大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

新規顧客開拓に予想以上の成果を生む「Web営業」とは

富士通マーケティングの「きらら」販売での成果をみる

 株式会社富士通マーケティング(以下、FJM)では、「Web営業」の取り組みを2011年12月からスタートさせているが、これが予想以上の効果をあげているという。

 同社が中堅・中小企業向け業務アプリケーションである「GLOVIA smart きらら 会計」および「GLOVIA smart きらら 人事給与」のSaaS版の販売において、オンラインデモなどの仕組みを活用しながら商談を進めるもので、すでに300件以上の商談を獲得。FJMの営業部門だけでなく、パートナー企業もこれを活用して成果をあげているという。

 果たして、FJMが取り組むWeb営業とは、どんなものなのだろうか。

中堅・中小企業向けの業務アプリケーション

 FJMは、2011年12月から、中堅・中小企業向けの業務ソリューションとして、「GLOVIA smart きらら 会計」を製品化。その後、「GLOVIA smart きらら 人事給与」、「GLOVIA smart きらら 販売」をラインアップし、中堅中小企業向けの統合基幹ソリューションとして展開している。

 そのうち、SaaS版として提供しているのは、「GLOVIA smart きらら 会計」と「GLOVIA smart きらら 人事給与」の2製品であり、Web営業でもこの2製品を対象に展開。これら製品の受注活動において、すでにWeb営業が重要な役割を果たしているという。

ユーザー自身が操作するオンラインデモ

ソリューション事業本部 GLOVIA smart きらら事業部 きらら共通業務ソリューション部の和田幸子氏

 Web営業は、サイトへの広告出稿やダイレクトメールによる告知のほか、FJMの営業部門やパートナーらにおいて、新規顧客開拓活動で活用している提案手法だといえる。

 興味を持ったユーザーに対して、ユーザー自身が操作を行うオンラインデモを提供。同社が秋葉原に設置しているWeb営業センター(オンラインデモルーム)の6人の専任オペレーターが、メールや電話を通じた問い合わせに対応し、製品の特徴を説明したり、不明な部分への質問などに答えたりする。

 さらにデモデータを活用した体験版を、約2週間にわたって、SaaS環境において無料で提供。それにより、操作性の確認や導入効果を直接理解することができるようにしている。

 「営業担当者のペースで説明を受けるのではなく、自席で自分のペースで操作や体験ができることから、リラックスしたなかでじっくりと機能を確認できる。また、何度も繰り返し確認できたり、現在使っているシステムとの比較検討がしやすかったりする、といった声があがっている」(ソリューション事業本部 GLOVIA smart きらら事業部 きらら共通業務ソリューション部の和田幸子氏)という。

 通常の営業商談では、SaaS型とはいえ、営業担当者が5~6回訪問して商談をクロージングする形だが、Web営業では、オンラインデモを開始する事前の訪問と最後の契約時の訪問だけで済む。オンラインデモの申し込みをサイトを通じて行う場合には、最後の契約時の訪問だけという場合もあるという。

 目立つのは、スタンドアロン型の会計システムを導入していた企業が、事業規模の拡大に伴い、LAN対応版の導入を検討したものの、導入コストや専任担当者の配置など、導入のハードルが高いため、SaaS版の導入を検討。その際に、FJMの「GLOVIA smart きらら 会計」に行き着くという例だ。

 「受注全体の6割が、FJMおよびパートナーがこれまでアプローチできていなかったユーザー企業」(FJM ソリューション事業本部 GLOVIA smart きらら事業部 きらら共通業務ソリューション部の柏木高歩部長)というように、プル型の営業体制構築が新たな顧客を開拓しているというわけだ。

 また、対面型の営業活動による新規商談に比べて、Web営業の方が商談に対する受注率が高いという結果が出ているほか、これまでアプローチができていなかった新規顧客を対象に、高い確率で成約につなげているという。

パートナーにおけるWeb営業の活用が広がる

Web営業センター(オンラインデモルーム)から専任オペレーターがサポートする
質問に対してもオペレーターが電話やメールで回答する

 Web営業は、2011年秋から試験的に開始し、2011年12月から首都圏などでの展開を中心にスタート。2012年春からは、全国の営業拠点でも本格的な取り扱えるように範囲を広げた。

 「オンラインの特性を生かすことで、首都圏だけでなく、これまでカバーできていなかったよう地域からの受注が見込める」、というのもWeb営業の特徴のひとつだ。

 またFJMの営業担当者が、iPadなどのタブレット端末を見込みユーザーのもとに持ち込めば、その場でオンラインデモが行えるため、販促ツールとして活用する例もあるという。

 そうしたなか、ここにきて特に増加しているのがパートナーを通じた販売活動だ。

 同社には、全国500社の富士通パートナーがあり、これらのパートナー企業が、Web営業を活用した取り組みを加速しているという。

 同社によると、これまでの累計商談数では、FJMの営業部門での取り組みが先行したことから、パートナールートの商談比率は低いが、11月での実績では、パートナーを通じた商談が半数を超えているとのこと。

 「2013年には、パートナーを通じたWeb営業が、確実に半数を突破することになる」と、和田氏は語る。

 その点では、FJMによるWeb営業というだけでなく、Webを活用したパートナーの営業支援体制という役割も果たしているという。

 同社では、オンラインデモの申込書を作成した人を対象に、話題のJINS PCをプレゼントするキャンペーンを実施し、さらにWeb営業の促進に弾みをつける考えだ。

AppExchangeを通じた販売展開も

 一方、同社では同様の仕組みとして、セールスフォース・ドットコムのAppExchangeに登録。AppExchangeでは唯一の会計・人事給与ソリューションとしても注目を集めている。

 ここでは、Force.comからシングルサインオンで、これらの製品へのアクセスを可能としており、セールスフォース・ドットコムの導入ユーザーや、セールスフォースの導入見込みユーザーからの問い合わせがあるという。

 このように同社では、Webを活用した営業戦略を加速する考えであり、「GLOVIA smart きらら 会計」および「GLOVIA smart きらら 人事給与」の販売において、4割程度にまでWebによる販売比率を引き上げていく考えだ。

 新規顧客開拓やパートナー支援という意味でも、注目を集める販売体制だといえるだろう。

(大河原 克行)