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IT運用への影響は? 17年ぶりの米政府機関の業務停止
(2013/10/7 11:15)
暫定予算案の与野党合意ができなかったことから、米国連邦政府機関の一部が10月1日から業務停止(Shut down)の状態となった。政府機関の業務停止は1996年以来17年間ぶりだが、この間に業務システムを大きく進歩し、ITが隅々まで活用されている。業務停止では、WebサイトやTwitterなどの“窓口”も閉鎖あるいは最小レベルでの運行となった。週明けの一時帰休の解除で、収束に向かっているが、メンテナンスやセキュリティなどの面の課題を浮き彫りにした。
NASAの「MAVEN」打ち上げにも影響か
この騒ぎは、「オバマケア」と呼ばれる医療保険改革法が争点となり、民主党と共和党とが暫定予算案を巡って対立。妥協のめどが立たない中で9月30日の期限日を迎えてしまったためだ。政府機関の一部は、Antideficiency Act(不足金請求禁止条項)の下、閉鎖された。米国政府に勤務する人は約290万人にのぼり、そのうち80万人程度が一時帰休や無給休暇になった。
閉鎖期間中、郵便、航空管制や保安など、特に重要や必須とされる業務以外は閉鎖された。前回の政府閉鎖は1997年、クリントン政権時で、国立公園や美術館などが閉鎖され、パスポートの発給、社会保障給付などが停止するといった支障が出た。今回は、さらにサイバー空間にも影響が出た。
農務省のWebサイトにアクセスすると、「連邦政府の予算が失効しために、このWebサイトは利用できません」というメッセージが表示された。連邦取引委員会(FTC)、国立公文書記録管理局(NARA)など多くの機関が同様で、必須のはずの連邦捜査局(FBI)さえもトップページで、「連邦政府の予算が失効しために、このWebサイトでは情報の定期更新を中止しています」と表示した。政府総合サイトのUSA.govは特設ページを設け、どのサービスが閉鎖され、どのサービスが継続しているのかの情報を伝えた。継続したサービスは、社会保障、郵便、軍、航空管制、航空宇宙局(NASA)ミッションコントロールなどに限られた。
こうした機関は、Webサイトを閉鎖するだけでなく、Twitterなどソーシャルメディアでの情報発信も停止した。市民への影響をまとめたWashington Postの記事によると、国立公園や博物館などの閉鎖のほか、パスポートやビザの発給、女性、乳幼児、子ども向けのプログラムの下での補助券給付などがストップする可能性まで出てきた。
影響を受けるのは市民生活だけではない。米国政府機関のデータはマネーの動きにも重要な材料となっている。例えばPew Research Centerは、政府閉鎖により影響を受ける政府系データをまとめている。労働省の労働統計局は4日に予定していた9月度の雇用統計の発表を延期した。8月度の都市圏失業率データも発表されなかった。商務省の国勢調査局や経済分析局などの統計も国外の専門家が経済指標に用いており、これらが滞ることで副次的な影響を受ける業界は多そうだ。
ほかにも影響を受けた分野は多い。例えばNASAは、ミッションコントロール以外は閉鎖状態にあり、トップページは農務省と同じメッセージを表示している。NASAの影響について分析したUniverse Todayによると、1万8000人のNASA職員の97%が一時帰休となったという。Webサイトやソーシャルメディアなど表向きだけでなく、NASA内で進行中の研究などの作業も停止するため、火星探査計画「MAVEN」(Mars Atmosphere and Volatile EvolutioN)の打ち上げ予定期間(11月18日から12月7日)を逃す可能性もあると見る。その場合、2016年にまで延びるとまで危惧(きぐ)された。