トピック

そのストレージネットワークは5年後でも大丈夫ですか? 10GbEの次を担う「25GbE」が注目される理由

10GbEのネットワークがボトルネックになる世の中がすでに来つつある

 ビジネスにおけるデータ活用が進むなか、データ量が今後も増加する一方であることは誰の目にも明らかだ。データを収容するストレージを、そしてストレージを接続するネットワークをいかにしてその変化に対応させていくべきか――。頭を悩ませている担当者も多いだろう。

 ストレージを接続するネットワークは現在10Gigabit Ethernet(10GbE)が主流となりつつある。これから選択すべきネットワークはという問いに対し、「キーワードが2つあります」と話すのは、ネットワールドの綿引来美氏だ。

株式会社ネットワールド マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンタソリューション課 主任の綿引来美氏

 「データの大容量化はますます進んでいきます。ストレージの帯域は出来るだけ太い方が良いのは言うまでもありません。そして、最近はオールフラッシュストレージがお求めやすい価格になっています。ただ従来のネットワークに導入してもストレージの性能を生かし切れないケースもあります。ネットワークがストレージのボトルネックにならないこと、遅延の少ない、すなわち低レイテンシのネットワークが必要です」と綿引氏。これからのストレージに求められるのは"広帯域"で"低レイテンシ"なネットワークだと言う。

 メラノックス テクノロジーズ ジャパンの小宮 崇博氏は、ネットワークソリューションベンダーの視点からストレージネットワークの動向を次のように話す。

 「PCI Express 4.0(Gen4)も登場してきており、高速インターフェイス市場はまさにこれから立ち上がろうとしています。日本においてはまだまだ10GbEが主流ですが、昨年あたりからは北米や中国のハイパースケーラー、つまりクラウド事業者などを中心に大規模集約のために25GbEを導入し始めています」と小宮氏。

 メラノックスはワールドワイドで25Gbps以上のEthernet Adapter市場において約7割のマーケットシェアを持っている。小宮氏は日本でもこれから25GbEの市場が立ち上がってくることを確信していると付け加えた。

メラノックス テクノロジーズ ジャパン パートナー営業部 シニア ソリューション アーキテクトの小宮崇博氏

 そして、オールフラッシュ専業のストレージベンダーであるピュア・ストレージ・ジャパンの高城基央氏は、すでに25GbE接続がユーザーで利用され始めていると話す。

 「当社のオールフラッシュストレージのフラッグシップである"FlashArray//Xシリーズ"は10/25GbEのiSCSI用インターフェイスを標準で搭載しています。すでに25GbEでご利用頂いているお客さまもいらっしゃいます。25GbEで接続することでVDIならば稼働させる仮想デスクトップ数を飛躍的に増やせますし、大規模なデータベースのバッチ処理などでも高速化を見込むことができます」と高城氏。

ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 エンタープライズ部 シニア・システムズ・エンジニアの高城基央氏

「25GbE」は10GbEの1.2倍程度のコストで、2.5倍の帯域が手に入る

 ネットワールドの綿引氏は、「今は10GbEで問題なくても、5年後の運用を考えるなら25GbEを検討すべきです」と強調する。サーバーやストレージではすでに25GbE対応の製品が増えているにも関わらず、25GbEというキーワードは市場に浸透していない、そしてそれはもったいないと語る。

 「実は25GbEは大変利用しやすい価格帯なのです。10GbEの1.2倍程度のコストで利用が可能で、2.5倍の帯域が手に入るわけですから、検討に十分値すべきと考えます」と綿引氏。25GbEとオールフラッシュストレージの組み合わせこそが、“広帯域”で“低レイテンシ”なネットワークを構築する鍵だと語る。

 メラノックスの小宮氏もうなずく。「PCI Express 4.0のNVMe-oFのドライブなども発表されていますが、単体のドライブで35Gbpsなどという速度が出るものが登場しています。それを4本まとめてという構成では10GbEのネットワークはボトルネックになってしまいます。10GbEでは足りない世の中が本当に近づいているのです」と小宮氏。コストを考えれば10GbEの次は25GbEというのが自然であると語る。

 では、なぜ40GbEではなく25GbEなのか? 簡単に言えば、40GbEは内部的に10GbEのケーブルが4本束ねられた形である。スイッチやNICも同様で40GbEに対応するためには10GbEの4倍の配線が必要となり、コストが高くなってしまっているのが実情だ。

 ところが25GbEは1本のケーブルで25Gbpsを実現する。しかも、接続モジュールは10GbEのSFP+と互換性のあるSFP28である。つまり、25GbEは10GbEと同じ形状で2.5倍の帯域を実現しているのだ。これが大きなコストメリットにつながっている。

豆知識 10Gbpsの次は40Gbps?それとも25Gbps?(出典:メラノックス)

 したがって、例えばピュア・ストレージのFlashArray//Xシリーズのように、10/25GbEのネットワーク・インターフェースを標準搭載しているストレージであれば、25GbpsのDAC(Direct Attach Copper)ケーブルでスイッチ(25GbE対応)に接続するだけで10GbEから25GbpEへの移行ができる。

 「DACをつないでコマンドを打ち込むだけで25GbEが利用できます。40GbEの場合は製品そのものやオプションを変更する必要がありますが、25GbEならその必要はありません」と、メラノックスの小宮氏は言う。

 ピュア・ストレージの高城氏も、「FlashArray//Xシリーズを現状は10GbEで利用しているけど、もっとスループットが必要になったので25GbEにしたいという時は、ケーブルを交換するだけで25GbEを利用可能です。将来的により広帯域なネットワークに対応したコントローラーが登場した場合もEvergreen Storageに基づいて無停止でアップグレード可能です」と、25GbEへのアップグレードが容易であることを説明する。

 なお、FlashArrayで同期レプリケーション機能を利用する際のレプリケーションポートも10/25GbE対応となっているため、ケーブルを用意して25GbEに変更すれば、遅延を少なくできる可能性もあると付け加えた。

接続性検証により25GbE導入の心理的、物理的障壁を解消

 DACケーブルはスイッチとサーバー、ストレージなどを接続する際に用いられる。「base-Tと比べて消費電力面でのメリットもあります。しかしDACケーブルには相性があるため、お客さまの中には接続性を不安に思われている方もいらっしゃいます」とメラノックスの小宮氏。そのため、DACケーブルを用いる際には検証が必要で、それが導入の心理的、物理的な障壁になっているという。

 そこで、ネットワールドではそうした障壁を解消するために、各種ストレージとメラノックス製スイッチの動作検証を行っている。「メラノックスのスイッチと当社が扱っているストレージをDACケーブルで接続し、Linkupやデータ転送、ポート冗長などの検証をしています。結果は弊社のホームページでも公開しています」とネットワールドの綿引氏。

導入の障壁を解消するために、ネットワールドのWebサイトでは検証結果を公開している

 さらにネットワールドでは、ピュア・ストレージのストレージ製品に関してメラノックス製スイッチと組み合わせたパフォーマンス検証も実施している。「サーバー、スイッチ、ストレージの構成で、スイッチにはメラノックス製の"Mellanox SN2010"を、ストレージには"Pure Storage FlashArray//X10 R2"を用い、サーバースイッチ間、ストレージスイッチ間はそれぞれメラノックスの25GbE DACケーブルでつなぎます。サーバーから125パターンのワークロードで負荷を掛け、パフォーマンスを検証しました」と綿引氏。

パフォーマンス検証構成(出典:ネットワールド)

 検証結果が下記のグラフとなる。綿引氏は、「最大で25Gbpsのなか、実効で20Gbpsを超えるパフォーマンスを出しています。これは、Mellanoxスイッチの特徴である低レイテンシと、独自開発チップに搭載された単一共有バッファメモリによって、大量のパケットをスイッチ内で柔軟にさばくことができるため、ストレージのパフォーマンスを最大限に引き出すことができたと考えています。その結果、この検証で、しっかりと25GbEがご利用いただけることが分かります」と検証結果を説明する。

125パターンワークロード試験(MTU1500) パフォーマンス検証結果(出典:ネットワールド)

 ピュア・ストレージの高城氏も検証結果を受け、「Pure Storage FlashArray//X10 R2は、Xシリーズの中では最もローエンドのモデルです。ローエンドモデルでもしっかりと20Gbps以上の結果が出ているのは、当社製品の高速性を証明するものだと思います」と語る。

 今回紹介した検証結果は、パフォーマンス検証結果の一部で、さらに詳細なパフォーマンス検証の続きについては、ネットワールドのMellanox製品ページに公開している。

25GbE検証済みモデルのキャンペーンを実施

 ネットワールドでは現在、ピュア・ストレージとメラノックスを組み合わせた25GbE検証済みパックを手ごろな価格でお求めいただける「Mariage Campaign(マリアージュ・キャンペーン)」を実施している。

 Pure Storage FlashArray//X10 R2を1台、Mellanox SN2010を2台、FlashArray//Xシリーズと接続検証済みのメラノックス製DACケーブルを4本、さらに構築設定作業も付属するキャンペーンだ。

 「キャンペーンセット価格が参考価格の約半額という大変お得な価格になっています。当社でしっかりと接続性検証を行ったモデルをこの価格でご利用いただけますので、すでに反響もいただいています」とネットワールドの綿引氏。

 Pure Storage FlashArray//X10 R2は、ネットワールドのパフォーマンス検証でも用いられたXシリーズのローエンドモデル。ピュア・ストレージの高城氏は、「物理容量9.6TB、実効容量5.89TBのモデルですが、データ削減効果が5倍効くと想定しますと実効で29.47TBのデータを格納することも可能です。25GbEのインターフェイスはサーバー接続用に4ポート装備しています。メラノックスさんのスイッチに組み合わせれば理論上の帯域としては100Gも可能ということになります」と製品の特長を語る。

 Mellanox SN2010もパフォーマンス検証で使用したモデルだ。小宮氏は、「19インチのハーフ幅のモデルですので、ラックスペースを削減できますし、専用ラックマウントキットを使っていただくと19インチラック1Uに2台並べて搭載し、冗長化可能です。1Uハーフ幅でも電源は冗長化されていますので、小さくても安心してお使いいただけます。10/25GbEを18ポート装備しています。取りあえず最初は10GbEで使って、後で25GbEに対応することもできます」と特長を語る。

 なお、キャンペーンのページを見ていただくと「メラノックスのスイッチは一般的なスイッチと比べて約1.7倍のストレージ性能を引き出す」とあるが、これについて小宮氏に聞いた。

 「こちらは以前、ネットワールドに検証してもらった結果の数字です。ファイバーチャネルでの接続ですと、サーバー7に対してストレージが1、あるいはサーバー15に対してストレージが1といった構成になり、いわゆるオーバーサブスクリプションの状態になると思います。この場合、パケットドロップが発生する可能性が高くなるわけですが、メラノックスのスイッチはバッファ共有の仕組みを取り入れていまして、こうしたオーバーサブスクリプション状態でも安定してストレージ性能を最大限に引き出すことが可能です」と、小宮氏は実際に利用される環境でもメラノックスが高性能であることを説明した。

将来も安心して使い続けられるストレージネットワークを

 10GbEの次を担うネットワークとして25GbEの優位性や、ネットワールドによる検証結果、キャンペーンなどを紹介してきたが、最後に三人に今後の展望を聞いた。

 ピュア・ストレージの高城氏は、「ローエンドモデルでもしっかりとした高速性能が発揮できることを実証していただきましたし、そちらをセットにしたキャンペーンも大変魅力的なパッケージになっていると思います。当社の製品は次世代プロトコルであるNVMe-oFにも対応していますが、こちらについては50GbEから対応していく予定です。仮にお客さまがサーバーやアプリケーションの要件で、NVMe-oFに移行されたい場合でも、ミドルモデルのFlashArray//X50 R2までアップグレードしていただければNVMe-oFを利用できますので、そうした意味でも将来性・拡張性に優れた製品です」と語った。

 メラノックスの小宮氏は、「25GbEを導入する上での心理的、実際的な課題であった接続性を、今回のキャンペーンでは事前検証によりネットワールドが解消しています。これにより導入の負担は大きく減りますので、まずはぜひ導入していただきたいと思います。今後、さらに性能を求められるのであれば、当社でも当然NVMe-oF対応製品なども取り扱っています。新しいストレージ環境にメラノックスはいち早く対応していきますので安心して導入していただきたいと思います」と語る。

 最後にネットワールドの綿引氏は、「データ量は今後もますます増え続けていきます。今10GbEで満足でも5、6年後には足りなくなる可能性が十分に考えられます。そのときにも安心して使い続けられる帯域を今から準備しておくことが大切です。25GbEなら非常に良い製品がかなり手の届きやすい価格で出てきていますし、他製品も順次接続性検証を続けていきますので安心して25GbEストレージネットワークを使っていただきたいと思います」と力強く語った。