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Windows 11との組み合わせで真価を発揮するWindows Server 2022! その実力をベンチマークで検証

Windows Server 2012/2012 R2のサポート終了(EOS:End of Support)まで1年と少し。同OSを使用する企業は乗り換え準備を始めないといけないタイミングになってきている。乗り換え先は最新のWindows Server 2022が有力候補となるが、Windows Server 2022はクライアントにWindows 11を使うことで、ファイルサーバー用途で大幅なパフォーマンス向上が期待できるという。

本稿では、ベンチマークテストを実施したMKTインターナショナル株式会社 代表の赤井誠 氏にお話を聞く。赤井氏は、マイクロソフトマスタートレーナーであり、日本ヒューレット・パッカード在籍時にWindows Serverのビジネス責任者を努めるなど、Windows NTの時代からWindows Serverに精通する人物だ。

MKTインターナショナル株式会社 代表の赤井誠氏

Windows Serverの社内用途は約1/4がファイルサーバー

「サーバー市場では、オンプレミスからクラウドへの移行が全体的なトレンドとしてありますが、用途によってはオンプレミスに残しておいたほうがよいサーバーもあります。その代表格がファイルサーバーで、扱うファイルが大容量化する中、ネットワーク遅延を気にせず使えるオンプレミスのファイルサーバーは今後も残り続けると思われます」(赤井氏)

実際、Windows Server 2012/2012 R2のユーザー企業を対象とした調査では、用途の23%をファイルサーバーが占めているという。

Windows Server 2012/2012 R2の用途はファイルサーバーが23%で最も多い

「現存するWindows Server 2012/2012 R2のサーバーは国内に約40万台とされていますから、そのうち約9万台はファイルサーバーとして使われていることになります。それらを最新のWindows Server 2022搭載サーバーに置き換えたらどうなるか。さらにはクライアントも含めて更新するとどのような効果があるかを検証するために、ベンチマークを実施しました」(赤井氏)

SMBプロトコルにおける強化ポイント

ご存知の方も多いと思うが、Windowsネットワークでは、ファイル共有にSMBプロトコルが使われる。Windows Server 2022では、このSMBに様々な拡張・新機能がほどこされた。その中で、一般的なオフィスに設置されるファイルサーバーに影響を与える機能は「SMB暗号化の強化」と「SMB圧縮」の2つだと赤井氏は指摘する。これらの機能の概要は以下のとおりだ。

SMB暗号化の強化

AES256ビット暗号に対応した(従来はAES128ビット暗号)。これによりデータ保護が強化される。AESは通信データの暗号化でよく使われる暗号化技術だ。現在、民間で利用できるもっとも強度高いAES256ビット暗号に対応した。

SMB圧縮

ネットワークに流れるデータをリアルタイムに圧縮・伸長する機能。データ転送量の削減による高速化と帯域節約効果が期待できる。

「注意すべきは、これらの機能はクライアント側も対応していないと使えず、現状ではWindows 11と一緒に使う必要がある点です。もちろん、Windows Server 2022のファイルサーバーをWindows 10のクライアントから使うことはできますが、その場合はAES128ビット暗号が使われ、サーバー側で有効にしていてもSMB圧縮は無視されます。サーバーの新機能を有効活用するには、クライアントの更新も必要になるわけです」(赤井氏)

ベンチマーク1:サーバー/クライアントの新旧比較

それでは本稿の主題であるベンチマークテストに移ろう。最初のテストは、サーバーとクライアントを、「Windows Server 2012とWindows 10」、「Windows Server 2022とWindows 11」のそれぞれの組み合わせでファイル転送を行うというもの。ハードウェアは、OSのリリース時期のものを利用している。

「通常、ベンチマークテストは環境を揃えて実施するものですが、サーバーOSのアップグレードはハードウェアの更新と一緒に行うのが普通です。ですので、今回はWindows Server 2012で動く古いファイルサーバーを、Windows Server 2022の新しいサーバーに置き換えたらどうなるかをテストしました。また、サーバー/クライアントともに、OSの設定はデフォルトのままにしています」(赤井氏)

テストに用いた機材は以下のとおりだ。

●最新サーバー・最新クライアント環境
<サーバー>
CPUインテル Xeon Silver 4314 2.40GHz 16 core x 2
メモリ128 GB
ストレージ1.2 TB 10Krpm SAS HDD
RAIDRAID-5構成
OSWindows Server 2022
<クライアント>
CPU第11世代 インテル Core i5-1135G7 2.40GHz 4 core
メモリ8 GB
ストレージ256GB SSD
OSWindows 11
●旧世代サーバー・旧世代クライアント環境
<サーバー>
CPUインテル Xeon E5-2680 2.70GHz 8 core x 2
メモリ32 GB
ストレージ300 GB 15Krpm SAS HDD
RAIDRAID-5構成
OSWindows Server 2012
<クライアント>
CPU第7世代 インテル Core i3-7100U 2.40GHz 2 core
メモリ8 GB
ストレージ128GB SSD
OSWindows 10

なお、いずれの場合もクライアント/サーバー間は無線LAN(802.11ax)で接続。これは無線LANが主流となっている現在のオフィス環境を想定したものだ。

それではテスト結果を紹介しよう。それぞれの環境で10.2GBの仮想ディスクイメージファイルを5回コピーし(クライアント→サーバー)、平均値を算出した。その結果を以下のグラフに示す。

サーバー/クライアントの新旧比較。最新のサーバーとクライアントでは、約5.8倍の性能向上が見られた

旧世代サーバー/クライアントの664.8秒に対し、新世代サーバー/クライアントは115.6秒と、なんと約5.8倍ものパフォーマンス向上が見られた。

「両者の大きな違いは、主にハードウェアの進化によるものと考えられます。設定もデフォルトのままですから、古いサーバーを新しいサーバーに置き換えるだけで、大幅なパフォーマンス向上が期待できるということです」(赤井氏)

なお、今回のテストではサーバーとクライアントが1対1で接続しているため、ネットワーク帯域に余裕がある状態での結果であることにも注意が必要だ。

「ネットワークの帯域が狭い環境で、利用するユーザーが多く、たくさんのファイルを処理する場合、ネットワークがボトルネックとなる可能性があります。その場合には、ネットワークの強化も併せて検討する必要があるでしょう」(赤井氏)

ベンチマーク2:SMB圧縮の有効/無効による効果測定

2つ目のテストは、新機能のSMB圧縮の効果を検証するものだ。ベンチマーク1の「最新サーバー・最新クライアント環境」で、SMB圧縮の有効/無効を切り替えて、転送時間とネットワーク転送量の違いを比較した。
こちらでは、10.2GBの仮想ディスクイメージファイル、337MBのExcelファイル、380MBのPowerPointファイルの3種を使い、

なお、SMB圧縮を有効にするには、サーバー側でSMB圧縮ありの共有領域を作成する必要がある。それには、PowerShellで以下のコマンドを実行する。

> New-SmbShare -Name "CompShare" -Path "C:Compshare" -CompressData $true

共有名(-Name)、共有フォルダーのパス(-Path)の値は適宜読み替えていただきたい。なお、有効にしなければ、SMB圧縮は無効となるが、明示的に無効化することもできる。それには、「-CompressData $true」を外して、以下のようなコマンドを実行すればよい。

> New-SmbShare -Name "Share" -Path "C:Share"

ちなみに、クライアント側はサーバーからの圧縮要求に応じて、SMB圧縮の有効/無効を自動的に切り替えるため、特別な設定は不要だ。ただし、レジストリを書き換えることで、SMB圧縮の有効/無効を明示的に設定することもできる。今回のテストでは、万全を期すためその設定を行ったが、本来は不要な設定であるため、ここでは説明を割愛させていただく。

それではテスト結果を見てみよう。まずは転送時間の比較からだ。

仮想ディスクイメージファイル(10.2GB)の転送時間
Excelファイル(337MB)の転送時間
PowerPointファイル(380MB)の転送時間

続けて転送量の結果を示す。

仮想ディスクイメージファイル(10.2GB)の転送量
Excelファイル(337MB)の転送量
PowerPointファイル(380MB)の転送量

このように、最も大きな効果が出たのは仮想ディスクイメージで、転送時間で約1.9倍、転送量では約38.9%の削減が見られた。

「この結果からは、SMB圧縮は大容量ファイルで高い効果を発揮するという傾向が見られます。また、ExcelファイルとPowerPointファイルで効果が低かったのは、Microsoft Officeのファイル形式がXMLデータをZIP圧縮したものであることも影響していると思われます」(赤井氏)

このように、ファイルの大きさや種類によって効果にばらつきが出た結果となったが、今回のテストでネガティブな結果が見られなかったことに注目すべきだろう。SMB圧縮では、データの送信側で圧縮処理が、受信側では伸長処理が行われる。その処理がオーバーヘッドとなって逆効果となる可能性もあるわけだ。しかし、今回のテストでは、効果が出にくいExcelファイルとPowerPointファイルでも、わずかながら性能向上が見られた。SMB圧縮は、扱うファイルによって効果の程度に差はあるものの、あまり副反応を心配せずに利用できる機能だと言えるだろう。

「今回は性能面に着目しましたが、Windows Server 2022はクラウド連携が強化されていて、Azure Filesと組み合わせたハイブリッド・ファイルサーバーが容易に構築できるといったメリットもあります。ベンチマーク1で見たとおり、Windows Server 2022搭載の新しいサーバーに置き換えるだけで性能は大きく向上しますが、さらにWindows 11と組み合わせれば、AES256ビット暗号で安全性も高まり、SMB圧縮でネットワーク帯域の節約も期待できます。サーバー移行を計画する際は、新機能を活用できるよう、クライアント環境も併せて検討してほしいですね」(赤井氏)