トピック

全SKUでCopilot+ PCに対応、徹底した電力効率設計で次世代のユーザー体験を実現する「Snapdragon Xシリーズプラットフォーム」

 生成AIの利用が一般化した中で、日常的なPC、特にノートPCでもAIを動かすために登場したのが「AI PC」や「Copilot+ PC」だ。

 Copilot+ PCとして最初に登場したのは、Microsoft Surfaceシリーズを含む、CPUにクアルコムテクノロジーズのSnapdragon Xシリーズプラットフォームを搭載したWindows PCだった。Windowsはx86アーキテクチャのCPUの割合が圧倒的に多いが、Copilot+ PCではSnapdragon Xシリーズ搭載ノートPCも各社から発売されており、特に電力性能が注目されている。

 そこで今回は、Snapdragon Xシリーズプラットフォームについて、クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ有限会社 マーケティング統括本部長 泉 宏志氏に話を聞いた。

ピークパフォーマンス時でも電力を維持し、AC電源なしでも使用可能。電源を抜いても性能の低下なし

 Snapdragon Xシリーズプラットフォームは、ハイエンドから順に、「Snapdragon X Elite」「Snapdragon X Plus」「Snapdragon X」の3種類からなる。Snapdragon X Eliteが12コア、Snapdragon X Plusが10コアまたは8コア、Snapdragon X(無印)は8コアだ。いずれもNPU(Neural Processing unit)性能は45TOPSと、Copilot+PCの要件を満たしている( 図1 )。

図1 Snapdragon XシリーズのNPU性能はすべてのモデルで45TOPS

 Snapdragonというと、スマートフォン向けのSoCのイメージが強いが、「当社がノートPCのSoCの開発に従事して10年近くになります」と泉氏は説明する。

 ただし過去にはスマートフォン向けSoCでWindowsマシンを作ろうとしていたため、パフォーマンス不足や周辺機器対応などの問題があったという。「そこで3世代前から、スマートフォンのSoCをベースにしつつ、ノートPC向けに大きく作り変えるという開発戦略に変わってきています」と泉氏。2022年にはSurface Pro 9に、Snapdragonをベースにマイクロソフト向けに開発した「SQ3」が搭載されている。そうした流れのうえに、Snapdragon Xシリーズプラットフォームが開発された。

 それに加えて、マイクロソフトからCopilot+ PCの基準が設けられた。その要求する40TOPSのNPU性能をクリアするものとして、Snapdragon Xシリーズプラットフォームが開発されたわけだ。

 他社のCopilot+ PC向けプロセッサーと比べたSnapdragon Xシリーズプラットフォームの特徴の一つが、電力性能だ。クアルコムテクノロジーズの出しているデータによると、ピークPCパフォーマンス時において、他社製品より消費電力を113%削減できるとなっている( 図2 )。

図2 Snapdragon Xシリーズプラットフォームは驚くべき性能をより低電力で発揮

 これは、スマートフォンで培ったシステムレベルの電力最適化によるものだと泉氏は説明する。

 この高性能と低消費電力を実現しているのが、Snapdragon Xシリーズプラットフォームに含まれる独自開発のCPU「Qualcomm Oryon」だ。

 その結果として、ピークパワー時の電力効率だけでなく、AC電源を挿していないときにパフォーマンスが低下しないことも、Snapdragon Xシリーズのアドバンテージとなっているという。「スマートフォンは充電器を付けずに持ち歩いて使うデバイスですが、それに近いかたちで、しかもパフォーマンスが落ちることなしに使っていただけるというのが、新しいユーザー体験になるのではないかと思っています」(泉氏)。

 泉氏自身もSnapdragon XシリーズのノートPCを使っており、ビデオ会議やメールの処理、資料作りをしていて、AC電源を挿さなくても十分1日持つという。

 電力性能の効果はバッテリーライフにとどまらない。消費電力が減れば、それだけ発熱量も下がる。冷却機構をシンプルにすることができ、PC操作での快適さも上がる( 図3 )。

図3 同じAIタスク実行時のデバイス表面温度の比較

NPUのHexagonとGPUのAdrenoを搭載

 Snapdragon Xシリーズプラットフォームの中でNPUにあたるのが「Qualcomm Hexagon 」だ。かつてはDSP(Digital Signal Processor)と呼んでいたが、AI処理の需要が高まりNPUという呼称が一般的になったことから同社でもNPUと呼ぶようになった。

 また、同じくAI処理などに使われるGPUとしては「Qualcomm Adreno」を搭載している。

 Copilot+ PC対応のCPUベンダーの中でも、CPU・NPU・GPUでの処理の関係や位置づけについては、各社でも異なる部分がある。

 Copilot+ PCで想定されるAI推論処理について、Snapdragon Xシリーズプラットフォームではどう役割分担するのか泉氏に尋ねると、「ユースケースによる、というのがシンプルな答えになります」との回答だった。たとえば、精度(Accuracy)をある程度犠牲にしてもパラメータのビット数を減らしてパフォーマンスや省電力を求めるような用途にはNPUが、精度を重視してビット数を減らさないような用途にはGPUが使われるだろうとのことだった。

全SKUで45TOPSを実現、将来はより上位の製品の可能性も

 冒頭で紹介したように、Snapdragon Xシリーズプラットフォームは、ハイエンドから順に、Snapdragon X Elite、Snapdragon X Plus、Snapdragon Xからなる。基本的にコア数が異なるほか、CPUやGPUのパフォーマンスに段階的に差がつけられている。

 このラインナップについて泉氏は、いずれのSKU(Stock-Keeping Unit:バリエーション)でも45TOPSのAI性能を持ち、Copilot+ PCの要件を満たしていることが、クアルコムテクノロジーズの強みだと語る。

ソフトウェアの互換性にはさらに投資していく

 ただし、ユーザーがSnapdragon X シリーズプラットフォームのWindows PCを導入することを検討するとき、もしかしたらと懸念されるのが、ソフトウェアの互換性だ。Windowsはこれまでほとんどx86アーキテクチャで使われてきたが、そこで普段使っているソフトウェアがWindows on Snapdragonアーキテクチャで動くかどうかは重要だ。実際、一部のゲームや、サードパーティの日本語入力、セキュリティソフト、プリンタードライバーなどで、動かないものがあることが報告されている。

 これについて泉氏は、まず、マイクロソフトが発表している統計データから、ノートPCを使っている時間の約90%で使うアプリケーションは、すでにSnapdragaonにネイティブ対応しているというデータを紹介する。

 といってもあと10%が残っている。ここには、グローバルにリリースされているソフトウェアではなく、特定の国や業種で使われるアプリケーションなどが含まれるという。
 「そうした互換性の担保について、いま、クアルコムテクノロジーズもマイクロソフトも投資をしています。今後アナウンスされるものもありますし、マイクロソフトにはApp Assureというアプリケーションの互換性を支援するサポートサービスもあります」と泉氏は語る。

 Windows on Snapdragonアーキテクチャ上でx86アプリケーションを動かすエミュレーターについても、改善が進んでいるという。「当初はエミュレーターを使うと動作が10分の1ぐらいになるという話もありましたが、いまでは80%ぐらいのパフォーマンスで動くという評価結果も出ています」と泉氏は言う。

 こうした各ベンダーの対応はWindows on Snapdragonの普及と“鶏と卵”なところがある。「Snapdragon Xシリーズに関しては、一定の成果を出してきているので、ネイティブ対応などをしていただけることも増えていくのではないかと思っています」(泉氏)。

 クアルコムテクノロジーズでも、現在Windows 11にて対応しているアプリケーションのリストを公開している。

●Windows 11 Apps | Snapdragon Emulation Apps | Qualcomm
https://www.qualcomm.com/jp/ja/snapdragon/laptops-and-tablets/windowsapps

●Windows on Snapdragon 互換性ソフトウェア
https://www.worksonwoa.com/ja

 最後に泉氏に、改めてSnapdragon X シリーズを搭載したCopilot+ PCのアピールポイントを聞いた。同氏は、「電池持ちが圧倒的に良いので、持ち運ぶユースケースのある方であれば、必ず新しいユーザー体験が得られると思います。ぜひ触っていただきたい」と答えた。

 また、Copilot+ PCによってローカルでAI推論を実行するときには、AIモデルだけではなく、画像やテキスト、音声など入力や出力するものとの複合体で成り立つ。そこで泉氏は「Snapdragon Xシリーズは、そうした複合動作を含めてより良く処理できるのが強みだと思います」として、「いま『Copilot+ PCで何ができるの?』と思う方も、Snapdragon Xではこういう強みがあるというユースケースがどんどん出てくると思います。興味を持っていただけるのであれば、選択肢の一つに入れていただければと思います」と語った。

●Qualcomm Snapdragon搭載PC(ビジネス向け・家庭用)

https://www.qualcomm.com/jp/ja/snapdragon/laptops-and-tablets

●お問合せ先

クアルコムシーディーエムエーテクノロジーズ有限会社
https://www.qualcomm.com/