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AI自動翻訳と生成AIのベースは同じもの? ロゼッタが生成AIソリューションで強みを生かせる理由

株式会社インプレス クラウドWatch編集部は、社会現象といっても過言ではないほど注目を集めている“生成AI”の、企業における活用を支援するイベント「クラウドWatch Day|“最適な生成AI環境” 構築支援 企業が安心して使える、ベストな生成AI環境を構築しよう!」を、2月21日に開催した。

関心の高さを背景に、多くのベンダーが「ChatGPT」に代表されるLLM(大規模言語モデル)を利用した新しい機能・製品の提供を計画するなど、それを実現するソリューションにも注目が集まっている一方、ChatGPTなどの利用においては、不適切な回答の生成や、社内情報の流出、学習データや生成物の著作権など、企業や組織が対顧客サービスに利用する際のリスクも指摘されている。

同セミナーでは、こうした懸念点を踏まえたうえで、企業で有効に利用可能な生成AI環境をいかにして構築すべきかや、それを実現するサービスなどをあわせて紹介した。

本稿ではそうした当日の講演の中から、株式会社ロゼッタ AI事業部 取締役 営業統括部長 古谷祐一氏と同 マネージャー 松田太郎氏によるセッション「Metareal AIで開かれる新時代:生成AIを駆使した成功の軌跡と事例紹介」の内容について紹介する。

 ChatGPTが大きな注目を集め、生成AI「元年」とも呼べる年となった2023年。その市場規模は、今後さまざまな分野で高い成長率が見込まれている。ボストンコンサルティンググループの調査によると、2022年から2027年の生成AI市場の年平均成長率は+66%、2027年には1210億ドル規模にまで拡大すると予測されている。分野別では、「ヘルスケア」の成長率が最も高く+85%、次いで「銀行・金融・保険」が+75%、「コンシューマー」が+64%といずれも大きな伸びが期待されている。

 古谷氏は、生成AIの位置づけについて、「1995年にインターネットが登場し、社会的基盤が大きく変わったが、生成AIは、それと同等、もしくはそれ以上のインパクトがあるテクノロジーだと考えている。今後、社会がSociety 4.0からSociety 5.0へと向かう橋渡しをする役割を担っていくとみている」との見解を述べた。

 ロゼッタは、今から20年前、2004年の設立当初からAIを活用した機械翻訳を手がけてきたパイオニアであり、現在ではAI自動翻訳における国内最大のリーディングカンパニーとなっている。主に、企業内の知財・法務・マニュアルなど専門領域に特化したAI自動翻訳サービスを開発・提供しており、2023年には導入企業が6000社を突破。そして、この実績を踏まえ、昨年から生成AI事業ブランド「Metareal AI」を立ち上げ、生成AIサービスのビジネス展開を推進している。

 「ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は、もともとAI自動翻訳における自然言語処理モデルを発展させたものだ。従来の自然言語処理モデルは少量のデータで個別タスクを学習していたが、LLMは分散表現とセルフアテンションによって同時に複数処理を実現し、人と会話ができるところまで進化した。つまり、AI自動翻訳サービスと生成AIサービスのベースとなるアーキテクチャは同じであり、当社が生成AI事業に参入するのも自然の流れといえる」と古谷氏。

 生成AIサービスにおけるロゼッタの強みとしては、(1)AI自動翻訳のパイオニアとしての実績、(2)LLMのベースモデルの開発が可能、(3)オンプレミス環境の構築、(4)RAGなどの高度なAI開発技術、(5)開発スピードの速さ、(6)顧客に応じたコンサルテーションおよび伴奏支援――の6つを挙げ、「当社では、AI自動翻訳で培った知見と実績を生かし、生成AIモデルの開発から営業・サポートなどフロントエンドまで一気通貫で対応することができる」と強調した。

 同社が生成AI事業で展開しているサービスは、大きく「AI SaaSプロダクト」と「受託開発」の2つのメニューに分かれている。松田氏は、「従来のAI自動翻訳サービスと同様に、生成AI事業においても、顧客が求める品質を追求したサービスを開発・提供している。具体的には、AI SaaSプロダクトでは、AIプラットフォームサービス『Metareal AI』、AIチャットボット『chatmai』、汎用的社内AIサービス『neurassist』をリリース。

 一方、受託開発では、カスタマイズ生成AI『neuraforce』とオンプレミス生成AI『neuraleap』をラインアップしており、その中で業種や顧客に特化した生成AIツール『専門文書AI』の展開に注力している」と説明した。

 各サービスの特徴としては、AI SaaSプロダクトのAIプラットフォームサービス「Metareal AI」では、プラットフォーム上に搭載されているさまざまな生成AIアプリケーションと対話型AI Chatを定額料金で利用することができる。資料生成や文書校正、要約作成、SWOT分析、高精度プロンプト生成など事業成長に欠かせないツールを多数用意しており、今後100以上に拡充する予定だ。

 AIチャットボット「chatmai」は、どのようなサイトにも簡単にAIチャットボットを設置できるサービス。サイト内の全ディレクトリと全コンテキストをサーチし、該当する内容をAIが学習してチャットボットに回答を生成する。活用事例としては、「自社サイトにチャットボットを設置しサイト来訪者が自社製品情報を調べられる状態にする」、「営業担当者がさまざまな営業先企業のWEBサイトを詳しく調べられるようにする」などがある。

 汎用的社内AIサービス「neurassist」は、企業内のデータを学習する社内専用の生成AIサービスで、従業員が企業内情報に問い合わせできるチャット機能を提供する。あらかじめベクターDBに保存された企業内情報をクエリが参照し、GPTが回答を生成する仕組みとなっている。同サービスでは今後、必要なAIアプリを自社で製作できる「App Creator」を提供する予定で、「ユーザー企業と協力し、『App Creator』を利用したアイデアソンなども実施したいと考えている。例えば、各部署の現場スタッフと一緒になって業務効率化に向けたAIアプリを製作し、その効果を検証するといった取り組みを計画している」(古谷氏)という。

 受託開発で提供しているカスタマイズ生成AI「neuraforce」は、業種や顧客に特化した生成AIツールを開発するサービス。松田氏は、「AI自動翻訳に携わってきた実績と経験を生かし、特に『文書作成』や『文書の整合性のQC(品質管理)』にフォーカスした生成AIツールを開発している。顧客の要望に合わせてカスタマイズすることで顧客が抱える課題に直接アプローチしていく」と説明。最新の導入事例として、東洋経済新報社の「四季報AI」を共同開発した事例を動画を交えて紹介した。「四季報AI」は、ChatGPTを活用し企業分析を革新的にサポートするAIアプリケーションで、89年分の四季報データの価値をさらに高めるプロダクトとなっている。

 また、受託開発のもう一つのサービス「neuraleap」は、業種や顧客に特化した生成AIソリューションをオンプレミス環境で構築・活用するサービスで、外為法や個人情報保護法などの観点から高度なセキュリティ環境が必要な組織向けに提供している。

 さらに、これらの受託開発サービスでは、ロゼッタが独自開発した日本語LLM「Metareal AI LLM-7B」も利用可能となっている。「Metareal AI LLM-7B」は、70億のパラメータを持っており、従来の言語汎用型モデルに比べ、より自然な日本語の取り扱いが可能になるという。

 今回のセッションで松田氏は、受託開発サービスで注力している「専門文書AI」の代表的な開発事例として、「文書・資料の自動生成ツール」「整合性チェックツール」「モニタリングツール」「社内情報やナレッジの検索ツール」の4つを紹介。

 「『文書・資料の自動生成ツール』は、製品のプロモーション用資料や製品カタログの自動生成ツール、省庁や規制当局へ提出する専門文書の自動生成ツールなどで、製薬業や製造業、エネルギー関連企業からの要望が増えている。『整合性チェックツール』は、作成した文書・資料と、参照した根拠文書・資料との整合性をチェックするQCツール。特に申請書類の審査が厳しい医薬業からのニーズが高まっている。『モニタリングツール』は、作成した文書・資料が、業界のガイドラインや法令に対して不適切な表記・内容がないかをチェックするQCツール。そして、『社内情報やナレッジの検索ツール』は、技術継承や社員の手元業務の効率化を目的としたツールで、『neurassist』の大規模版となる。社内に蓄積された膨大な情報やナレッジに対して問い合わせし、回答を生成する」と説明した。

 最後に松田氏は、「当社の受託開発では、まず顧客の課題や悩みを抽出したうえで、生成AIの導入コンサルテーションを実施。契約締結後は、準委任契約によるAIエンジニアが顧客と密に連携して伴奏支援を行い、生成AIプロジェクトを成功へと導いていく。また、AI SaaSプロダクトでは、今後も新たな生成AIサービスを続々とリリースしていく予定だ」とアピールした。