トピック
Azure for OperatorsとAzure Stack Edgeが
5Gネットワークのサブスクリプション・サービス化を実現
- 提供:
- 日本マイクロソフト株式会社
2022年8月10日 15:00
6月に幕張メッセで開催されたネットワーク技術のイベント「Interop Tokyo 2022」では、注力テーマの1つとして「5G/ローカル5G」が取り上げられた。5Gではコアネットワークや基地局(RAN)などにおいて、これまでの専用機器から、汎用ハードウェア上のソフトウェアによって構成することが試みられている。そのため、インターネットで使われるようなネットワーク技術と共通する考え方が多くなっている。
新技術や相互接続性を確認するInterop会場ネットワーク「ShowNet」でも、合計7つの独立した5Gシステムが各社から持ち込まれ、フィールドテストが行われた。
日本マイクロソフトも、その1社として参加。ShowNetのラックに収納されたAzure Stack Edgeノードで5Gコアインスタンスを動作させ、Azureのポータルから管理できるシステムを構築。ASOCS社の基地局とローカル5G端末による通信をテストした。
米Microsoftの移動体通信といえば、2021年には米AT&Tが移動体通信向けのコアネットワークの一部にあたるNetwork CloudプラットフォームをMicrosoftに売却し、Azure上のコアネットワークをAT&Tが利用するように移行すると発表されている。
こうした通信事業者に向けたMicrosoftのソリューション「Azure for Operators」については、Interop Tokyo 2022の基調講演でも、米MicrosoftのCorporate Vice PresidentであるYousef Khalidi氏が動画で講演した。
ここでは、基調講演の模様と、ShowNetでのフィールドテストについてレポートする。
5Gプラットフォームのための4サービスを解説
基調講演「Transform 5G mobile networks with the Microsoft Cloud」で、Khalidi氏は、通信事業者のためのソリューション群である「Azure for Operators」を構成するサービスについて解説した。
Khalidi氏はMicrosoftの立ち位置について、Microsoftはあくまでプラットフォームを提供するだけであり、通信のビジネスやオペレーション、顧客といった実務は通信事業者のものであることを強調した。
通信事業者のためのサービスとして今年発表された4つのサービスを、Khalidi氏は紹介した。
まずプラットフォームの部分では、通信事業者向けハイブリッドクラウドプラットフォームの「Azure Operator Distributed Services(AODS)」と、その上で5G SAのコアネットワークを動かす「Azure Operator 5G Core」がある。
また、5Gネットワーク上に直結した低遅延の環境でアプリケーションを実行するMEC(Multi-access Edge Computing)の部分では、「Azure public MEC」と「Azure private MEC」がある。
AODSは、統合クラウド管理のレイヤーだ。ワークロードをエッジやAzureのパブリッククラウドで動かすもので、コントロールプレーンはAzure上にある。さらに、AI/MLやストレージなどのAzureのサービスも統合されている。
さらにKhalidi氏は、従来のハードウェアエコシステムも、VNFベンダーもサポートすると付け加えた。
Azure Operator 5G Coreは、通信事業者がAzure Stack Edgeなどの上で、スケーラブルな5Gモバイルコアを構築、デプロイ、運用できるもの。Khalidi氏は特徴として、Azureやその他のサービスと組み合わせられる柔軟性を挙げた。
Azure public MECは、エッジコンピューティングのプラットフォームだ。5Gネットワークと直結した低遅延アプリケーションを、パブリッククラウドまたは5Gネットワークのベストなほうで動かせるという。
それに加えてAzure private MECもある。これは、低遅延のアプリケーションを利用企業の現場にデプロイするもので、Khalidi氏は工場でのローカル5Gを例に挙げた。プログラミングモデルは、AzureやAzure public MECと非常に近いものになるという。
なお、途中で上映されたプロモーション動画では、AT&TのExecutive Vice PresidentのAndre Fuetsch氏も登場し、クラウドで5Gコアを動かすイノベーションについて語っていた。
ShowNetでAzure for Operatorsによる5Gが動作
InteropのShowNetでは、日本マイクロソフトの5Gのフィールドテストとして、パブリッククラウドと連携した5Gコアが実験された。
ShowNetのラックに1Uの汎用サーバーによるAzure Stack Edgeノード3台を設置し、5Gコアをここで動かし、Azureから操作した。そして、ASOCS社の基地局とローカル5G端末による通信をテストした。電波を送受信する部分は、電波シールドテントの中で行われた。
このフィールドテストと、Microsoftにおける5Gについて、記者向けに説明が行われた。日本マイクロソフトと、基地局を提供したASOCS社、インテグレーションを担当したハイテクインター株式会社の3社が出席した。
パートナーとのエコシステムで5Gを実現
MicrosoftがAzure for Operatorsで何をしようとしているかについては、日本マイクロソフト株式会社の大島貴之氏(Azure for Operators 日本 韓国 インド担当ディレクター)が説明した。
Azure for Operatorsの背景としては、キャリアが専用ハードウェアを使っていたのがオープン化し、仮想化、さらにはクラウド化する流れがある。そこでAzureのパブリッククラウドまたはハイブリッドクラウドを使ってもらおうというものだ。
大島氏は、基調講演のKhalidi氏と同様に、「Microsoftはあくまでプラットフォームであって、キャリアをやるわけではない。キャリアのビジネスは侵食しない」と強調した。
これを実現するための布石として、Microsoftは2020年にAffirmed Networks社とMetaswitch Networks社を買収しており、「通信事業者に必要なソフトウェアがMicrosoftの中に整ってきている」と大島氏は語った。
ただし、5Gネットワークやローカル5Gネットワークは、コアネットワークだけあればできるものではない。そのため、デバイスやRAN、VNF、アプリケーションなどそれぞれのレイヤーでパートナーとエコシステムを組んでいくことが重要だと大島氏は説明した。
エッジのコアネットワークをAzureからコントロール
技術面については、日本マイクロソフト株式会社のデビッシュ・ガウタム氏(Azure for Operators アジア地域技術統括)が説明した。
今回の実験では、Azure Stack Edgeで5Gコアを動かした。Azure Stack EdgeはAzure Stackファミリーの製品で、Azure Stack HCIに似ている。違うところはOEMではなくファーストパーティとして提供するソリューションだという。
エッジに配置したAzure Stack Edgeは、Azure Portalから操作する。ガウタム氏は実際のAzure Portalの画面をデモし、SIMの一覧や各SIMの情報を見られるところや、SIMのポリシーを設定できるところを見せた。
なお、今回の実験は、1か月弱前から用意を始めて、アンテナなども2週間強で用意したという、クラウド時代らしいアドホックで迅速なものだったとガウタム氏は説明した。さらに、おかしいところがあればさくっと再展開して対応するなど、クラウドらしい準備だったという。
1か月弱で構築
ASOCSの関口透氏(ジャパンカントリーマネージャー)も、2週間程度で構築できたことを今回の実験の特徴の1つに挙げた。
ASOCSはイスラエルで創業したクラウドと電波の企業で、すべてソフトウェアで運用できるのが特徴だという。今回は基地局(vRAN)で参加した。
関口氏は「われわれもローカル5Gのマーケットではエッジ連携が大事だと思っている」として、その連携にASOCSのソリューションも入るとした。
また、ASOCSもサブスクリプションのモデルなのでAzure for Operatorsとの親和性が高いとして、この分野でMicrosoftにコミットしていく予定だと語った。
ハイテクインター株式会社の寺田健一氏(執行役員)も、今回の実験について、「一般的な案件では専門のエンジニアが1か月張り付いて、というものが多い中で、Azure Private 5G Coreはパッケージになっていて2週間程度で使えたのは、進化していると感じている」とコメントした。
同社の水野光太郎氏(ローカル5G開発部 部長)も、「今回の話をいただいたときに、スケジュールの短さに驚いた。しかし、やってみたらRANもコアもデプロイに時間がかからないことがわかった」とコメントした。