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円安でAWSが安くない時代 できるだけ安くあげるためのヒント

 円安が進んでいる。ドル円相場は、24年ぶりの円安水準だそうだ。しかし、1ドル140円台では、情報システムのコスト最適化を狙って導入したパブリッククラウドのメリットが吹き飛んでしまう。とはいえ、いまさらオンプレミスのサーバーに戻すこともできない。何か、できることはないのか。9月16日のアマゾン ウェブ サービス ジャパンの記者説明会から、そのヒントを紹介する。

買い方のオプションを工夫してEC2のコストを最適化

 AWSの仮想サーバーであるEC2には、料金体系が2種類ある。

①オンデマンド:1時間/1秒当たりいくらという従量課金
②リザーブドインスタンス(RI):1年/3年間の固定利用として割引価格で購入

 需要予測が難しい場合や変動が大きい場合は、使った分だけの課金であるオンデマンドのメリットが大きいが、1カ月間使い続けるなら、RIの方が安くあがる。このため、確実に使う分はRIで、変動しそうな分はオンデマンドでと、うまく組み合わせることでコストを最適化できる。

 また、RIでは、1年間の費用を全額前払いで支払うことも可能だ。1年分の価格がその日の為替レートで設定されるので、円安がこの先1年間進行すると自社で予測しているなら、為替によるコスト上昇リスクの抑制が期待できる。確信できない場合は、オンデマンドとミックスしてリスクヘッジするという考え方もある。

 さらに、RIの中でも、スタンダードとコンバーティブルを選択できる。一度設定した契約内容を変更できないスタンダードで、3年間固定契約であれば、割引率が最も大きい。契約期間中に内容を変更できるのがコンバーティブルで、割引率はやや低くなる。「このように、AWSは買い方をお客さまが自由に選べるようになっているのが特徴のひとつ」だと、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの瀧澤与一氏(パブリックセクター技術統括本部 統括本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)は言う。

リザーブドインスタンスの提供クラス

 さらに、Savings Plansというオプションもある。RIと同様に1年または3年の継続契約による割引だが、仮想マシンとコンテナが混在可能で、アプリケーションをモダナイズ(クラウドネイティブ化)すると、より低い料金が自動適用される。

Savings PlansとRIの比較

重複排除や用途に応じたストレージタイプの選択

 従量課金のストレージでコストを圧縮する方法のひとつが、ファイルサーバーの重複排除だ。FSx for Windows File Serverにはデータ重複排除機能があるので、これを使用して使用容量を減らせば、その分コスト削減になる。大規模なファイルサーバーでは、大量の重複が存在するため、一般的に50~60%は容量を減らせるという。

 AWSのストレージではS3が有名だが、S3にはさまざまなタイプがある。料金も異なるので、最初に標準で契約したままになっているなら、要件に合わせてきちんと精査するとコスト削減できる可能性がある。アクセス頻度の低いストレージのランクを落としても、エンドユーザーから見て不便に感じるような変化はほとんどない。

オブジェクトストレージ(S3)選定

 ただし、どのファイルをどのランクのストレージに置くのがベストか、自分で調べるのはかなり面倒だろう。そこでお勧めなのが、S3 Intelligent Tieringというストレージタイプだ。

S3 Intelligent Tiering

 30日間のアクセス状況を見て、アクセス頻度が低いストレージは安いアーカイブタイプのストレージに移動する。一度移動しても、ファイルにアクセスがあればアクセス頻度の高いタイプのストレージに自動で戻るので、利便性は変わらない。

最終的にはクラウドネイティブ化

 クラウド移行によるコスト削減という意味では、クラウドネイティブ化は最終的な達成目標だ。

 オンプレミスにある物理サーバー上のシステムを、そのままクラウドに移行した場合でも、ハードウェアの調達にかかる手間や時間を含めたコスト、余剰が生まれて無駄になっているコストなどが削減できる。ただし、従来型のWeb三層アーキテクチャをクラウドネイティブのアーキテクチャにすれば、需要に合わせて増やすのもさらに無駄がなくなるし、ビジネスの変化への迅速な対応もしやすくなる。もし、クラウドネイティブ化に既に着手している、あるいは計画があるという場合は、アクセルを踏むタイミングと言えるだろう。

クラウドネイティブ化

まずはAWS Trusted Advisorでチェック

 EC2の契約オプションやストレージタイプの見直しをすることは、すぐにも始められる。AWSのソリューションアーキテクトや導入支援をしてくれた企業の担当者に相談してみるといい。

 また、AWSにはAWS Trusted Advisorというサービスがある。契約しているAWSのサービス利用状況を元に、コスト最適化、パフォーマンス、セキュリティ、耐障害性、サービスの制限の5項目のベストプラクティスを提案するものだ。サポート契約の内容によってチェックできる項目が違うが、AWSビジネスサポートかAWSエンタープライズサポートに契約していれば、コスト最適化の項目をチェックできる。使われていない機能やサイズを余らせている場合などは通知され、お勧めのプランをアドバイスしてくれる。

AWS Trusted Advisor

 その他、移行支援のAWS ITトランスフォーメーションパッケージ最新版では、コスト最適化のためのCloud Financial Management(CFM)フレームワークを採用。財務部門と技術部門の連携による、可視化と最適化のサポートを行っている。