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Windows Server 2022リリース!
NECに聞く、ハイブリッドクラウド時代のWindows Server戦略

2021年9月1日(米国時間)に正式リリースされたWindows Server 2022。同OSはセキュリティ、クラウド連携、コンテナーの強化・改良などを主な特徴とするが、このうちクラウド連携に関しては、サーバー製品を日本企業に販売してきたOEMベンダー各社のビジネスにも影響を与えるものと思われる。そこで今回は、NEC クラウドプラットフォーム事業部 主任の西田 武史氏に、同社のWindows Server市場における戦略についてお聞きした。(文中敬称略)

NEC クラウドプラットフォーム事業部 主任 西田 武史氏

日本企業のニーズにマッチするサーバーを作り続けてきたNEC

NEC Express5800シリーズと言えば、国内で多くのユーザーに利用されている、日本のPCサーバーを代表する存在。日本の企業ユーザーにとって、最も馴染み深いPCサーバーブランドと言ってもよいだろう。

そのExpress5800シリーズのWindows Server 2022への対応状況について西田氏は、次のように説明する。

「2wayラックモデルの最新機種は昨年末にWindows Server 2022に対応済みです。続けて1wayタワーモデルもこの3月に対応しました。その他現行製品に関しても対応作業を進めております」(西田氏)

タワーモデルでは、1wayスリムサーバーの「Express5800/T110k-S」もWindows Server 2022に対応する。中小企業から大企業まで規模の大小を問わず、多くの企業でExpress5800が使われているわけで、その中にはオフィスの片隅にタワーモデルを設置して運用する中小企業も多い。「Express5800/T110k-S」は、そうした企業で人気を博しているデスクトップサイズのスリムサーバーだが、単に省スペースというだけで採用されているわけではない。

サーバー向けの専用設計により、高い静音性・防塵性を実現し、高温環境でも安定稼働する。加えて、UPS(無停電電源装置)を内蔵することで、サーバールームのような電源環境が整備されていないオフィススペースでも安心して使えるようになっているのだ。まさに日本企業のために作られたサーバーと言ってよいだろう。

1wayスリムサーバーの「Express5800/T110k-S」

そして、PCサーバー市場におけるNECの最大の強みは、サポート力にあるという。
「NECはマイクロソフトとの協業により、Windows Server利用ユーザー様にハードウェア/ソフトウェアのワンストップサポートを提供してきました。全国に360ヶ所を超える保守サポート拠点があり(2021年3月現在)、これによりお客様に迅速なサポートを提供できる体制を整えています。日本のお客様はサポート品質について大変厳しいとも言われていますが、そうしたお客様に長年サポートを提供する中で培ってきた技術力、ノウハウは他社に負けないと自負しています」(西田氏)

Windows Server 2012からの乗り換え需要にどう応えるか

NECとしては、Express5800シリーズのラックモデルとタワーモデルの双方でWindows Server 2022対応製品が揃うこの春から、Windows Server 2022の普及に向けた活動を本格化するという。その普及を加速する最大の要因として西田氏が指摘するのが、約一年半後に迎えるWindows Server 2012/2012 R2の延長サポート終了だ(2023年10月サポート終了)。

「サポートが終了したOSを使い続けることの危険性は改めて説明するまでもありませんが、問題はセキュリティ面だけではありません。リリースから10年が経過したWindows Server 2012は、技術情報の喪失や技術者の移転/退職などにより運用管理が困難になっていくことが予想され、また、ビジネスニーズの変化にも対応できなくなっています。既存のお客様にも、ITインフラの最新技術要素を十二分に活用していただくために、最新OSをご提案することがNECの努めだと考えています」(西田氏)

乗り換え先として、Windows Server 2022をおすすめする主なポイントは、セキュリティとハイブリッドクラウド対応強化の2つだという。

「Windows Server 2022は、新たに導入されたSecured-core Serverでセキュリティが強化されています。ハードウェアのセキュリティチップと連携した機能で、これにより従来OSの管轄外だったファームウェアも保護することが可能です」(西田氏)

一方、ハイブリッドクラウド対応強化に関しては、最新のサーバー管理ツール「Windows Admin Center」によるところが大きい。

「Windows Server 2022では、Azure File SyncやAzure Backup、Azure Monitorなど、Azureのクラウドサービスと連携するシステムを、Windows Admin Centerから設定・管理することができます。オンプレミスだからといってオンプレミスで完結させる必要は必ずしもありません。Azureのメリットを活かしながらオンプレミスのサーバーを使うことを考えるのならば、Windows Server 2022への移行がベストです」(西田氏)

ちなみに、Windows Admin Centerはプラグインで機能を拡張することができ、マイクロソフトのOEMベンダー各社は自社ハードウェア向けのプラグインを開発・提供している。NECも「NEC ESMPRO Extension for Windows Admin Center」を提供しており、これを組み込むことでExpress5800シリーズのハードウェアレベルの状態をWindows Admin Centerから監視することが可能だ。

「NEC ESMPRO Extension for Windows Admin Center」を組み込むことでExpress5800シリーズのハードウェアレベルの状態監視がWindows Admin Centerから可能

一方、いくらハイブリッド化が今後の潮流だとしても、ハイブリッド環境の運用経験に乏しい企業にしてみれば、さまざまな不安を感じることだろう。この点について西田氏は、「NECでは2015年からAzureのサポートを提供しており、これまで蓄積したノウハウを活かして、オンプレミス、クラウドのハイブリッド環境でも一貫したサポートを提供しています」とNECの強みを説明する。

Windows Server 2022への移行とシステムのモダナイズをまとめて支援

さて、サーバーと一口に言ってもその用途は多岐にわたる。サーバーOSの乗り換えでは、用途ごとに検討すべき項目や手順が変わってくる。

「オフィス内サーバーの用途としては、ファイルサーバーが多くの割合を占めています。ファイルサーバーの移行は、Windows Admin CenterのStorage Migration Service機能を使って行うことができますが、NECでは詳しい操作手順書を代理店やお客様に提供する予定です。また、乗り換えを機に増え続けるデータへの対応やデータ保全について見直したいというニーズもあります。そうしたお客様におすすめしているのが、Azure File Syncを使った『クラウド連携ファイルサーバ』です。Azure File Syncは、ファイルサーバーとAzure Files(Azureのストレージサービス)の間でデータを同期するサービスで、これを使うとデータを可用性の高いクラウドで保全することができるほか、データ一式はクラウドに置いて、直近のデータや利用頻度の高いデータだけをオンプレミスに残すことで、ファイルサーバーの性能や利便性とクラウドサービスの拡張性の両立もできます」(西田氏)

ファイルサーバーのデータは日々増え続けるものだが、実際に使われるのはその一部だ。中小企業でもBCP対策が重要課題となっている今、『クラウド連携ファイルサーバ』はデータ保全とオンプレミスサーバー内のデータのスリム化を同時に実現する一石二鳥のソリューションと言えるだろう。NECではAzure File Sync 構築サービスとAzureサポートも提供しており、初めてAzureをご利用になるお客様でも安心して導入、運用いただけるとのことだ。

NEC「クラウド連携ファイルサーバ」。クラウド上でのデータ保全とオンプレミスサーバーのスリム化を同時に実現することができる

一方、アプリケーションサーバーの移行に関しては、より入念な計画が必要になる。CPUのメニーコア化が世代ごとに進むPCサーバーでは、既存サーバーから新規サーバーへ、1対1での移行は現実的ではないからだ。当然、仮想化してサーバーを集約することになるが、最適化するには高度なノウハウが必要になる。そのためにNECが提供しているのが「仮想化アセスメントサービス」だ。

「仮想化アセスメントサービスでは、お客様の既存サーバーの稼働状況を調査し、CPUやメモリ、ストレージ、ネットワークなどの使用状況から、お客様のご要望に合わせて最適な仮想化基盤をご提案します。移行先として候補となるハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(HCI)は『NEC Hyper Converged System』としてMicrosoft S2Dモデル(Windows Server 2019ベース)とVMware vSANベースのモデルを提供しています。また、ハイブリッドのニーズに応えるため、Azure Stack HCIに関しても、お客様が安心して導入・運用いただけるサービス、サポートを拡充してまいります。ただし、仮想化アセスメントサービスはHCIありきのサービスではないため、お客様の状況に応じて3階層システムをご提案することもあります」(西田氏)

NEC HCSの特長。SI工数の削減により短期導入を実現

なお、Windows Server 2012よりも早く、Microsoft SQL Server 2012も2022年7月に延長サポート終了を迎える。NECでは、これまで培ったノウハウを活かしてSQL Serverの移行を支援する、プロフェッショナルサービスも提供している。

本稿では割愛するが、詳しくは関連記事(「Windows Server 2012/R2・SQL Server 2012サポート終了前に早めの移行で最新版のメリットを引き出そう」)をご参照いただきたい。

最後に西田氏は、NECにおける今後とのWindows Serverビジネスの展開について次のように締めくくった。

「NECではクラウド移行の支援にも力を入れていますが、オンプレミスでサーバーを運用されているお客様がシステムを継続して使っていただけるよう、オンプレミスとクラウド双方の移行パスを提供することが重要だと思います。そのうえで、お客様のIT環境を便利に、より使い勝手の良いものにしていくことがNECの目指すところです。今回はAzure File Syncによるファイルサーバーのハイブリッド化をご紹介しましたが、Azure Backupなども構築・サポートを含めた支援を提供しており、今後も継続してAzure連携サービスを拡充してまいります」(西田氏)