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Linus Torvalds氏が登壇、「約10週間のリリースサイクルは続く」

LinuxCon Japan 2016レポート

 Linuxの開発者が集まる世界的な技術カンファレンス「LinuxCon Japan 2016」が、7月13~15日に開催された。

Linus Torvalds氏「約10週間のリリースサイクルは続く」

Linus Torvalds氏(左)とDirk Hohndel氏(右)

 2日目の基調講演には、Linuxの生みの親であるLinus Torvaldsが登場した。Torvalds氏のセッションは、恒例どおり、Dirk Hohndel氏(6月からVMwareのChief Open Source Officer)との対談形式で行われた。

 Hohndel氏はまず「いつもと同じ質問から。リリースが遅れたが、もうすぐリリースされるLinux 4.7の変更点は?」と質問。Torvalds氏もいつものように「高いところから見るといつもどおりで、継続的に改善している。あとは何に興味があるかによる」としつつ、「ディレクトリ中のファイルを並列で探す機能は、大きな変更だ」と答えた。

 また、約10週間ごとにコンスタントにリリースしていることについて、Hohndel氏が「このサイクルが現在の開発プロセスの限界か?」と尋ねると、Torvalds氏は「わからないが、開発プロセスの問題だと思わない。ハードウェアは増えていくので、そのドライバ開発にかける時間による」と答えた。

 ちなみに「4.7であなたはどのぐらい書いた?」という質問には、「rcで1つ、Makefileでバージョンを変えただけ。もともと私のコミット数は、マージコミットを除くと順位がだいぶ下のほう」と笑って答えた。

 初日にJonathan Corbet氏が語った(本記事では3ページ目に掲載)、永続メモリでは根本的な考え方が変わるのではないかという意見については、「私は懐疑的。多くはファイルシステムとして使うと思うし、ブロックデバイスはなくならない」と意見を述べた。

 Linuxカーネルで言われる「don't break user code(カーネル上で動くコードを動かなくするな)」という標語について質問されると、Torvalds氏はこれを「No.1のルール」としつつ、「誤解されることがあるが、プログラミングインターフェイスに影響のあるカーネルの変更は、わざとすることもあるし、気付かずやってしまうこともある」とコメント。さらに、Wine(Windows APIエミュレータ)上で動かしていたWindowsゲームがLinuxカーネルの変更で動かなくなったケースに触れて、「半年間、カーネル開発者には知らされなかった。問題を知ってから3日で直った」と語った。

 また、「システムコールやサブシステム、ファイルシステムなどで、外したいものはあるか」と尋ねられると、Torvalds氏は「使っていないものは外すこともある。devfsの場合は、間違っていると思ったので、使われているものだが新しい機構に移行した」と答えた。

 カーネルの各種メンテナーに必要なスキルとしては、「いいテイスト(趣味のよさ)」が挙げられた。「ただし、これは説明が難しい。同じものを作っても、もっといいやり方がある、ということがある」とTorvalds氏は難しそうに答えた。

 また、開発者とメンテナーに求められることの違いとしては、(技術的な)コミュニケーションが語られた。「メンテナーは送られてきたパッチをレビューする必要がある。私もそういうところがあるのだが、マイクロマネジメント(細かいところまで全部口出し)したがる人もいて、これは生産性がよくない」。

 コミュニケーションについては、Linuxカーネル開発コニティはふだんはメールで議論し、対面で話すのはカンファレンスのときぐらいという話も出た。Torvals氏は「私は対面ではなくメールで議論したほうが、相手のことを考えすぎず技術的なことに集中できる」と語り、「相手が人間だということを忘れてしまうこともある」と付け加えると、Hohndel氏は「あなたはそうですね」と笑ってツッコんだ。

 最後に再びリリースサイクルの話となった。Torvals氏は「最初、3か月ぐらいのサイクルでリリースすると提案したときには、みんなが無理だと言ったが、結果はすごくうまくいった。開発者は、間にあいそうになければ次のリリースでいいやと思えて、プレッシャーが減った。大きな声で反対する人もいないし、今のところ、変えようとは考えていない」と語った。