特別企画

Windowsにこだわらない、サティア・ナデラのMicrosoft

将来はWinRTも?

 今回の発表を見てもう一つ気になるのが、クライアント側の動向だ。.NET Frameworkのオープンソース化が発表されたが、将来的にはWindows 8/8.1が採用しているWindows Runtime(WinRT)もオープンソース化されるかもしれない。

 PCにおいては、Windows OSは絶大なシェアを持っているが、タブレットやスマートフォンにおいては、Microsoftはそれほどのシェアを持っていない。スマートフォンのWindows Phoneに関しては、MicrosoftがハードウェアベンダーのNokiaを買収することで、大きな変化をもたらそうとしているものの、この分野では大きく引き離された3番手、4番手という状態であるため、大幅なテコ入れが必要となっている。

 昨年のiPad用Officeアプリの発表や、現在ベータ版の提供が進んでいるAndroid版のOfficeなどがいい例だろう。今までは、Windows OSの価値を高めるためにWindows OSでしか動作しなかったOfficeについて、iPad版やAndroid版をリリースすることで、OSではなくアプリケーションのマルチプラットフォーム化を進めている。

 そうした施策の延長線上で、Windows 8/8.1のModernアプリ(Windowsストアアプリ)の動作プラットフォームとなっているWinRTをオープンソース化することで、iOSやAndroid上でWinRTベースのアプリを動かすことができるようにしよう、と考えている可能性はある。

 現在Microsoftは、Universal Appsというコンセプトに基づき、Windows Phone、Windows 8/8.1 Windows Server、Xboxに至るまで、WinRTベースの同一アプリが動作するように取り組んでおり、こうした環境にiOSやAndroidのデバイスが入ってくるようになれば、WinRTベースで開発したアプリが、すべてのデバイスで動作するということになる。

 これは、開発者や企業にとっては間違いなく大きなメリットになる。今までのように複数のデバイスやOS向けにアプリを開発するのではなく、WinRTベースのアプリを作れば、さまざまなデバイスで簡単に動作するようになる。アプリの開発効率やコスト自体も変えることができるだろう。

 来年リリースされる開発ツールのVisual Studio 2015では、マルチプラットフォームへの対応が行われており、Xamarinのプラットフォームが組み込まれることで、iOSやAndroidのアプリ開発も行えるようになっている。もちろん、Xamarinが持つAndroidエミュレータも同梱されている。さらにJavaも取り込むことで、Javaベースのアプリケーションの開発も行えるようになった。

 このようにVisual Studio 2015は、Windowsだけでなく、マルチプラットフォームに対応する開発ツールになってきた。その延長線上に、WinRTの解放があってもおかしくはないだろう。

 もっともWinRTは、ベースにDirectXなどWindows固有のテクノロジーを利用しているため、WinRTをiOSやAndroidに移植しようとしても、簡単にはいかない。このあたりのMicrosoftの動向は、引き続き、注意深く見守っていく必要がある。

Visual Studio 2015では、Xamarinの開発ツールが統合されiPhone、SamsungのAndroidスマートフォン、Androidタブレット向けのアプリが1つのソースで開発できるようになる
Xamarinが持つAndroidエミュレータもVisual Studio 2015には搭載される。個々のスマートフォンやタブレットのプロファイルを持っているため、画面サイズやOSの違いなどもすべてエミュレーションできる

(山本 雅史)