダーへの進化を継続する上で、有意義な1年だったといえます。特に、日本においては、ソリューションプロバイダーとしてのデルの認知を少しずつ高めることができたのではないでしょうか。

 私は、デルが、ただ漠然と、ソリューションプロバイダーになると言い続けるのではなく、デルはこの分野において強いということをお客さまやパートナーに理解していただき、それを積み重ねていくことがソリューションプロバイダーとしての存在感を高めることにつながると考えています。

 例えば、石川県金沢市の北陸先端科学技術大学院大学では、全学情報環境システム「FRONTER(FRONTInformation EnviRonment)」に、論理総容量3PB(ペタバイト)のDell Compellentを採用しましたが、これは全世界のCompellent導入案件で最大規模となります。

 最新鋭の技術を採用したストレージを世界最大規模で導入する実績が日本から出たことは、日本におけるソリューションプロバイダーとしての認知を高めることにおいても、大きな意味があります。

 x86サーバーについても、第3四半期にはアジアパシフィック市場においてナンバーワンのシェアを獲得し、第12世代のPowerEdge製品の良さを多くのお客さまに認めていただいています。

 またサービス面では、日本マイクロソフトから、ユニファイドコミュニケーションに関するナンバーワンパートナーとしての評価もいただき、ハードウェアだけでなく、サービスでも評価が高まっている。

 前年よりも売れたということで自己満足するのではなく、外部の方々から見て、デルが一番安心でき、信頼できる。あるいはDellの世界戦略のなかで日本法人が一番であるという実績を積み重ねていくことが大切だと考えています。

セキュリティ事業を加速させたい

――一方で、2月からスタートした2014年度においては、なにが重要なポイントになりますか?

SecureWorksで提供するサービスメニュー

郡社長
 サービスやソフトウェア分野において、デルの強みを伝えることに力を注ぐ1年にしたいと考えています。ただ、ソフトウェアの事業規模はまだ限定的ですから、大きなインパクトを持つのは、クラウド事業やセキュリティ事業になると考えています。

 セキュリティ事業では、日本では2月に具体的な事業戦略について発表したSecureWorksを核とした展開を加速させたい。SecureWorksは世界で最も高い評価をいただいているセキュリティソリューションであり、すでに日本でも3社の採用が決定しています。

 こうした導入事例は今後加速的に増えていく予定です。私はせっかちな性格ですし(笑)、SecureWorksには強い思い入れがありましたから、これをもっと早く、日本に導入したかった。待った分だけ、これから一気に加速していきます(笑)。

 SecureWorksがいい事例となりますが、このように、セキュリティはデルが強いから、デルに相談してみようとか、効率的なストレージについてはデルに相談しようというような状況を作ることが、デルがソリューションプロバイダーになる近道だと考えています。

 いまのITは、セキュリティだけを強化すればいいとか、あるいはクラウドだけで強ければいいということで、完結するものではありません。クラウドには興味があるが、ITセキュリティはどうなっているのかが不安である、あるいはクラウドに移行したいが、いまのシステムがx86環境ではないため、移行が難しい環境にあるといったように、ひとつの要素を実現するためには幅広いソリューションを持ち、課題を解決しなくてはならない。

 昨年の(Dellによる)米Quest Softwareの買収は、それに向けた好例のひとつで、いまはデル・ソフトウェアとして、NotesからExchangeに移行するためのツールなどを、日本でも提供しています。それぞれのソリューションが単発で事業を広げるのではなく、それぞれが連携して、統合あるいは融合する形でソリューションビジネスを加速させたい。これが、デルが大きく前進するための鍵になる。

 新年度のスタートにあたる、この2月に、日本で初めてとなるDell Storage Forumを開催したのは、単に何PBであるとか、I/Oスピードがこれぐらいだというのではなく、Fluid Data Architectureという当社の考え方によって、データをどうやって効率的に保管するのかというソリューションを提案することを目指したものです。

 また、2012年12月に発表したActive Infrastructureは、サーバー、ストレージ、ネットワークを一体化したコンバージドインフラストラクチャ戦略を推進していくものであり、すべてのハードウェアをひとつの筐体に入れることや、筐体は別々でも、いかに統合的に管理するか、それによってどんな効率性を実現できるかといったところにフォーカスしたものになります。これは、将来的には日本にも投入していくことになるでしょう。

Dell Storage Forumの様子

日本でプライベートクラウドを本格展開する

――一方で、クラウドビジネスについては、どんな姿勢で臨むことになりますか。

郡社長
 2013年2月からスタートした当社2014年度において、日本では、クラウドに注力していきたいと考えています。Dellはグローバルにおいて、Dell vCloudと呼ぶパブリッククラウドサービス、Dell Cloud Dedicated(DCD)と呼ぶプライベートクラウドを用意しており、この両面から展開しています。

 ただ、クラウドサービスのすべてをDellがやるのではなく、クラウドサービスを提供している当社製品の導入ユーザーとのパートナーシップも活用し、クラウドを活用したいと考えているお客さまに、最適なサービスを提供するという体制をとっていきます。これは他社とは異なるユニークな点です。

 日本でも、クラウドサービスを提供するプロバイダーに多くのお客さまを持っています。ここに対するビジネスには、これからも力を注いでいくことになります。

 一方で、デルが直接、日本で提供するクラウドサービスという点では、いま最終的な部分について、詰めているところですが、基本姿勢としては、プライベートクラウドで展開する形になると考えています。

 日本でも、デル製品を活用してパブリッククラウドサービスを展開しているユーザーが多く、そうした市場において、デルが直接競合するメリットはないと考えています。プライベートクラウドに関しては、これまでのオンプレミス型のシステムにおいて、お客さまと机を並べながら一緒に課題を解決してきましたが、次にハイブリッドクラウドに進みたい、あるいはアウトソーシングしたいという要求に、100%応えることができていなかったという反省があります。

 「信頼しているデルなんだから、プライベートクラウドも、ハイブリッドクラウドもぜひやってほしい」という要望に応えたい。

 今年夏には、なんとか日本でも具体的な形でパブリッククラウドビジネスをスタートしたいと考えています。DCDのすべてを日本で提供するのか、その一部になるのかというのは、これから決めていきたいと考えています。

――しかし、クラウドビジネスの参入には時間がかかりましたね。

郡社長
 サービスビジネスは、一度評判を下げてしまうと、その評判を挽回(ばんかい)するのはかなり難しくなる。ですから、クラウドビジネスにおいては、慌ててやるのではなく、むしろ慎重にやっていきたい。基板となるインフラを整備し、この規模を広げるのは難しいものではありませんし、メーカーであるデルならばそれは得意領域だともいえます。

 しかし、なによりも、クラウドサービスを満足してもらい、安心して利用していただくことが大切です。正直なところ、そのために時間がかかってしまったというがいまの状況です。ローンチに向けて、最後までしっかりと体制を作り上げたいと思っています。私は、クラウドビジネスだけを何倍にも成長させるという数値目標よりも、お客さまの課題解決に向けて、包括的に、また融合的な製品やサービスをご提案して、お手伝いすることで、デルの日本におけるビジネス全体を大きく成長させることの方が大切だと考えています。

コンシューマ向けの直販事業は成長している

――その一方で、コンシューマ事業の不振が気になりますが。

郡社長
 コンシューマ事業には、インターネットや電話、デルリアルサイトといった直接販売と、量販店などのパートナーを通じた間接販売があります。このうち、直販については前年比でプラスとなっています。一方で、間接販売については、スマートフォンも含まれますから、その影響が出ているのも事実です。

――日本において、直販が成長した理由はなんでしょうか。

デルの宮崎カスタマーセンターで、個人向けPCの「プレミアム電話サポート」を行うエリア

郡社長
 実は昨年、日本のコンシューマ市場における「デルらしさ」とはなにか、ということを、これまで以上に徹底的に議論しました。昨年上半期に話し合いを行い、それをもとに、下期に実行へと移し、ようやく第4四半期の後半からその成果が見え始め、週次では前年実績を超えるという結果も出てきました。その勢いは、2月からの新年度でも継続しています。

 また、2012年1月からは、プレミアム電話サポートをコンシューマ向けに提供し、日本のユーザーが求める日本人によるサポートを実現した点も、コンシューマ事業の成長に貢献していると思います。上位機種には、プレミアム電話サポートを標準的に搭載し、これが、お客さまの期待にうまくミートしたといえます。

 コンシューマ事業は、2014年度には成長を遂げたいと考えています。ポイントとなるのは、まずは製品の魅力。Windows 8の時代に入り、タブレット、コンバーチブルといったものを含めて要望に応えられるかどうか。ここに「デルらしさ」を発揮したい。

 そして、今後のBYODのトレンドに向けての手応えもあります。従来の価格だけの「デルらしさ」だけでなく、ボリュームゾーンではないところでも、当社の価値をしっかりとご理解していただき、お客さまのニーズに合致するところで提案を加速していきたい。実際、ここにきて、付加価値製品領域における、デルの評価が高まってきていますからね。

中堅・中小企業の重点分野にリソースを集中

――中堅・中小企業分野ではどんな取り組みを行っていきますか。

郡社長
 創業者のマイケル・デルが最初にPCを販売したのは中小企業。それ以来、Dellは、ビジネスの原点である中堅・中小企業のお手伝いをしてきました。いまでも、Dellの価値を最も見いだしていだたけるのが、中堅・中小企業のお客さまであると考えています。

 ですから日本においても、あらためて中堅・中小企業向けビジネスの強化に取り組んでいくつもりです。昨年後半から、中堅・中小企業における営業体制を強化し、人員も2割増にしています。

 また、中堅・中小企業に向けては、チャネルパートナーとの連携が重要ですから、一部の地域においては、試験的ではありますが、デルが直接営業を行わずにすべてチャネルパートナーにお願いするといったこともやっています。これによって、増やした人員とパートナーにお任せしたことでシフトできるようになった人員を、重要なターゲットに向けて集中させるといったことができる。これまでに比べて、さらに手厚いサポートや、これまで手つかずといったところにも力を注ぐ体制が構築できるようになります。

 また、エンジニアリングノウハウを持った社員にも前線に出てもらって、プリセールスにも力を注いでいくつもりです。ソリューション型でお客さまの問題解決のお手伝いをしようとすると、担当営業だけでは完結しない部分もある。チームとして、地域や業界という切り口から重要な領域に対して、リソースを集中させていこうと考えています。

――日本法人の創立20周年にあわせて中堅・中小企業向けのキャンペーンをこまめに展開していますね。

郡社長
 中小企業においては、新規の顧客を開拓しなくてはいけないというのは重要な取り組みだといえます。特に、SOHOや中小企業は、訪問して開拓するのではなく、さまざまな形で新たな顧客を獲得する必要がある。そのひとつとして、20周年という観点からキャンペーンを実施し、価格面での魅力も提案していきたい。中堅・中小企業向けビジネスも、前年に比べて、確実に成長を遂げなくてはならない領域です。

20周年キャンペーンの一環としてJR品川駅構内に期間限定で設置されていた、「Dell Ultrabook Touch&Try Event」ブースの様子

新たな「デルらしさ」とはなにか?

――Dellは大きな転換期を迎えていると感じます。そのなかで、日本法人は20周年を迎えています。いま、郡社長はどんなことを考えていますか。

郡社長
 デルにとっては、製品やサービスの「融合」によって、ソリューションを提供することが重要な取り組みです。そして、その幅は、これまで以上に広がり、間口は2013年度とは格段に違うといえます。これまでは、お客さまが持つ懸念や課題を部分的に、オンプレミスでお手伝いするというものでしたが、2014年度は、クラウドサービスについても、新たなものを発表していくことができますし、急速に需要が高まっているVDI(仮想デスクトップ)にもデルの強みを生かしたい。

 デルは、やはり、「デルらしさ」を発揮することが大切だと思います。しかし、20年前の「デルらしさ」でいいとは思っていません。進化した「デルらしさ」を実現したい。20年前には、PCを安く販売するだけだった。それが原点だったかもしれませんが、そこに戻るつもりはありません。ポートフォリオが広がるなかで、新たな「デルらしさ」をお客さまにお伝えするとともに、PCにおいても進化した「デルらしさ」を、いかにわかりやすくお伝えするかが大切です。

――いまの「デルらしさ」とはなんですか。

郡社長
 変わらない「デルらしさ」とは、お客さまと対話する姿勢です。直接販売の領域だけでなく、チャネルパートナーを通じたビジネスにおいても、これを浸透させていきたい。

 しかし、その一方で、お客さまと対話する内容を、大きく変えていくことが、新しい「デルらしさ」につながるといえます。

 (私が)デルに入社した10年前は、お客さまと電話をすると、どの機種をどの構成で何台必要かという内容を話すだけでした。しかし、いまのお客さまと会話の内容は、PCをどういう用途で購入するのか、お客さまが持っている課題を解決するにはどれが最適かといったものです。サービスの選択肢が広がっていますから、一歩踏み込んで一緒に解決策を考えていくことができます。

 Dellは、非公開化をきっかけにして変わるわけではありません。すでに、この3年ほどの道のりのなかで変わってきた。Dellの変化はすでに始まっており、いまから変わるのではありません。これから、変化が加速するというフェーズに入っていきます。

 私がいまワクワクしているのは、デルには、優秀な人材がいること。やると決めたら、それが必ずやり遂げる社員ばかりです。だからこそ、いまのタイミングは、デルにとっては大きな成長のチャンスになるととらえています。

(大河原 克行)