できる会社のIT活用術~迷える社長をお助けします

社長がついに自分で相談! Windows XP問題に立ち向かおう

 数多くのオフィスに依然として残るWindows XP搭載パソコン。2014年4月のサポート終了を目前にして、専任のIT担当者が存在しない中小企業においては、どんな対処をすればいいのか悩む企業が多いようだ。

 今回の連載の舞台となっている株式会社インプレレでも、Windows XPパソコンの見直しに着手することとなったのだが、果たして…?!

新入社員の告白、そして決意する社長

 その日、インプレレの社長である市ヶ谷一郎は、新入社員の新宿大介を同行し、得意先を訪問した。

・市ヶ谷一郎=従業員40人の文具メーカー「株式会社インプレレ」の代表取締役社長。年齢51歳。パソコンおよびITが苦手。

・新宿大介=25歳。株式会社インプレレの新入社員。eラーニングによって、実は苦手だったパソコンの使い方を学習し、ビジネスマンとしてのマナーも学んだ。

「新宿くんは、もうすっかり会社にも慣れた感じだねぇ。お客さま先に連れて行っても、あいさつもちゃんとできるようになったし(最初はどうなることかと思ったけど…)」

「…社長をはじめ、会社の皆さんが親切にしてくれるんで…」

「苦手だって言っていたパソコンも上手に使えるようになってきたし(ニコニコ)」

「…今だから言いますけど…俺、あっ、私…パソコンが怖かったんです…。実は、子供のころ、オヤジ、えーっと、父のパソコンを使ってゲームをしたら、ものすごい額の請求が来てしまったことがあって」

「ものすごい額の請求?」

「確か十数万円くらい? で、父にこっぴどく怒られて、それ以来、パソコンがなんか苦手になっちゃったんです。大学行っても、パソコンを使わなくちゃいけないってことになって、いろいろと面倒臭くなって学校を辞めて。これまでは家でゴロゴロしてたんですけど、オヤ…父がどうしても就職しろ!っていうし、営業の仕事だったので、パソコンは使わずに済ませられるかなって思ったんですけど」

「残念ながら、パソコンを全く使わないで営業するのは…僕みたいなおじさんでも難しい時代だな(苦笑い)」

「はい…。で、社長をはじめ、飯田橋さんも一生懸命、俺…いや、私がパソコンを使えるようにいろいろとしてくれているのを見て、引くに引けなくなっちゃったんです」

「そうか、会社に入ったばかりで緊張しているのかと思ったけど」

「(苦笑い)パソコンに緊張してたんです」

「で、実際にパソコンの操作を覚えてみたらどうだったんだい?」

「eラーニングでパソコンの操作を覚えてみたら、あれ?案外、パソコン怖くないじゃん!って思えるようになったんですよ。これまでなぜこんなに嫌がってたんだろう?と思いました」

「そうか、きちんと向き合えば怖くない…か」

「はい!」

「…新宿君、ありがとう!そうだね、きちんと向き合えば怖くない。それが大切だ!!(決意する一郎)」

サポートが切れるとどんなことが起こるのか?

株式会社インプレレの会議室に、社長である市ヶ谷一郎、総務部門のスタッフである飯田橋花子、インプレレがシステム構築を頼んでいる三番町システム商会の秋葉原が座っている。

「どうも私はパソコンが苦手で。トンチンカンなことを言い出すと思いますが、どうぞよろしくお願いします(ぺこり)」

「いえ、市ヶ谷社長はご自身のお仕事のプロ。パソコンに関してはわれわれの方が専門ですので、何でも気軽にお話をしていただければ!(ニッコリ)」

「実は…今日、相談したいのはこの件です。飯田橋さん?」

「こちらですね?」(と、用意していたニュース記事のコピーを出す)

Windows XPサポート終了問題=企業に今も広く浸透しているWindows XPのサポートを、日本マイクロソフトは2014年4月9日に終了する。サポート終了後もWindows XPを搭載したパソコンを使い続けることはできるが、正式なサポートがなくなることで、セキュリティトラブルが起こる可能性が大きい。安全面から考え、サポート終了前にOSの入れ替えをすることが望ましい。

「なるほど。御社の社内にも何台かWindows XPのパソコンはありますか?」

「たくさんありますよ。で、ニュースを読んでいたら、怖くなってきて…サポートが切れると、一体、パソコンはどうなっちゃうんです?」

「サポートが切れても、パソコンが使えなくなってしまうことはありません」

(大声で)「ええええ?パソコン、使えなくなるんじゃないの????」

「(苦笑)使い続けることはできます。ただし、サポートがなくなるということは、いざという時、誰も守ってくれないということになります」

「それは誰かにパソコンを盗まれやすくなるとか、そういうこと?」

「はい。ただし、狙われるのはパソコンそのものではなく、中に入っているデータです。残念ながら、最近はインターネットにつながったパソコンに入ったデータを盗もうとする、いわばプロの窃盗団みたいな奴らが山のように存在します」

ここで、テレビから、情報流出事件のニュースが聞こえてくる。

「Windows XPのサポートが切れるというのは、いわば『窃盗団が入ってこないように、家のあちこちを補強する作業を止めますよ!』と言っているようなものなんです。これまで『こんな方法で家に入ろうとするドロボウがいますよ』という情報をもとに、対策としてマイクロソフト自身が防犯補強工事をしてきました。もちろんその作業にはマイクロソフトにとって手間もお金もかかります。ついに、これ以上つぎはぎで補強を重ねるのは効率が悪すぎて続けられない、と判断したようです。そこで、申し訳ないけれど、最初から頑丈に作ってある新しいWindowsにまるごと引っ越してください!っていうのが今回のOS入れ替えのお願いなんですよ」

「私、サポートが切れた日を境に、パソコンが使えなくなってしまうんじゃないかと思ってました!」

「一応、使えますし、ウイルス対策ソフトを提供している会社の中には、『マイクロソフトがサポートを終了しても、Windows XP向けの製品を継続提供します』と言っているところもあります」

「それなら使い続けてもいいんじゃないんですか?」

「ただ、そうしたセキュリティソフトメーカーが提供しているのは、まぁ正面玄関につける鍵みたいなものなんです。鍵があるのを見てあきらめる泥棒ばかりだといいんですが、最近は窓から入ったり、壁を壊して侵入しようとするような乱暴ものまでいますからねぇ。とんでもない窃盗犯が現れてトラブルが起こる可能性は否定できません」

具体的には、何をすればいいの?

「秋葉さんの話はわかりやすいね。サポートが切れるっていうのがどういうことか、よくわかったよ」

「ありがとうございます。そこで御社の場合なんですが、選択肢は3つあります。1つ目は、すべてわれわれにお任せいただく、というやり方です。Windows XPパソコンが何台あるか調査し、どんな対策をとるべきか診断して、対策まですべてお引き受けします」

「その方法は楽だよね」

「はい。ただし正直申し上げると、余計に費用がかかります。当社としてはまあ、その方がありがたいですが」

「なるほど。それはそうでしょうね…(パソコンを買い換えないといけないかもしれないし、かかる費用はできるだけ少なくしたいなあ…)」

「2つ目は、会社の皆さん自身で現状調査していただいた後で、当社に診断と対策をお任せいただくというものです。そして3つ目は、当社のアドバイスのもとで、皆さん自身が対策まで行う、という方法です。パソコンの買い換えが必要になった場合などは、当社から購入していただけるとありがたいですが」

「でも、自分達で調べるって、それは大変だよね? できるのかな」

「はい、もちろんすべてお任せいただく場合と比べて、手間はかかります。ただ、私もサラリーマンですからちょっと言いにくい話ですが、できればご自身の手で調べるのがいいのではないか?と思います。自分の会社にどんなパソコンがあって、OSは何か、そういう確認作業というのはいわば『IT資産の棚卸し』だからです」

「棚卸しって、われわれがやっている倉庫チェックのIT版ということ?」

「その通りです!社長、さすがですね」

「(ちょっと照れる)」

「自分たちの会社にどんな資産があるのかをきちんと把握していると、何かトラブルが起こった時や、新たに買い足しが必要な商品を見極める際に役に立ちます。ですから、IT資産を意識するきっかけとして、ご自身たちの手で作業をしてみるといいのではないか?と思います。途中までやってみて、難しいと思われたら、私どもにご依頼いただくという方法もありますし」

「わかりました。途中で困ったら、また相談させてもらいます(笑)」

「はい。あと、古いパソコンから新しいパソコンに買い換えると、消費電力量が減るケースも出ています。ある会社ではパソコンを入れ替えたら社内が涼しくなったんだそうです。古いパソコンは消費電力量も多いし、熱い排気で社内を温めることになっていたんですね」

「消費電力が減るのに涼しい? それうちの会社にとってはすごいメリットだね」

「そうなんです。だから、Windows XPのサポート切れって、決してマイナスばかりではないんですよ」

Windows XPからの移行サービス

Windows XPのサポート切れは、パソコン業界では大きな出来事のため、日本マイクロソフトはもちろん、販売店やメーカーでも、Windows XPからの移行相談を受け付けている。ほとんどが無料で利用できるため、不安に思っている場合は相談してみるのがいいだろう。

サポート終了の重要なお知らせ(日本マイクロソフト)
http://www.microsoft.com/japan/msbc/Express/sbc/eos/default.aspx
Windows XPサポート終了かけこみ寺(大塚商会)
http://campaign.otsuka-shokai.co.jp/microsoft/from-xp/

調べてみると?

株式会社インプレレでは、新入社員の新宿大介と総務担当の飯田橋花子が中心となり、社内のパソコンにインストールされているWindowsのバージョンを調べる作業を行った。その結果、社内にあったパソコンのうち15台がWindows XPパソコンであることが明らかになった。

「うちのパソコン、どうでした?」

「御社のパソコンは、ダウングレード権を行使している製品だったので、パソコンを買い換える必要はありませんね」

「ダウングレード権って何です?」

「簡単にご説明すると、新しいWindowsが搭載されていたパソコンなのですが、使い勝手などが変わってしまうため、あえて古いWindows(Windows XP)を入れ直して利用しているんです。御社の場合、Windows 7のパソコンをダウングレードしてWindows XPで利用しているので、パソコンはそのままで、Windowsだけ載せ替えればいいんです」

「そんなこともあるのね」

「はい、企業のお客さまでは、結構こういうケースは多いんです。ただし、Windowsの載せ替えは必要になりますから、その作業をしないといけません」

「わかりました、じゃあ、それが難しければお願いすることにします」

「(パソコンを新しく買う必要がないのか。思っていたよりも安く済みそうだ…)」

「(パソコンが新しくなったら、会社が涼しくなると思ったのに…)」

Windows XPパソコンの入れ替えで大きな出費を覚悟した一郎社長だが、それは回避されて一安心。会社をITで変えるための提案を、秋葉原さんから引き出せるのか?

三浦 優子