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国内企業のデジタル化における課題は“組織の壁”、NRI「ユーザー企業IT活用実態調査」
(2016/3/16 15:15)
株式会社野村総合研究所(NRI)は16日、ユーザー企業におけるIT活用実態調査の結果を発表した。調査結果からは、国内企業が「デジタル化」を推進する上で必要としていることは、全社的な活用方針・活用戦略の策定、情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進など、「組織の壁」を越える施策であることが明らかとなったとしている。
NRIでは、2003年から同調査を毎年行っており、今回で13回目。調査時期は2015年12月。調査対象は日本国内に本社を持つ売上高上位企業約3000社の情報システム担当役員またはそれに準ずる役職者。回答企業数は501件。
国内企業のIT投資は、2008年の金融危機での低下から次第に回復し、2011年度以降は「前年度比で増加」と回答する企業が増加。2016年度についても、「増加する」と予想した企業の合計(39.7%)が、「減少する」の合計(13.9%)を大きく上回った。
IT関連費用の内訳は、「アプリケーション関連:戦略的な目的」が9.6%、「アプリケーション関連:情報活用目的」が15.0%、「アプリケーション関連:業務効率化目的」が25.5%、「基盤関連(センター設備・ネットワーク維持費、システム運用など)」が49.8%。企業のIT投資は増加傾向にあるが、支出目的の傾向は2008年から変わらず、維持・運用や業務効率化が中心となっている。
新技術への関心と取り組み状況については、「データマイニング」を「導入済み」の企業の割合は10.1%、「ウェアラブルデバイス/ウェアラブルコンピューター」「人工知能・機械学習」「IoT(Internet of Things)」「非構造化データベース」はいずれも5%未満と、新技術の採用は少数にとどまっている。一方で、3~4割の企業がこれらの技術を「導入を検討中」「今後検討したい」と回答しており、注目度の高さとともに今後の進展も予想されるとしている。
企業の「デジタル化」に相当する、新たなIT活用やデータ活用の取り組みについて実施・検討状況を尋ねた質問では、「営業・販売データ(ウェブ以外)に基づく顧客のニーズや行動の分析」(32.5%)と、「営業・販売現場での新技術導入による顧客への提案力の向上」(27.4%)の実施割合が高い。各取り組みの推進主体となる部門については、全ての取り組みで「事業部門」と回答する企業が最も多く、企業の「デジタル化」は、事業部門が自部門のマーケティングに活用する形で進んでいると分析している。
「デジタル化」を推進する施策について、11種類の施策について優先度を尋ねた質問では、「全社的な活用方針・活用戦略の策定」「情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進」「営業・販売データや顧客データの標準化・統合化」の優先度が高くなった。
NRIでは、日本では企業が「デジタル化」をする上で、新技術やデータ分析などのスキルを持つ人材の確保が急務であると言われてきたが、今回の調査結果からは、全社的な方針策定や組織間の協調、さらに現場ごとに作られたデータをいかに統合するかなど、「組織の壁」を越えるための施策の優先度が高いことが明らかになったと説明。これまでIT活用の主要な目的であったオフィス業務の効率化や、個々の事業部門のマーケティングに閉じた「デジタル化」ではなく、企業全体で戦略的に「デジタル化」を進める上で、「組織の壁を超える施策」を積極的に推進していくことが求められるとしている。