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業務の高度効率化、モダンデバイス管理、強固なセキュリティ。Windows 11展開を機にINPEXはデジタル化を加速する
- 提供:
- 株式会社 日本HP
2025年3月31日 09:15

株式会社INPEX(以下、INPEX)は低炭素なエネルギーの安定的な供給と、持続可能で地球環境に配慮した「責任あるエネルギー・トランジション」を目指し、"地球の力で未来へ挑む"エネルギー企業です。グローバルで展開するビジネスに高度かつ効率的に取り組むため、デジタル技術の活用にも積極的です。また、堅牢なセキュリティとの両立も求められます。
Windows 11が発表されると、即座にオペレーティングシステム更新に向けたプロジェクトをスタート。2023年度にはWindows Autopilotなどを活用した展開方法を入念に検討。2024年中には国内全拠点への展開をほぼ完了させることで、エンドポイントのセキュリティ向上を実現しています。さらに、高度で効率的な業務環境を実現するため、"AIR"という社内チームを立ち上げ、生成AI活用と働き方の変革をドライブしています。
Windows 11展開プロジェクトを通じてデジタル環境の「管理の容易さ」「セキュリティの強靭性」「展開の迅速性」という3つの要素を高いレベルで実現。さらに2024年には有償のMicrosoft 365 Copilotを日本で働く従業員の1/3近くとなる650ライセンス導入。Microsoft TeamsでのAIメモや、メールのドラフティング、そして資料のサマリー作成などの機能を積極的に活用し、業務を効率化させています。

Windows 11への早期移行で、互換性の担保と先進的な管理への移行を両立へ
INPEXは「責任あるエネルギー・トランジション」を掲げ、石油・天然ガス(LNG)から水素CCUS、再生可能エネルギーまで多様でクリーンなエネルギーの安定供給と、ネットゼロに向けた事業を展開しています。
しかしネットゼロカーボン社会の実現には課題も多く存在します。その1つとして近年注目されているのが「AI活用に伴う、データセンターの電力消費増加」という課題です。
このような課題を克服するためには、供給するエネルギーについても効率化とクリーン化を図っていく必要があります。
そのために、同社は、オフィス業務や操業現場におけるデジタル技術の徹底的な活用を推進すると同時に、石油やLNGなどの重要なライフラインを支えるプロジェクトを遂行するために、堅牢なサイバーセキュリティの構築に努めています。
高い互換性を確保したまま、先進的な端末管理への移行を両立。
この実現のために、INPEXが真っ先に選択したのがWindows 11への早期移行でした。
移行プロジェクトのリーダーを務めた、同社 資材・情報システム本部 情報システムユニット ITサービスグループ IT Architect 森直人氏は次のように振り返ります。
「どんなオペレーティングシステムにも寿命があります。それは仕方のないことです。サポートが終了するオペレーティングシステムを使用し続ければ、エンドポイントにセキュリティの穴が生じるリスクがあります。速やかにWindows 11へ移行することは当然の選択でした。もちろん、他のオペレーティングシステムに切り替えることも検討しました。しかし、当社内で活用している600もの業務アプリケーションを活かせるオペレーティングシステムはWindows以外になかったのです」
プロジェクトをスムーズに進行させた4つのポイント
INPEXのWindows 11早期移行プロジェクトは、2022年に検討を開始。2023年9月から半年をかけて入念な検証を行った上で、2024年1月にノートPC 2,000台超を調達し、3月からキッティングを開始。わずか3か月後には従業員へのPCの配布を開始して、旧PCと交換。回収した旧PCの一部はWindows 10からWindows 11に再キッティングを行い再利用しています。
複数の国内拠点をまたぐ大規模なプロジェクトをやり遂げたモチベーションの源泉、そして享受できたメリットとして、森直人氏は次の4点を挙げています。
1. Microsoft Entra Joinによるクラウドファーストの実現
2. Windows Autopilotによるキッティングの劇的な省力化
3. Microsoft Intuneによるデバイス管理の安定化
4. 「Windows 11 準拠」によるデバイス選定の容易さ
Entra Joinは、認証基盤であるEntra IDにデバイスを参加させるPC管理の方法です。INPEXにとって最大のチャレンジがここにあったと森直人氏は説明します。
「私たちは、クラウドファーストでの環境構築を目指していました。その点、Entra Joinで進行することが理想だったのですが、社内システムが対応できずログインできなくなる恐れもあり、最初から選択肢を絞ってしまうと後戻りできないリスクがありました。そこで、既存活用していたオンプレミスのActive DirectoryとクラウドのEntra ID(旧称Azure AD)を平行して活用するHybrid Entra Joinの環境も構築して、キッティングを開始する直前まで両方の環境で業務システムへの影響などの検証を重ねたのです。その結果、ほぼ支障なくEntra JoinでのWindows 11移行が実現できました」

"Windows 10のサポート期限が切れる 2025 年になると、パートナーの手も埋まってしまうだろうし、PCの調達もできなくなると予測して、2024年中にWindows 11へ移行することを計画しました。このスケジュールは正解だったと実感しています。"
Windows Autopilot、Intuneによる劇的な省力化
無事、Entra JoinによるクラウドファーストなPC管理が実現したことで、Windows AutopilotならびにIntuneとの連携もスムーズに完了。期待通りの効果を上げていると、森直人氏は言います。
「Windows Autopilotは、マスターイメージをクラウド経由で展開できるツールです。このツールのおかげで、納品されたPCを起動するだけで当社基準を満たしたWindows 11が利用できるようになりました。ただし、事前プロビジョニングを行うことで利用者の初回ログイン時の負担を軽減したり、INPEXでは資産管理シールを貼るなどの準備はしています。従来はキッティングにPC1台あたり1~2時間かかっていたものが、半分以下の時間で完了するようになりました」
さらに、2025年度から開始した海外拠点へのWindows 11の展開では、非常に大きな役割を果たしてくれるだろうと期待を寄せています。
「海外拠点の場合、現地のベンダーにPCの調達や展開を依頼することになりますが、Windows Autopilotのおかげで機種に依存することなく、クラウド経由でIntuneに構成した内容が展開できます。そのため、現地のベンダーが作業しても、現地にいる社員が作業しても、INPEXで強制したかったPC環境を展開することができます。これは大きなメリットです」
また、MDM(Mobile Device Management)であるIntuneでINPEXグループ内のPCを一元管理できるようになったことで、Windows Updateの適用漏れや、セキュリティポリシーの徹底に貢献していると言います。
最後に、ユニークなポイントとなるのが「デバイス選定の容易さ」です。
「今回、ノートPCを調達するに際して要件定義をまとめたのですが、重要項目である"セキュリティ"に関しては、ほぼ一言『Windows 11に準拠すること』と記載することで済んでしまいました。汎用的なオペレーティングシステムを選択するだけで、Windows Hello for Businessなどのセキュリティ条件を満たすハードウェアを指定できるのですから」
そして、複数のベンダーに要件を提示した結果、INPEXの要望をもっとも満たす製品として選択されたのが、HP社のHP EliteBook 630 G10でした。

"働き方"を進化させるために、生成AIの積極活用を推進
2023年度から本格的にスタートしているINPEXのプロジェクトにおいて、Windows 11早期導入に並ぶもう1つの柱が"AIR"という社内チームが推進する「オフィス業務における生成AIの徹底活用」です。
INPEXでは生成AIが出てきた当初から日常業務の効率化に向けた各種生成AIツール活用の可能性を模索してきたと話すのは、同 情報システムユニット AIエバンジェリスト 森真之助氏です。
「始まりは『近い将来必ずビジネス環境を大きく変えるツールになる。生成AIを検証しておいてほしい』という部長からの指示でした。そして2023年4月にはAzure OpenAI Serviceを活用して自社内の環境で生成AIを活用するPoC(Proof of Concept)を行ってみたのです」
しかし、当初の反応は期待とは遠いものだったと言います。
「期待外れに感じてしまったのは、ハルシネーションです。当時はまだ明らかな間違いが回答されることも多くて、これは仕事に使えないなと。ですが、その後LLM(Large Language Model)の精度が向上したり、社内導入したディープラーニング系の翻訳ツールが非常に好評だったこともあって、徐々にAIがオフィス業務に組み込まれていきました」
そうした機運を受けて、社内の生成AIの推進と働き方の変革目的として森真之助氏をリーダーとする社内チームの"AIR"が立ち上げられました。
「AIRという名称は、『AIが空気のように、自然にある職場へ』というコンセプトに基づいた造語です。このチームを立ち上げると共に、Azure OpenAI Serviceを使ってセキュアな環境でGPTが利用できる"AIR ChatGPT"を社内に展開したのが、本格的な活動のスタートでした」
そして翌2024年。INPEXの生成AI活用はさらに加速していったと言います。その一翼を担ったのが、Microsoft 365 Copilotでした。
Teams会議のAIメモ。メールドラフト。資料の要約。それぞれの進化が凄まじい
「2024年はMicrosoft 365 Copilotの年だった」と森真之助氏は振り返ります。
「当社ではMicrosoft 365 E5を契約していますので、Copilotの機能はある程度利用できる環境にありました。その上で、3月に有償のライセンスを100ユーザー分調達してトライアルをスタートしました。そして10月には500ライセンスに増やして、本格的な運用に踏み切ったのです」
無償でも利用できたCopilotに対し、有償ライセンスを追加したことについて、森真之助氏は「社内アンケートの結果を見ても、費用対効果が高いことが分かった」と強調します。
「最初のトライアルのアンケートの結果、95%が『継続して使いたい』と回答していました。また、費用対効果があるかという質問に対しても92%が『Yes』と答えています。Microsoft Office製品とシームレスに連携活用できることがポイントですね。もちろん自分でも使っていたので、絶対に価格以上の価値を創出できると実感しました」
そして2025年1月には650ユーザーにまで拡大。さらに新年度には1,000ユーザーを超える予定であると言います。
「一番活用されているのは、Teams会議のAIメモ機能です。これもどんどん精度が上がっていて、メモのカテゴライズも的確になってきました。オンライン会議の録画も、トピック毎にシーンが分けられていて映像の頭出しがしやすくなっています。会議でOutlookのスケジュールが埋まってしまうような多忙なマネジメント層にこそ是非活用してほしい機能です。」
Teamsの次に活用されているのがOutlookであると言います。
「たとえば取引先様への挨拶文や日々のメールのやり取りの返信をワンタッチでドラフトしてもらうこともできます。サービス開始当初は特に英語でのドラフティングが秀逸でしたが、今は日本語の精度もあがってきています。やはりデータセットの多い英語のクオリティは高く、『こういう表現もあるのか。という発見もあって勉強になる』という声も多いです」

"Microsoft 365 Copilotの一番良いところは、進化の速さです。もし、リリース当初に触れてみて、期待外れだったという方がいたら『ぜひもう一度、最新のバージョンに触れてみてください』と勧めます。多分、まるで違う感想になるのではないでしょうか。"
INPEXのビジョンの実現に向け、デジタル技術の徹底活用で事業環境のさらなる進化を追求
すでにさまざまな成果を生んでいるINPEXのAI活用ですが、その背景には"AIR"による継続的でユニークな啓発活動があります。
「AIR発足時には、まずはロゴとマスコットキャラクターを作りました。何種類もポスターを作成して、社内中に掲示をしたり、社員が集まるカフェスペースを1週間借りて、ノベルティを配布したり、生成AI関連の書籍をズラッと並べるなど、とにかく社員の興味を引くことから始めました。」(森真之助氏)
動画によるツール紹介も特徴的で、AIR発足後1年半で、生成AIツールの紹介動画を約30本作成して社内配信しています。
「当社の社内動画コンテンツ的には再生数も多く、最近では『あの動画、役に立ったよ』と声をかけられることも多くなりました。そして、社内を歩いていると、かなりの割合でCopilotやAIR ChatGPTなどを活用している人を見かけます。着実に浸透しているのを実感しています」
しかし、AIRの取り組みは「まだ始まったばかり」だと、森真之助氏は強調します。
「生成AI活用の展開が進むにつれて、生産性の向上も進んでいますが、同時に『生成AIを使って仕事をするワクワク感』のようなものが醸成され始めていると感じています。この積み重ねが、働き方の変革やカルチャートランスフォーメーションにつながっていくと確信しています。そして、社員(人)とテクノロジー(技術)、それらが醸成する新しい企業文化(空気)をもって、当社の主たる事業であるエネルギー事業を推進し、ネットゼロカーボン社会の実現を目指していく。それこそが当社のデジタル戦略が見据えるところであり、AIRの存在意義です。この実現に向けて、私たちはこれからもチャレンジを続けていきます」

