大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
日本マイクロソフトがクラウドを武器に取り組む3度目の「全国行脚」
中堅・中小企業の「Discover キャンペーン」を来年1月から開始
(2012/12/17 10:00)
日本マイクロソフト株式会社は17日、全国キャラバン型のIT活用支援キャンペーンを開始すると発表した。
同社では、2013年1月18日から、中堅・中小企業および自治体、教育・医療機関向けIT活用推進支援策「Discover キャンペーン」をスタート。同日に宮城県仙台市において、日本マイクロソフト主催によるDiscoverセミナーを開催するのを皮切りに、2013年6月までの間に、全国47都道府県、5万社の参加を目標に、中堅・中小企業向けのワークスタイル変革をテーマにしたセミナーを実施する予定だ。
3つの切り口でセミナーを展開
Discover キャンペーンの中軸となるDiscoverセミナーは、日本マイクロソフトが主催するセミナー、日本マイクロソフトのパートナー企業主催で実施するセミナー、オンラインで実施するセミナーの3つの切り口で展開する。
日本マイクロソフト主催のセミナーには、インテルが協賛パートナーとして参加。セミナーとともにタッチ&トライコーナーを設置し、実機を活用しながらWindows 8や最新版のOfficeを利用できるようにしている。
47都道府県を対象に約200回を実施予定で、2013年1月18日の仙台市での開催に続き、1月21日には長野県松本市、23日には新潟県新潟市、25日には福島県郡山市、28日には石川県金沢市でそれぞれ開催することになる。
今後のスケジュールについては、同社サイトで公開する。
パートナー企業主催のセミナーでは、大塚商会、リコージャパンが主催し、パートナー独自の製品およびサービスを含めた内容を盛り込んで、より実践的なソリューションを提案するものとなる。これは、47都道府県において1200回以上実施される予定だ。
大塚商会では、2013年2月に開催予定のプライベートイベント「実践ソリューションフェア2013」と連動させた展開のほか、「Windows 8導入相談センター」との連携により、中堅・中小企業のIT導入支援を促進。一方、リコージャパンでは、全国約1000回のセミナーを開催し、ここで延べ2万人の集客を計画している。
また、日本マイクロソフト主催のオンラインセミナーは、簡単な登録だけで、いつでもどこでもオンライン上で、セミナーに参加できるもので、中小企業の経営者などが空いた時間に受講できるように、オンラインセミナー向けに独自に用意した短時間のセッションを複数提供する。
オンラインセミナーに関する情報は、同社のサイトで、2013年1月下旬に公開する予定。
日本マイクロソフトでは、「Windows 8、Office、Office 365などの最新の製品およびクラウドサービスの提供によって、いままで気がつかなかったITの価値を発見し、勝機をつかむような新しい働き方を発見してもらうのがセミナーの狙い。すべて中堅・中小企業や自治体、教育機関、医療機関などを対象としたもので、当社主催のセミナーを実施後、継続的に地場のパートナー企業がセミナーを開催することで、地域において一過性では終わらないIT活用推進支援を行える。また、遠方や多忙で直接セミナー会場に参加できない顧客向けに、気軽に空いた時間で利用できるオンラインセミナーを展開することで、より高い成果を目指したい」としている。
6支店を活用したジョイントセールスチームも結成
一方、Discover キャンペーンでは、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡に設置している日本マイクロソフトの6カ所の支店において、各地域パートナー企業と日本マイクロソフトとの共同営業部隊を結成。地域に密着した共同営業施策を展開する「地域密着型パートナー施策」と、東北地域の中小企業向けIT活用による経営力向上のための地域および人材育成支援を行う「東北地域での経済復興支援活動」も実施する。
共同営業部隊である「ジョイントセールスチーム」では、ターゲット顧客の選定や訪問計画の立案、営業および技術勉強会、競合対策勉強会、実商談を通じた案件推進力の育成など、営業力の強化と効率化を図る。
また支店施設を活用して、最新の製品、サービスのデモ環境を提供。このインフラをセミナーの開催や商談の推進などといった観点から地場のパートナー企業が活用できるようにすることで、案件の発生からクローズまでを、日本マイクロソフトと連携して行えるような体制を整える。
さらに、最新の製品情報や技術情報へのアクセス、営業や技術サポート部門との密接な連携のほか、パートナー企業自身が、マイクロソフトの最新ソフトウェアを日常業務で利用する環境にすることで、製品サービス知識の習得、提案力の向上を図るという。
クラウドとWindows 8で新たな価値を提案
日本マイクロソフトは、これまでにも、全国のIT関連企業、官公庁、地方自治体、中小企業支援団体などと連携して、全国規模での中堅・中小企業のIT導入支援活動を展開してきた経緯がある。
2001年10月からは、「全国IT推進計画」に取り組み、その活動の一環として、2002年10月から「マイクロソフトIT体験キャラバン」を実施。セミナースペースとIT体験コーナーを実装した大型トレーラーを使用し、1年2カ月にわたり、178市町村で216回のセミナーを開催し、2万1,519人が参加したという実績がある。ここでは、地球一周相当にあたる4万1,361Kmを走破した。
また、2006年12月から1年4カ月をかけては、ITコーディネーターを活用したIT経営キャラバン隊を組織化。日本マイクロソフトが用意したキャラバンバスを使い、全国120カ所を訪問し、2万2032人の中堅・中小企業の経営者などが参加。キャラバンバスの全走行距離は地球の約1週半にあたる約6万kmに達した。
マイクロソフトIT体験キャラバンでは、政府主導のe-JAPAN推進計画と連動。中小企業のIT導入の意味を説くことに力を注いだのが特徴だった。そして、IT経営キャラバン隊では、日本商工会議所などとの連携により、中堅・中小企業の経営者に対して、IT利活用によるメリットを訴求してきた。
今回のDiscover キャンペーンではこうした経験をもとに、継続性を重視すること、多くの全国系パートナーおよび地場パートナーを巻き込むことで、これまで以上に地域密着型の施策を展開しているのが特徴となる。
そして見逃すことができないのが、ここにきて日本マイクロソフトが投入する新たな製品およびサービスが、中堅・中小企業のIT導入を促進しやすいものになっている点だ。
2012年10月26日に発売されたWindows 8では、新たにタッチ機能を搭載したデバイスが相次いで登場。これにより、キーボードアレルギーを持つ中堅・中小企業の経営者や現場担当者が、ハードルを低くして、これを導入できる環境が整ったとする。
「これまでIT導入に積極的ではなかった経営者への訴求が可能になる」とする。
また、クラウドサービスであるOffice 365により、初期導入費用の低減とともに、ITの専門知識を持った人員を社内に確保する必要がないこと、運用・メンテナンス費用を削減できることなども、中堅・中小企業におけるIT導入促進には重要な要素になる。
そして、これに、2012年12月からライセンス販売がスタートしているOffice 2013が加わり、Windows 8やクラウド環境に適した提案が進めやすくなる。
さらに、最適な仮想化環境と、セキュアな環境を提案できるWindows Server 2012を2012年9月から提供を開始している点も、中堅企業に対する新たな製品およびサービスの提案という点で重要な役割を担うことになる。
「近年のクラウドコンピューティングの普及や、新たなテクノロジー、ソリューション、スマートデバイスの登場により、中堅・中小企業におけるIT活用の環境がさらに整いつつある」と日本マイクロソフトでは語る。
これまでは大手企業しか利用できなかったような大型投資を要するITシステムが、クラウドや仮想化によって、中堅・中小企業でも利用できる環境が整ってきた。中堅・中小企業に対して、より戦略的なITシステムの利活用提案ができる環境のなかで、Discover キャンペーンが始まることになる。
中堅・中小企業向けパートナー支援制度の強化にも乗り出す
Discover キャンペーンの開始にあわせて、日本マイクロソフトは、新たなパートナー支援策の強化にも乗り出している。
日本マイクロソフトは、2012年7月からスタートした同社新年度において、パートナー制度であるMicrosoft Partner Networkのなかに、「Small Business Competency」を新たに設置した。
これは、中堅・中小企業向けの提案スキル、販売スキルを持ったパートナーを認定するもので、600社以上のパートナー企業がこれに参加することになるという。
同社では、「製品や技術に関する知識、ノウハウだけでなく、中堅・中小企業の経営にまで踏み込んだ提案ができる体制を整えていく」としている。
さらに、2013年には、Office 365の新たな製品として、Office365 Openが登場することになり、パートナーがOffice 365を積極的に販売できる環境も整う点も、Discover キャンペーンの成果向上、および中堅・中小企業のIT導入には追い風になるだろう。
日本マイクロソフトが全国行脚に乗り出す意味は?
日本では、日本の企業数の95%以上が中堅・中小企業といわれ、実に約160万社にも達するという。
そして、中堅・中小企業は、経済活動の50%以上、雇用の60%以上を占め、さらに、その60%が東京、名古屋、大阪以外の地域に本社を構えているという。
日本マイクロソフトの「Discover キャンペーン」は、こうした中堅・中小企業にアプローチをするための施策であり、だからこそ全国規模で、パートナーと連携した地域密着型の展開を行うという狙いがある。
2001年のマイクロソフトIT体験キャラバン、2006年12月からのIT経営キャラバン隊に続く、3回目の全国行脚では、クラウドを武器に、中堅・中小企業のIT武装を支援していくことが鍵になる。