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インメモリコンピューティングに革新をもたらす――、「Ultrastar DC ME200 Memory Extension Drive」のインパクト

 デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に向けて、大規模なデータをリアルタイムに近いスピードで処理し、ビジネスの意思決定や次のアクションを支える分析アプリケーションが求められている。そこで必須となるのがインメモリコンピューティングの基盤だが、十分な容量のDRAMを実装することは、コストやサーバーのアーキテクチャの観点から容易なことではない。

 そうした中に登場したウエスタンデジタルジャパンの「Ultrastar DC ME200 Memory Extension Drive」は、DRAMの容量を仮想的に拡張するという画期的なアプローチで、メインメモリの増設とコスト削減を両立させ、課題解決を図ろうというソリューションだ。

Ultrastar DC ME200 Memory Extension Drive

インメモリ処理で直面するDRAM増設の壁

 企業が扱うデータは爆発的な勢いで増大するとともに、その中身も複雑化している。現在、企業内の全データの中で70~80%ともいわれる圧倒的な比率を占めているのは、各種文書や画像、動画、図面などの非構造化データである。さらにその上に社外のさまざまなWebサイトやSNSなどから集められるマーケティングデータ、IoTの仕組みによって収集されるセンサーデータなども加わってきている状況だ。

 当たり前のことだが、これらのデータは単に保有するだけでは意味がない。データは活用することで初めて価値が生まれるのだ。「データドリブン経営」というキーワードに象徴されるように、データ分析があらゆる意志決定のプロセスで行われるようになり、ビジネス現場からもより迅速にインサイト(洞察)を得たいという声が上がっている。また、これらのニーズに応えるため、データ分析の手法そのものも高度化しており、最近では機械学習や深層学習のアルゴリズムを用いたAI(人工知能)システムの導入も加速している。

 だが、そこでボトルネックとなるのがサーバーのパフォーマンスだ。大量データに対して複雑な分析を実施しながらも、リアルタイムに近いレスポンスが要求されるのである。

 この課題の解決策として注目されているのがインメモリ処理で、インメモリデータベースのSAP HANAのほか、Redis、Memcached、Apache Sparkといったインメモリアプリケーションが登場し、幅広い用途で活用されるようになった。

 とはいえ、そこにも問題がないわけではない。インメモリ処理の効果を高めるためには、そのぶん大量のDRAMをサーバーに搭載する必要があるのだが、ただでさえDRAMの市場価格は高止まりしているのに加え、大容量のモジュールを導入するほどコストが相乗的に増してしまう。

 例えば、128GiBモジュールと64GiBモジュールを比べると、一般的な感覚では1GiBあたりの単位容量コストは128GiBモジュールのほうが安くなると思いがちだが、DRAMは逆に割高になってしまうのである。

 また、そもそもサーバーのマザーボードの設計が古く、DIMMスロット数の制限から必要な容量のメモリモジュールを搭載できない、あるいは搭載したメモリいっぱいにデータを展開してもCPU使用率が高まらない、といった問題に直面するケースが少なくない。

 結局、データ処理のパフォーマンスを高めるためにはサーバー台数を増やすしか手がなくなり、データセンターの賃貸料や電力費などを含めたITインフラのOPEX(運用コスト)は、歯止めなく膨らんでいく一方だ。

DRAMに見劣りしない95%のパフォーマンスを確保

 上記のような課題を抜本的に解決すべくWestern Digitalが発表したのが、メインメモリをDRAM容量の最大368倍(※注1)まで拡張可能にする「Ultrastar DC ME200 Memory Extension Drive」(以下、ME200)という製品である。

※注1:メインメモリ64GiB, 4TiBのME200を5枚搭載時、パフォーマンス最適化構成

 ハードウェアとしては、NVMeインターフェイスに接続されるSSDなのだが、これを通常のストレージとして利用するわけではない。ウエスタンデジタルジャパン ジャパンセールス セールスディレクターの奥村英記氏は、「あたかもメインメモリを拡張したかのようなサーバー環境を実現します」と語る。

ウエスタンデジタルジャパン ジャパンセールス セールスディレクターの奥村英記氏

 さらにウエスタンデジタルジャパン セールスエンジニアリング テクノロジストの大黒義裕氏が、「ME200と一体提供するハイパーバイザーがメインメモリならびにME200自身の容量を仮想的に束ねたメモリプールを構成し、OS(※注2)レイヤーに提供するのです」と、その仕組みを説明する。

※注2:現時点の対応OSは、Linuxの各ディストリビューション、KVM (Kernel-based Virtual Machine)、Dockerなど。

 ハイパーコンバージドインフラ(HCI)の世界では、分散する複数のサーバーノードに内蔵されたディスクドライブを仮想的に束ね、1つのストレージプール(外付け共有ストレージ)に見せかけるSDS(Software-Defined Storage)のアーキテクチャがコア技術として用いられているが、ME200はこれと同じテクニックをメインメモリ領域で実現した、と言えばわかりやすいだろうか。

 なお、ME200と一体提供されるこのハイパーバイザーには、Western Digital独自の予測エンジン、プリフェッチ機構、最適化アルゴリズムなどが組み込まれており、「従来からあるメモリスワップと比べ、圧倒的な性能を発揮します」と大黒氏は強調する。

ウエスタンデジタルジャパン セールスエンジニアリング テクノロジストの大黒義裕氏

 具体的にME200はどれくらいのパフォーマンスを提供するのだろうか。主要なデータベースやアプリケーションに対して検証を行った結果をまとめたのが【図1】である。ME200はメインメモリに対して最大368倍の容量を拡張できるのだが、SAP HANAに適用したテストでは、同じ容量をすべてDRAMで構成したケースとの比較において95%のパフォーマンスを確保することが実証された。

 同様にMemcachedに適用したテストでも、対DRAM比で85~91%のパフォーマンスを確保している。こうした実測値からもME200は、DRAMと遜色(そんしょく)ないパフォーマンスを発揮すると言って間違いはない。

【図1】ME200は、DRAMと遜色ないパフォーマンスを発揮できるという(出典:ウエスタンデジタルジャパン)

 これまでもSSDを用いてメインメモリを仮想的に拡張する試みがなかったわけではないが、SSDに用いられているNAND型フラッシュメモリのI/O性能はDRAMと比べて圧倒的に劣ることから、本格的な実用化には至らなかった。

 そうした“常識”を完全に覆したという意味からも、ME200は画期的なソリューションとなる。

メモリ拡張と同時に30%を超えるTCO削減を実現

 実際にME200はどのような形でサーバーに実装し、利用することができるのだろうか。

 まずフォームファクタとしては、NVMe U.2接続の2.5インチタイプとPCI Express Gen 3接続の拡張カードの2つのタイプがあり、容量はそれぞれ1,024GB(1TiB)/2,048GB(2TiB)/4,096GB(4TiB)の3種類が用意されている。参考価格は、1TiBあたり55万円。

 先に述べたように、ME200はメインメモリの最大368倍の容量を拡張できるため、「スペック的には、1Uサーバー1台に最大24TiBの仮想的なメモリを実装することが可能です」と大黒氏は語る。

 これによって得られる最大のベネフィットが、コスト削減だ。そのシミュレーション結果を示したのが【図2】で、DRAMによるメモリ増設を行うケースと比較し、ME200を用いてメモリ拡張を行った場合は25~30%のコスト削減が可能となる。

【図2】DRAMによるメモリ増設を行うケースと比べると、ME200を用いてメモリ拡張を行った場合、25~30%のコスト削減が可能になるという(出典:ウエスタンデジタルジャパン)

 それだけではない。「1台あたりのノードに今まで以上に多くのVM(仮想マシン)やコンテナを集約することで、さらなるサーバー統合が可能となり、データセンターの設置面積の削減およびそれに伴う電力費や冷却費の節約など、多大なTCO削減に貢献します」と大黒氏は強調する。

 Western Digital本社がME200を発表したのは2018年11月13日のことでまだ日は浅いが、その導入メリットは多くの企業や団体の目にとまり、国内でもすでにある研究開発機関での採用が内定したという。「そのほかにも大規模データの分析を必要としている企業、自社サービスのSaaS/PaaS展開を検討している事業者など、多くのお客さまから引き合いが殺到しています」と奥村氏は語る。

 もちろん将来に向けても、ME200は大きな可能性を秘めている。Western DigitalはこれまでHGSTやSanDisk、あるいはWestern Digitalといった別々のブランドで販売されていたエンタープライズ向け製品に関する技術力や知見を結集するとともに、あらためてWestern Digitalブランドへの再構築と統合を進めている過程にある。今回のME200は、まさにそのビジネスのビジョンと戦略を体現するものなのだ。

 その意味でWestern DigitalのMemory Extension Driveソリューションは、今後も半導体やストレージ、ソフトウェア(ハイパーバイザー)のそれぞれの領域における最新の要素技術を取り入れながら進化を続けていくことになるだろう。

 例えば現在のNANDフラッシュと比べて、圧倒的なレイテンシーの低減、I/O性能の数倍の向上、消費電力削減、パフォーマンスおよび信頼性の向上などを実現する新世代の不揮発性メモリの登場が予見される。最先端技術を有するWestern Digitalでも研究開発されているとすれば、その成果は自ずとMemory Extension Driveのフレームワークに段階的に取り入れられていくと予想される。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて急速な変化を遂げようとするエンタープライズ領域において、ウエスタンデジタルジャパンは常に業界に先駆けたインメモリコンピューティングのソリューションを提供し、革新をリードしていく考えだ。