特別企画

開発者がAzureを使わない理由はない――日本データセンターの重み

日本マイクロソフト幹部に聞く

Azureはインターネットをフィールドとするすべての開発者のためのクラウド基盤

 では、おそらくAzureの普及にとって最も欠かせない存在である開発者にとって、国内にデータセンターがあることはどのようなメリットになるのだろうか。

 「先にも挙げたが、開発中に感じるレイテンシがまるで違う。レスポンスタイムは香港と比べて3倍以上の差がある。例えばHTMLのレスポンスなら、東京は14m秒、対して香港は66m秒になる」(平野氏)。

各リージョンのレイテンシ比較

 さらに最新のデータセンターであるがゆえに「日本データセンターには最新の機材がそろっており、ハードウェアの信頼性やパフォーマンスといった面でも世界トップレベルにある」(平野氏)という。アプリケーション開発には最速&最新の環境をそろえたと自負する。

 ここ1、2年で、AzureはPaaSからIaaSまでをカバーするクラウドOSへとダイナミックに進化を遂げた。.NETなどWindowsリソースをベースにしたサービスだけでなく、CentOSやSUSEなどさまざまなLinuxディストリビューションのサポート、Apache HadoopやOracle DatabaseなどMicrosoft以外のサービスの提供、各種開発言語(Java、PHP、Node.js、Pythonなど)による開発環境など、従来のMicrosoftの枠組みでは考えにくかったサービスがAzure上では動いている(これらのダイナミックな変革の背景には、SVP時代のナデラ氏の意向が強く働いているといわれている)。

 「今の開発者にとっては、クラウドはデータセンターではなくインターネットそのもの。だからインターネットのトレンドすべてがビジネスフィールドとなる。ビッグデータ、ソーシャル、モバイル、IoT(Internet of Things)、これらはすべてクラウドと深く結びついており、新しいトレンドもまた、クラウドから生まれる。そしてAzureではクラウドでできることは何でもできる。オープンソースベースの開発も、VPNの構築も、Active Directoryの連携もお手のもの。これほど柔軟性に富んだクラウドはほかになく、IT基盤としての勘どころをすべて押さえている。もっと言えば、開発者がAzureを選ばない理由はない」(平野氏)。

PaaSからIaaSまでをカバーする包括的なサービスへと変貌を遂げた

 4月に入ってからは開発者にとっておきなニュースがもうひとつ発表されている。ナデラ氏のCEO就任に伴い、クラウド&エンタープライズ担当エグゼクティブバイスプレジデントに、日本の開発者にも“赤シャツ”でおなじみのスコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏が就任したのだ。

 「開発者にとって、ガスリーがAzureの責任者としてやってきたことは非常に喜ばしいことだと思う。C#や.NETなどこれまでのスキルの延長でAzureのアプリケーション開発を続けられるという意味でもある。日本でも人気の高いガスリーが、Azureの開発環境を今後どのように改善していくか、ぜひ期待していてほしい」(平野氏)。

 Azureには「青」という意味がある。「クラウドという青い空を広げていくのがわれわれマイクロソフトの仕事なら、空の上に白い雲、つまりアプリケーションを浮かべていくのは開発者やパートナーの仕事。東京と大阪にデータセンターを作ったことでわれわれは空を日本にまで広げた。今度は雲をたくさん浮かべてAzureの価値を上げることを一緒にやってもらいたい」(平野氏)。

 日本マイクロソフトは5月29日~30日にかけて、東京で開発者向けの有料イベント「de:code」を開催する。ここではクラウド時代のITインフラ技術者に向けて、数多くのメッセージが発信されるはずだ。

(五味 明子)